CA-1000Vの写真
YAMAHA CA-1000V
NATURAL SOUND STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER
                                ¥128,000

ヤマハが1976年に発売したプリメインアンプ。1973年に発売され,トランジスターアンプとして初めてA級動作を実現して,
ヤマハのアンプ技術の高さを世に知らしめたCA-1000の第3世代にあたるモデルです。CA-1000シリーズは,実際には
その中身がCA-1000U,CA-1000Vと,完全なモデルチェンジといえるほどに変わっており,強化されていました。

CA-1000Vの最大の特徴は,A級動作,B級動作をスイッチ1つで切り換えられるメインアンプ部にありました。メインアンプ
の回路構成は,初段定電流バイアスカレントミラー差動増幅→カスコード接続定電流負荷エミッタ接地増幅→ダーリントン接
続ピュアコンプリメンタリィパラレルプッシュプルOCLドライブ・出力段となっていました。A級動作,B級動作は,出力トランジ
スターの動作点を切り換える方式で,音楽を聴きながら,スイッチで切換が可能で,その違いを聴き比べることもでき,聴いて
いる音楽や,接続されているスピーカーの能率などに応じて動作方式を選ぶことができました。パワートランジスタのペア特
性の揃った素子の厳選,優れた回路方式などにより,優れた特性を確保し,B級動作でも,低歪み,高SN比の優れた音質
を実現していました。出力は,8Ω負荷で,A級動作で20W,B級動作では実に100WとCA-1000Uの15W,70Wから
大きくアップしていました。

イコライザ回路は,ヤマハ独自のスーパーローノイズペアFETを使用したカスコードブートストラップカレントミラー差動入力,ダ
ーリントン接続定電流負荷エミッタ接地,ピュアコンプリメンタリィによるSEPP出力段というパワーアンプにも似た回路構成に
なっていました。
初段差動入力に使用されたスーパーローノイズペアFET(2SK-100)は,ヤマハがイコライザ用に開発したもので,オーディ
オ用の特にローノイズで,gmが大きく,ペア特性がよいというものでした。FETをはじめとする優れた素子の使用と出力インピ
ーダンスを低くとった設計により負荷に対する高い安定性を持ち,2mV入力のSN比82dB,入力換算雑音−136dB/Vとい
う,当時としては非常に高水準のローノイズ低歪率のイコライザー部となっていました。
MCヘッドアンプは,ヤマハオリジナルのスーパーローノイズICを使用し,定格入力50μVに対してSN比68dB,入力換算雑
音−154dB/Vをというローノイズ特性を実現していました。

トーン回路は,2段目のダーリントン接続の省略以外,イコライザーアンプとほぼ同じ回路構成をとり,ローノイズ,低歪みを実
現していました。トーンコントロールはヤマハ方式のNF型で,挿入ロスが少なくローノイズ設計で,コントロールボリュームも特
殊なカーブを持つものを新開発して搭載し,素直なコントロール特性を得ていました。
ボリュームは,片チャンネルあたり2連の高精度4連ボリュームを搭載していました。このチャンネル当たり2連のボリュームを
トーンアンプの入力側と出力側へ入れ,0〜6dB,−24〜−∞dBまで出力側,−6〜−24dBまでを入力側で調整する構成と
し,残留ノイズがメインアンプのみで決まることになり,SP OUTで100μVと低い値に収まっていました。

CA-1000Vで初めて搭載され,外観上でポイントとなっているパワーメーターは対数圧縮回路とピークホールド回路を搭載し
た本格的なもので,−50dB〜+5dB,1mW〜316W/8Ωの広い指示範囲と100μsの優れた応答性を持っていました。
また,このメーターは,切換スイッチにより,SP OUTの出力レベルとREC OUTの出力レベルを切り換えて表示させることが
できました。

CA-1000Vの内部

部品配置,配線などにもローノイズ低歪みのために細心の注意が払われ,イコライザシートはリアパネル直結,ローレーベル信号の
通る基板への厳重なシールド,ユニバーサルジョイントの使用によるセレクターの操作性と回路の最適配置などが図られていました。

