.DP-07の写真
LUXMAN DP-07
COMPACT DISC PLAYER ¥400,000

ラックスは1987年に凝りに凝ったセパレートCDプレーヤーDP−07+DA−07を発売しました。トータルで100万円を
超える超弩級機といってもいいモデルで,フルエンシーDACと名付けられた特殊な方式を採用したD/Aコンバーター
DA-07とそれに対応した重量級CDトランスポートDP-07,その中身のあまりの凝りかたには驚いたものです。

CDトランスポートDP-07の特徴は,信号への不要な振動やノイズの干渉を徹底して排除するための,無共振・無振動
化でした。振動を排除するために,厚さ12mmのアルミムク材のトップパネルやセラミック入り高密度FRPによる重量級
シャーシの採用などによる堅牢な構造をとり,その結果,CDトランスポート単体としては異例の20kgもの重量に達して
いました。重量級FRPベースとアルミダイカストシャーシ・メカ部は一体結合され,さらに特殊ショックアブソーバーでフロ
ーティング支持する構造になっていました。これらの無共振・無振動構造により,外部振動は徹底して遮断され,ピックア
ップ動作時の内部からの反作用振動も重量級ベースがしっかりと受け止め,レーザーピックアップの正確なトレースを実
現していました。

DP-07の内部DP-07のボディ

DP-07では,不安定な構造体の共振などによる悪影響を抑えるために,共振の多いトレイ機構を排除しトップローディン
グ型としていました。ディスク装着・取り出し用の凹部も真円ではなくいわばアンモナイト形状にしてディスク回転時の乱
気流の発生を防ぐ配慮もされていました。トップパネルは12mm厚のアルミムク材を使用し,内側をテーパー状にすること
により,デジタル符号を乱す外部光と,音圧による空気振動が効果的に遮断される構造としていました。

DP-07のトップローディング部

シャーシ内部は,ピックアップ部,マイコン部,電源部を各ブロックごとに隔離シールドされ,電気的な相互干渉を追放した2段
構造4室構成としていました。さらに,シャーシには銅メッキを施した上に黒塗装を行い,外観の重厚さと音質の向上を図ってい
ました。電源部は,信号処理系と駆動系に独立の2トランスを搭載し,各ステージ用に独立10レギュレーターを採用して,徹底
して相互干渉を排除していました。パーツも,音質対策を施したコンデンサーと抵抗の採用,トランスケースを含む全ての筐体へ
の銅メッキ処理,ガラスエポキシ70μ厚OFCパターンの基板,PC-OCC配線材など贅を尽くしていました。

DP-07のデジタル出力には,通常の光出力,同軸出力各1系統に加え,従来の数十倍の伝送レートを持つ超高速LUXタイプ
を採用し,DA-07とカップリングすることで高精度な信号伝送が実現していました。
 

DA-07の写真
LUXMAN DA-07
DA CONVERTER UNIT ¥800,000

何といっても、この超弩級CDプレーヤーシステムを特徴づけていたのがD/Aコンバータ^ユニットのDA-07でした。
パワーアンプを思わせる巨大な筐体と27kgもの重量には驚かされたものでした。

DA-07にはラックスが開発した「F・E・DAC(フルエンシー・DAC)」という独自のD/Aコンバーターが搭載されてい
ました。音楽再生においてはサイン波の再現性以上にパルス成分の再現性が重要であるということで。当時筑波大
学で発明された新しい数学理論「フルエンシー・セオリー」にもとづいいたDSPタイプのD/Aコンバーターでした。フル
エンシーセオリーにもとづいた新しい補間関数でデジタル符号をダイレクトに曲線でつないでアナログ再生するという
方式で,自然な波形が実現するというものでした。

通常のD/Aコンバーターは、デジタル符号を階段状にしてからアナログ信号に変換するために、その原理上、パル
ス成分の再生時に多くの付加振動が発生し,原信号の波形を大きく損ない固有の付加音が発生していたといわれて
います。「F・E・DAC」では,パルス波形に対しても余計な付加振動が発生せず,音楽波形の高い再現性があるとい
うものでした。さらに,デジタル符号を階段状に変化させることなく,直接に曲線でつなぐ波形再現方式のため,原理
的に波形振動を発生させてしまうデジタルフィルターや,位相ずれの原因となるアナログフィルターといった一切のフィ
ルターを取り去ることができていました。

DA-07の内部FRPボトムシャーシ

アナログ回路は,最大出力まで一定のバイアス電流を供給するラックス伝統の低インピーダンス伝送の真正ピュアA級
方式を採用し,高いクオリティを実現していました。電源部は,アナログ/デジタル独立の2トランスを搭載し,さらにアナ
ログ/デジタルそれぞれについてL/R完全独立の電源構成としていました。整流回路,11分割独立レギュレーターの
採用など,アナログ/デジタル間,チャンネル間,各ブロック間の電源を通じての相互干渉を徹底して排除していました。
パーツには,金メッキキャップ特殊塗装抵抗,音質対策を施したピュアフォーカスコンデンサーをはじめ,すべての配線材
にPC-OCC線材を使用し,70μ厚OFCパターンを持つガラスエポキシ基板などとあわせ贅を尽くした構成でした。

