ACCURATE PISTONIC MOTION SPEAKER SYSTEM ¥500,000(1台)
ESPRIT APM−6 MONITOR
1981年にソニーが発売した2ウェイ平面振動板採用のモニタースピーカーシステムです。1979年に
ソニーがAPM−8で発表したAPM振動板を用いて2ウェイスピーカーの限界に挑戦したとも言える意欲
作でした。実際,その音は2ウェイとは思えないほどフラットでワイドな周波数レンジを持ち,2ウェイなら
ではの定位の良さと音のまとまりの良さを持っていました。APM振動板はAccurate Pistonic Motionの略で,正方形の平面振動板の分割振動が起きる節目
4カ所を4つの磁気回路とボイスコイルで4点駆動するというユニークな構造でした。振動板が正方形の
平面であるために分割振動の節目の位置が単純化し,この4カ所に限られてくることを利用した巧妙な
設計でした。また,平面振動板自体も軽くて剛性の高い,アルミスキンハニカムサンドイッチ構造を採用
していました。これにより従来のコーン型スピーカーに比べてピストニックモーション帯域を4倍に拡大し
ていました。その結果,ウーファーの低域再生限界周波数は20Hz(-10dB)にも達し,また,高調波歪
率が−50dBという低歪みを実現していました。トゥイーター部は,カーボンファイバーシートスキンでハニ
カムコアをサンドイッチ下平面振動板ユニットを採用し,ウーファーと同じく4点駆動を行う構造でした。
エンクロージャーも凝ったものでした。スーパーオーバルエンクロージャーと称して,断面が卵形のエンク
ロージャーになっていて,回折効果を防止し,無限大バッフルに近い効果を得ることができる構造になっ
ていました。天然木とパーチクルボードを交互に積層した高度な加工技術を必要とするエンクロージャー
で,おそらく相当なコストがかかっていたことでしょう。ネットワークもコストのかかったものでした。コイルの巻線,リード線すべてに無酸素銅線を用い,コンデン
サー,コイル,抵抗などのパーツをすべてSBMCという樹脂で固定し防振対策を施したものになっていま
した。APM−6は,外見や構造に非常に特徴のあるスピーカーでしたが,その音は,2ウェイとは思えないワイ
ドレンジなもので,歪み感の少ない自然な音だった記憶があります。とにかく,当時としては,2ウェイの
限界に迫った名機だったと思っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
理論的にスピーカーシステムの
より理想に近い姿2ウェイで
広帯域,超低ひずみ再生を
あらゆるアングルから求めた
モニタースピーカーです。
形式 | 2ウェイ位相反転型 |
使用スピーカー | 低音用502cm2平板型
高音用 16cm2平板型 |
公称インピーダンス | 8Ω |
定格最大入力 | 100W |
瞬間最大入力 | 300W |
出力音圧レベル | 88dB |
実効周波数帯域 | 20Hz〜20kHz |
クロスオーバー周波数 | 1.2kHz |
大きさ | 幅545×高さ820×奥行375mm |
重さ | 48kg |
※本ページに掲載したAPM−6の写真・仕様表等は1986年2月の
ソニーのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があり
ます。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
法律で禁じられていますので,ご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。