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OTTO DCA-V3
STEREO INTEGRATED DC AMPLIFIER ¥67,0001978年にオットー(三洋電機)が発売したプリメインアンプ。一見ごく普通の目立たないオーソドッ
クスなデザインをもつプリメインアンプですが,パルス電源を搭載した電源部を持つ,オットーの意欲
作でした。DCA-V3の電源部は,いわゆるパルス電源で,「ハイスピード&レギュレーテッドICパルス電源」の
略で,「H-R ICパルス電源」と称されていました。この「H-R ICパルス電源」は,アンプの電源部
に求められる,入力電圧・負荷変動に強いこと(レギュレーションの良いこと),低インピーダンスであ
ること,過渡応答がよいこと,容量が十分でかつ安定していることなどの条件を満たすために,通常
のトランス電源に対して,コンピューターなどの産業用電子機器に使用されているスイッチングレギュ
レーターを用いた電源部でした。通常のAC100V電源の交流をダイレクトに直流にしたあと,高周波
のパルス波に変換し,高周波フェライトコアトランスで降圧→整流して,希望の直流電圧を得るもので
小型で高効率,安定度が高いなどの特徴を持っていました。
さらに,「H-R ICパルス電源」の特徴として,定電圧化のために徹底してデリケートな制御を行うフィ
ードバック回路が設定されていました。これは,取り出された直流電圧を,もう一度フィードバック回路
を通して,そのわずかな誤差までも検出し,正確で安定した出力を取り出すもので,PWM制御により
出力電圧に対応してパルス幅をコントロールして定電圧化を行い,その名の通り,ハイスピードにレギ
ュレーション(入力電圧変動率1%以内,負荷電圧変動率2%以内を実現)を確保しようとするもので
した。
また,スイッチング周波数が35kHzと高く設定され,(先発で同じくパルス電源を採用していたソニー
はスイッチング周波数が20kHzだった。)スイッチング速度が高速となり,可聴帯域外になることなど
とともに,高速で高安定度を実現していました。
この「H-R ICパルス電源」には,三洋電機の半導体技術が生かされた高耐圧で高速スイッチングが
可能なハイブリッドICが開発され,部品点数の著しい減少と信頼性の向上が実現され,「ICパルス電
源」の名を冠することになっていました。高周波の他のアンプ部への影響を避けるために,電源部全体
は,ビス1本使わない,全体を缶詰のように包み込む「CANシールド」で,不要輻射を抑えていました。
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イコライザアンプには,低雑音FETによる差動入力カレントミラー回路→2段目エミッタ接地増幅→
終段ピュアコンプリメンタリーSEPP−OCLという3段構成が採用されていました。初段に使用され
た低雑音FETは吟味されたものを使用し,オーバーオールの特性で,2.5mV感度で90dB(IHF-A)
歪み率0.01%と,高SN,低歪みを実現していました。
また,MC型カートリッジに対しては,MCヘッドアンプを搭載し,0.06mV感度で80dBという高SN
比を実現していました。パワー段は,信号経路からコンデンサを排除したDCアンプを採用し,ハイブリッドパワーICを専用に
開発して搭載していました。このハイブリッドパワーICは,60W+60Wの出力を,全高調波歪率
0.02%以下,混変調歪率0.02%以下の低歪率で実現していました。機能的にはオーソドックスな構成で,トーンコントロールはコントロール特性の良さで定評のあるBAX
型を搭載し,トーンスイッチOFFで切り離されるようになっていました。SUBSONICフィルタ(5Hz),
ローフィルタ(20Hz)や,ラウドネス,相互ダビング可能な2系統のテープ端子などが装備されていま
した。以上のように,DCA-V3は,比較的薄型で軽量の筐体に,当時の最新技術を投入したオットーの意
欲作でした。ここで展開されたパルス電源の技術は,その後途絶え,継承されませんでしたが,デジ
タル時代になって見直され,海外の高級機などに見られるようになってきたのは周知の事実です。そ
の意味でも,当時としては非常に先進的なアンプであったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎高性能MCヘッドアンプ搭載
◎SN比90dB(2.5mV)のイコライザアンプ
◎特性の美しいトーンコントロールの装備
◎音楽をリアルに再生するDCパワー60W×60W
◎H-R ICパルス電源がDCパワーに磨きをかける
◎高速応答の保護回路を内蔵した安全設計
◎ローフィルタ&サブソニックフィルタの装備
◎金メッキ処理のMC/MM入力端子
実効出力 | 60W+60W(20Hz〜20kHz,8Ω動作,0.02%歪) |
全高調波歪率 | 0.01%以下(実効出力−3dB) |
混変調歪率 | 0.02%(実効出力時) |
ダンピングファクター | 50(20Hz〜20kHz) |
入力感度/インピーダンス | PHONO 1(MM):2.5mV/47kΩ
PHONO 2(MC):0.06mV/22Ω AUX :150mV/47kΩ TUNER :150mV/47kΩ TAPE1・2 :150mV/47kΩ MAIN INPUT :1000mV/47kΩ |
出力電圧 | REC OUT1・2 :150mV
PRE OUTPUT :1000mV PHONES(OPEN):25mW(8Ω) |
周波数特性 | PHONO1・2 :20Hz〜20kHz±0.3dB
AUX・TUNER・TAPE1・2:10Hz〜20kHz+0−3dB MAIN :DC〜50kHz+0−3dB |
トーンコントロール特性 | 最大可変幅BASS :±10dB at 100Hz
TREBLE:±10dB at 10kHz |
フィルタ特性 | LOWフィルタ :20Hz 6dB/oct
SUBSONICフィルタ:5Hz 6dB/oct |
SN比
(IHF-Aネットワーク) |
PHONO 1(MM) :90dB
PHONO 2(MC) :80dB AUX・TUNER・TAPE1・2:95dB MAIN :100dB |
最大許容入力 | PHONO 1(MM):200mV
PHONO 2(MC):5mV |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 100W |
外形寸法 | 440W×89.5H×304Dmm |
重量 | 6.2kg |
※本ページに掲載したDCA-V3の写真,仕様表等は,1978年
10月のOTTOのカタログより抜粋したもので,三洋電機株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
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