AU-D907Xの写真
SANSUI AU−D907X
X-BALANCE INTEGRATED DC AMPLIFIER ¥189,000
サンスイは,07シリーズの6世代目モデルとして1984年にAU-D507X,AU-D607X
AU-D707X,AU-D907Xを発売しました。その中で907シリーズは最上級機として君
臨してきました。このモデルよりサンスイはアンプのバランス構成化に踏み切りました。
07シリーズの中でも,内容的に大きな飛躍を遂げたモデルではなかったかと思います。                                         
これより2年前の1982年頃,プリメインアンプをサンスイのAU-D7から一気にグレード
アップしようと考えていた私は,当時,AU−D7と同じサンスイのAU-D907F EXTRA
オンキョーのA-820RS,アキュフェーズのE-301の3機種が最終候補に残り,その中
でさらにじっくり試聴して決めたことを思い出します。
そのときは,結局アキュフェーズのE-301に決め,その後アキュフェーズを愛用し続け
ることになるわけですが・・・。オンキョーのA-820RSは音が力強くクリアで心惹かれま
したが,小音量時の音が他の2機種に比べて荒いことが気になって候補から落とし,そ
して,今回本題のサンスイのAU-D907F EXTRAはサンスイにしては,音が柔らかめ
で少し暗いことが意外で,結局選ばなかったことを思い出します。     

そして,それから2年後このAU-D907Xが発売されました。早速,知り合いの販売店で
試聴させてもらった私は,AU-D907F EXTRAのときのイメージが払拭され,実にクリ
アで魅力的な音になっていることにショックを受け,「2年前にこれを出してくれていたら・・。」
と思ったことが今でも印象に残っています。もし2年ずれていたら,私は今でもアキュフェー
ズユーザーではなくサンスイユーザーだったかも知れないのです。それくらい私にとって
強く印象に残っているモデルがこのAU-D907Xです。        
(なお,サンスイの07シリーズはいずれもすばらしいモデルです。私の好みではFシリー
ズに少し魅力を感じなかったわけでして・・・。Fシリーズユーザーのみなさんごめんなさい。)                   

AU-D907Xの最大の特徴は,バランスアンプになっていることでした。それまでの07シ
リーズはすべて通常のアンバランス構成で,+側だけを駆動し,−側はアースと兼用した
構成でした。本モデルから,バランス構成となり,「Xバランスアンプ」と称していました。ス
ピーカーの+−をそれぞれ2つのアンプでドライブし,フィードバックもスピーカーの両端
子にバランスフィードバックをかける構成でした。また,入力動作もサンスイ自慢のツイン
・ダイヤモンド・バランス差動回路に直結のバランス入力とし,電源部もバランス電源を採
用し,信号系から完全にアースが分離された理想的なバランス構成を誇りました。プリド
ライブ段も,入出力を完全にバランス構成とし,アンプ内伝送も,アースと全く関係ない電
流伝送を行うため,ツイン・ダイヤモンド・バランス差動回路を使ってカレントドライブする
など,アンプ内が完全にバランス化されるという一大変革がなされていました。これ以降,
サンスイのアンプは,バランス構成を特徴とし,さらにバランスアンプを高度に追求して
いくことになります。その意味でも画期的な転機となったモデルではないかと思います。                     

電源部は,サンスイ伝統の強力電源で,写真のように大型のトライダルトランスと4本の
大型のコンデンサーを搭載し,プリドライブ部,パワー部,L/R独立の4電源方式を採
用した安定した構成でした。

入力系も充実し,CD端子も備え,さらに入力セレクターを通さないCDダイレクト端子も
搭載していました。フォノ系もMMだけでなく,MCもトランスで対応していました。このMC
トランスは,スーパー・パーマロイコア使用でモノラルタイプを左右独立で搭載する本格的
なもので,MCカートリッジにも完全な対応を誇りました。イコライザー部もサンスイの誇る
DCアンプ構成,高性能Hi-Precisionイコライザーで,20Hz〜300kHz±0.2dBのハ
イクオリティーを誇り,ダイヤモンド差動回路とあわせ優れた性能を誇りました。                  