シャーシは,2段構成として,アナログ部とデジタル部を完全分離し,さらに各ブロックを分離して,トータル10室構成とし
て完全シールドし,シャーシ全体には銅メッキを施して相互干渉の排除を図っていました。加えて,18mm厚押出材のフ
ロントパネル,高剛性・大質量の特殊FRPボトムシャーシなど構造全体の無共振化を徹底していました。凝ったDACと
強固な構造体,その結果としての27kgもの重量だったようです。

DA-07は,入出力端子を豊富に装備し,入力端子には,同軸が3系統,光が(TOSリンク)2系統とラックス独自の高
速光伝送方式の入力が1系統で,合計6系統が装備されていました。出力端子は,アナログがバランス出力用キャノン
コネクターに加えダイレクト/バリアブルコアキシャル出力を装備し,さらに録音用デジタル出力として標準タイプ同軸/
光(TOSリンク)を装備していました。

以上のように,ラックスが凝りに凝って作り上げたDP-07+DA-07はまさに超弩級のCDプレーヤーシステムでした。そ
こからもたらされる音は,圧倒的な響きの厚さと堂々たる低音が特徴的でした。さらに,中高域の独特の滑らかさとやわら
かな雰囲気はラックスの純A級アンプに通じるアナログ的な音だったように記憶しています。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DP-07
ビットのひとつひとつを大切にした,この堅牢な存在。

 
◎音楽の生命を高精度にとらえ,高純度に伝送。
◎振動を排除する必然の重量と構造。
◎無共振・無振動化を最大のテーマに,
 ピックアップ系を強化。
◎トップローディングはあくまで音のために。
◎電気的な干渉を排除する2段構造4室構成。
◎従来の概念を一新したオプティカル伝送。
◎独立2トランスによる強化電源を搭載。
◎シンプル操作と多機能性が美しく両立。
◎考え得る最良のパーツを注ぎ込んで。


DA-07
音楽の生命をとらえる,新次元F・E・DAC搭載。

 
◎微細な振幅の中に,音楽がある。
◎重要なのは,パルスの再現性。
◎音楽の生命を再現するF・E・DACが,
 すべてのフィルターを追放した。
◎F・E・DACのクオリティを活かすA級アンプと
 超高性能オプティカル伝送。
◎豊富な入力・出力端子。
◎分離シールドと高剛性シャーシ。
 共振を追放する超重量構造。
◎全回路L/R完全独立の強力電源。
◎妥協を排して選び抜いたパーツと素材。
◎あらゆるデジタルソースに対応する
 マルチプロセッサー機能。
◎簡潔なフロントビュー。
 
 

●SPECIFICATIONS●

■DP-07■


型式 デジタル出力専用コンパクトディスク・プレーヤー
読み取り方式 非接触光学読み取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAsダブルへテロダイオード λ=780mm
回転数 約500rpm〜200rpm(CLV)
エラー訂正方式 CIRC
デジタル出力端子 (コアキシャル)最大出力レベル0.5Vp-p/75Ω
(オプティカル)OPTICAL1 LUX専用型
         OPTICAL2 EIAJ標準型
付属装置 ライン・フェーズ・センサー
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 15W
外形寸法 300W×183H×452Dmm
重量 20kg
 

■DA-07■


DAコンバーター F・E・DAC,16ビット L・P・Fなし
デジタル入力端子 (コアキシャル)COAXIAL 1.2.3. 0.5Vp-p
(オプティカル)OPTICAL 1 LUX専用型,125Mb/s
         OPTICAL 2 EIAJ標準型,6Mb/s
デジタルレコーディング端子 (コアキシャル) 0.5Vp-p/75Ω
(オプティカル) EIAJ標準型,6Mb/s
アナログ出力端子 (コアキシャル) FIXED    2V/47Ω
          VARIABLE 2V/100Ω
(バランス)   FIXED    4V/94Ω
サンプリング周波数 32kHz,44.1kHz,48kHz(自動切替)
周波数特性 4Hz〜20kHz(44.1kHz入力時)
全高調波歪率 0.008%(EIAJ)
インパルス歪率
(振動波高値/サンプリング波高値)
約0.4%
(参考:従来のシャノンの定理に基づくDAコンバーター約26%)
SN比 96dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 96dB(EIAJ)
チャンネルセパレーション 115dB以上(EIAJ)
付属装置 ライン・フェーズ・センサー
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 43W
外形寸法 438W×220H×474Dmm
重量 27kg

 
※本ページに掲載したDP-07及びDA-07の写真・仕様表等は
 1988年8月のLUXMANのカタログより抜粋したもので,ラックス
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
 で転載・引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
 ください。                                      

※本ページを制作するにあたり,DRAG PRO様より貴重な資料の
 ご提供をいただきました。ご協力ありがとうございました。
 

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