Victor A-X9
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥158,000
1979年にビクターが発売した高級プリメインアンプ。いわゆる「ノンスイッチング・アンプ」のプリメインアンプ
国産第1号機で,その優れた低歪み特性で「ノンスイッチング・アンプ」は人気となり,各社から様々なネーミ
ングで登場することとなりました。その意味で,一つの時代を拓いたアンプといえるでしょう。A-X9の最大の特徴は,ノンスイッチングとか可変バイアス方式とか高効率A級等と呼ばれる「スーパーA」
方式にありました。1975年にアメリカのスレッショルド社が発売したパワーアンプ800Aに採用されていた
「ダイナミックバイアス・クラスA」という方式がオリジナルにあたる方式で,この方式の国産プリメインアンプの
第1号となったのがこのA-X9でした。
プッシュプル方式のアンプでは,交流波形のプラス側とマイナス側を独立して別の出力トランジスターで増幅
し,波形を合成するようになっています。その際,常にプラス側からマイナス側という風に切り替えのスイッチン
グが行われているため,合わせ目で歪みが発生していました。スレッショルドの方式は,バイアスを少し可変と
することでコントロールし,常に電流が両波形のトランジスターに流れるようにしてスイッチングをなくしたもので
した。「スーパーA」はほぼこの方式と同様の方式と考えられ,高速動作の「スーパーAバイアスサーキット」に
よるバイアス電流のコントロールと高速なスイッチング特性を持つハイfγパワートランジスターの採用でB級ア
ンプの高効率での高出力と,A級アンプ並の歪み特性を実現したものでした。全体の回路構成は,プリメインアンプという形を生かし,MC・MM/DCサーボイコライザーとハイゲイン・スーパ
ーA/DCパワーアンプというシンプルな2アンプ構成となっていました。当然,ハイレベル入力からスピーカー出
力までカップリングコンデンサーを持たない完全DCの1アンプ構成でした。
プリアンプ部は,ビクター独自のローノイズ・ペアEL(エル)-FETを駆使したハイゲインDCサーボ・イコライザー
となっていて,MMカートリッジに対しては3段階の負荷抵抗切換え式とし,さらに低出力MCカートリッジにも対
応した低歪み・高SNのイコライザーアンプとなっていました。
電源部は,大容量のトロイダルトランスを搭載し,2次側を電圧増幅段用と電流増幅段用にセパレートしていまし
た。さらに,全増幅段にそれぞれ直接に電流を供給するダイレクトパワーサプライ方式を採用し,低インピーダン
ス化を徹底していました。また,パワー段の給電ラインには太い銅板製のバス・バーを用いていました。以上のように,スーパーA方式以外は,非常にオーソドックスに煮詰められたしっかりしたプリメインアンプでした。
シーリングパネルを備えたシンプルで洗練された外観のイメージどおりの滑らかな素直な音が聴けました。弟機
のA-X7D(¥108,000),A-X5(¥69,800),A−X3(¥53,000)も登場し,ナチュラルな音で高い評価
を得ていたことを思い出します。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
プリメイン型だから音質がよいと言い切れる
スーパーAのプレステージモデルです。
◎スイッチング歪みゼロ
TIM歪みもゼロ(LPFfc=100kHz)
Aクラス動作100W+100W
ハイゲイン・スーパーAパワーアンプ
◎高性能ペアEL(エル)・FETを
駆使したハイゲインMC・MM/
DCサーボ・Aクラス・イコライザー
◎全段ダイレクト・サプライ方式の
ローインピーダンス独立2電源
◎不必要な超低域・超高域の変化量を
抑えた音質のよいオーディオ帯域用
トーンコントロ−ル
◎なめらかなエアダンプ式シーリングドア
◎MMカートリッジ負荷抵抗3段切換え
■回路方式■
イコライザー・アンプ部 | DCサーボ・パラレルペアEL-FETカスコード接続ICL
MC・MMイコライザー・アンプ |
パワー・アンプ部 | スーパーA・完全デュアルFETカスコード接続ICL
ハイゲイン・パワー・アンプ |
電源部 | 独立2電源全段ダイレクト・パワー・サプライ方式
トロイダルトランス採用 |
■総合特性■
実効出力
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) |
100W+100W(20Hz〜20kHz,8Ω,THD0.005%)
105W+105W(1kHz,8Ω,THD0.0005%) |
全高調波歪率
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) (PHONO MM→SP OUT) |
0.005%(実効出力時,20Hz〜20kHz,8Ω)
0.0005%(実効出力時,1kHz,8Ω, BY HP・IB AUDIO ANALYZE SYSTEM) 0.02%(実効出力時,20Hz〜80kHz,8Ω) 0.007%(実効出力時,20Hz〜20kHz,8Ω,VOL−30dB) |
混変調歪率
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) |
0.002%(60Hz:7kHz=4:1,実効出力時,8Ω) |
スイッチング歪 | 0 |
TIM歪 | 0(LPF fc=100kHz) |
出力帯域幅
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) |
5Hz〜100kHz(IHF,両ch動作,8Ω,THD0.02%) |
周波数特性
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) |
DC〜200kHz +0,−3dB(8Ω) |
ダンピングファクター
(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT) |
200(1kHz,8Ω) |
入力感度/インピーダンス(1kHz) | PHONO(MM) 2.5mV/100Ω,47kΩ,100kΩ(PHONO-1,2)
PHONO(MC) 200μV/100Ω(PHONO-1,2) TUNER,AUX,TAPE-1,2 200mV/50kΩ |
SN比 | PHONO(MM) 85dB(IHF-A,ショートサーキット) 82dB(新IHF)
PHONO(MC) 71dB(IHF-A,ショートサーキット) 75dB(新IHF) TUNER,AUX,TAPE 110dB(IHF-A,ショートサーキット) 85dB(新IHF) |
トーン・コントロール | BASS 100Hz ±8dB
TREBLE 10kHz ±8dB |
サブソニック・フィルター | 18Hz −6dB/oct |
ミューティング | −20dB |
■イコライザーアンプ部■
(PHONO→REC OUT)
PHONO最大許容入力 | PHONO(MM) 350mV(1kHz,THD0.005%)
PHONO(MC) 26mV(1kHz,THD0.005%) |
PHONO RIAA偏差 | ±0.2dB(20Hz〜20kHz) |
全高調波歪率 | PHONO(MM) 0.004%(25V出力時,20Hz〜20kHz)
PHONO(MC) 0.006%(25V出力時,20Hz〜20kHz) |
REC出力電圧/インピーダンス | 200mV/330Ω |
■電源部・その他■
電源電圧 | 100V 50/60Hz |
定格消費電力 | 240W(電気用品取締法基準) |
電源コンセント | SWITCHED 2コ
UNSWITHCED 1コ |
寸法 | 450W×159H×424Dmm |
重量 | 16.6kg |
※本ページに掲載したA-X9の写真,仕様表等は1982年4月のVictorの
カタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられ
ていますのでご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。↓ k-nisi@niji.or.jp