パーツ,コンストラクションも高性能を追求し,主要小型電解コンデンサーにAWD高性能
タイプを,小容量フィルムコンデンサーに銅箔スチロール型を採用していました。また,ヒー
トシンクも写真の通り,大型で重量級のアルミブロックヒートシンク,シャーシは磁気歪み
を防ぐ銅メッキシャーシ採用など,当時のプリメインアンプの枠を超えたものでした。                                                         


 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 

 

アンプ技術の理想を極めた
Xバランス・アンプ
音の純粋性とエネルギー感を
実現した最高級機
◎Xバランスアンプは今までのアンプが
  宿命的に抱えていた諸問題のすべてをクリアー
◎6つのキーテクノロジーが結合して
  Xバランス・アンプは生まれた
◎低インピーダンス・ドライブ能力を
  大幅アップさせたXバランス・アンプ
◎高性能・大型のトロイダルトランスと
  大型コンデンサーに支えられる強力電源部
◎ピュアな伝送・増幅をあらゆるプログラム・
  ソースに活かす考え抜かれた入力系
◎ダイヤモンド差動回路搭載の
  Hi-Precisionイコライザー
◎振動,歪の徹底追及が求めた
  高性能パーツとコンストラクション
         
 

AU−D907Xの仕様
 

●パワーアンプ部(Xバランス方式)●


実効出力 6Ω負荷(10Hz〜20kHz,両ch駆動)180W+180W 
8Ω負荷(10Hz〜20kHz,両ch駆動)160W+160W 
4Ω負荷(1kHz,両ch駆動)       250W+250W 
6Ω負荷(1kHz,両ch駆動)       210W+210W 
8Ω負荷(1kHz,両ch駆動)       180W+180W
全高調波歪率 0.003%(8Ω,10Hz〜20kHz) 
0.005%(6Ω,10Hz〜20kHz,実効出力の−3dB)
混変調歪率 0.003%(8Ω,60Hz:7kHz=4:1)
出力帯域幅 5Hz〜80kHz(IHF,両ch,THD0.003%)
ダンピングファクター 100 (6Ω,新IHF,20Hz〜20kHz)
周波数特性 DC〜300kHz(1W)
エンベロープ歪 測定限界値以下
TIM歪(Sawtooth法) 測定限界値以下
スルーレイト ±300V/μsec(6Ω)
ライズタイム 0.5μsec

 

●イコライザーアンプ部(Hi-Precisionイコライザー)●


入力感度/入力インピーダンス
(1kHz)
PHONO(MM)         2.5mV/47kΩ 
PHONO(High MC)     2.5mV/100Ω 
PHONO MC          100μV/3.2Ω(Low) 
 (MC Trans採用)       300μV/40Ω(High)  
CD,TUNER TAPE-1,2  150mV/47kΩ
PHONO最大許容入力
(1kHz,THD0.01%)
PHONO(MM)         300mV 
PHONO(High MC)     300mV 
PHONO MC          35mV(Low)/Trans方式
出力電圧/出力インピーダンス 150mV/600Ω
RIAA偏差(MM REC OUT) 20Hz〜300kHz(+0.2dB,−0.2dB)
SN比
(Aネットワーク,ショートサーキット)
PHONO(MM)       90dB 
PHONO(MC)        80dB以上(100μV) 
CD,TUNER,TAPE  110dB
トーンコントロール BASS最大変化量    +10dB,−10dB(20Hz) 
トーンセレクター      100Hz,200Hz 
TREBLE最大変化量  +10dB,−10dB(20kHz) 
トーンセレクター      4kHz,8kHz
サブソニック・フィルター 16Hz(−3dB,6dB/oct)
オーディオ・ミューティング −20dB
定格消費電力(電気用品取締法) 370W
寸法 466(W)×161(H)×431(D)mm
重量 20.5kg
※本ページに掲載したAU−D907Xの写真,仕様表等は1984年
5月のSANSUIの
カタログより抜粋したもので,山水電気株式会社
に著作権があります。したがって,こ
れらの写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
ださい。                                              
  
 

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