以上のように,CA-1000Vは,プリメインアンプとして優れた性能を実現し,優美なデザインのキャビネットに包まれた完成度の高
い名機でした。品のある美しい音を聴かせてくれたアンプで,ヤマハの高いオーディオ技術を世に知らしめた1台だったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「Perfection」を求めたB級100W+100W,A級20W+20Wと
82dB・2mVの高SN設計。ローノイズMCヘッドアンプをも内蔵して
プリメインアンプの原点を正確に穿つヤマハの最高品

◎B級100W+100W,A級20W+20W 切換え
 可能な低歪率ピュアコンOCLメインアンプ
◎トーン,フィルタ,バッファアンプを兼ねた
 ローノイズ,低歪率トーンアンプ
◎50μV入力感度,SN比68dB(IHF-A)の
 ローノイズMCヘッドアンプ
◎実用上のSN比向上を図るため片チャンネル
 当り2連の高精度4連ボリュームを採用
◎−50dB〜+5dB(0dB=100W/8Ω)の広い
 レンジを指示する高性能ピークメーター
◎ローノイズ・低歪率を求めた部品配置
●CA-1000Vの規格●
 

■アンプ部■

実効出力 20Hz〜20kHz 0.02%(AUX)B級8Ω 100W+100W
                     B級4Ω 120W+120W
                      A級8Ω 20W+20W
1kHz       0.02%(AUX) B級8Ω 100W+100W
                     B級4Ω 140W+140W
全高調波歪率 PHONO1,2→REC OUT 5V 20Hz〜20kHz       0.003%以下
PHONOMC→REC OUT 3V 20Hz〜20kHz       0.03%以下
TUNER・AUX→PRE OUT OUT 3V 20Hz〜20kHz 0.005%以下
MAIN IN→SP OUT 50W B級 8Ω 20Hz〜20kHz 0.01%以下
               10W A級 8Ω 20Hz〜20kHz 0.005%以下
TUNER→SP OUT 50W B級 8Ω 20Hz〜20kHz   0.01%以下
パワーバンド幅(0.02%歪) B級8Ω 10Hz〜50kHz
A級8Ω 10Hz〜70kHz
ダンピングファクター 45以上(8Ω,1kHz)
周波数特性 PHONO1,2,MC(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz 0±0.2dB
TUNER-PRE OUT       5Hz〜100kHz 0+0,−1dB 
TUNER-SP OUT(8Ω負荷) 5Hz〜50kHz  0+0,−1dB
入力感度(定格)入力インピーダンス PHONO 1   2mV(47,68,100kΩ)
PHONO 2   2mV(47kΩ)
MC        50μV(10Ω)
TUNER・AUX 120mV(50kΩ)
MAIN IN    1V(25kΩ)  
最大許容入力 PHONO 1  (1kHz,0.02%歪)  310mVr.m.s
PHONO 2  (1kHz,0.02%歪)  310mVr.m.s
MC        (1kHz,0.02%歪)  7.5mVr.m.s
TUNER・AUX (1kHz,0.02%歪)  20Vr.m.s
出力レベル(定格)出力インピーダンス/最大出力 REC OUT  120mV(600Ω)/18V
PRE OUT      1V(500Ω)/7V
トーンコントロール特性 BASS   ±10dB(20Hz)
TREBLE  ±10dB(20kHz)
ターンオーバー周波数 BASS   125Hz,500Hz
TREBLE  8kHz,2.5kHz
サブソニックフィルタ 15Hz,12dB/oct
ハイフィルタ 10kHz,12dB/oct
ノイズレベル・SN比 PHONO1,2(IHF-A net work)            82dB
MC     (IHF-A net work)入力50Ωショート 68dB
MC     (IHF-A net work) 入力0Ωショート 65dB
TUNER・AUX・TAPE(IHF-A net work)     100dB
MAIN          (IHF-A net work)     115dB
残留ノイズ                         0.1mV以下

 

■メーター部■


指示範囲 −50dB〜+5dB
応答速度 100μs
復帰速度 0.95sec

■その他■


定格電圧・周波数 AC100V 50/60Hz
定格消費電力 260W
外形寸法 461W×170H×360Dmm
重量 19kg
※本ページに掲載したCA-1000Vの写真,仕様表等は1977年6月のYAMAHAの
 カタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があります。したが
 って,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

※本ページを制作するにあたり,medic様より貴重な資料のご提供をいただきました。
 ご協力ありがとうございました。    
 

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