DX-ELEVENの写真
CORAL DX-ELEVEN
31cm 4-Way Speaker System ¥138,000(1台)
コーラルが1985年に発売した4ウェイスピーカーシステム。コーラルはユニットメーカーとして有名ですが,
このころ強力なスピーカーシステムを次々に発売し,このDX-ELEVENはその頂点に立つ大型のブックシ
ェルフ型スピーカーシステムでした。とにかく,その価格からは信じられないほどの強力なユニットが4ウェイ
で搭載され,特にミッドレンジ以上のハードドームユニットがしっかりした音を聴かせてくれました。      

ウーファーユニットは,31cm口径のカーボン・グラファイト振動板採用のコーン型でした。このユニットは構
造が通常のコーン型振動板と異なり,角度の異なるコーンを2枚同軸上に重ねて2層構造とし中が中空の
モノコック構造として,高い剛性と適度な内部損失を実現していました。コーンの付け根の部分に,円状の
くぼみをつけて高い周波数をカットし,強度を高め,センターキャップの共振を抑える構造にもなっていまし
た。ボイスコイルは,無酸素銅線によるロングボイスコイルで大入力にも強く,マグネットも直径160mm
と通常より大型のものを使用し,ポールに銅製のキャップを取り付け,逆起電力による歪みを抑える設計
になっていました。ユニットメーカならではの高い技術がこめられた強力なウーファーユニットでした。  

スコーカーユニットは,ハードドーム型としては恐らく史上最大級の10cm口径の強力なものでした。ハー
ドドームの素材は,New ATMCというアルミをベースにした特殊な硬質軽合金で,サファイアに近い硬度
で表面処理されたという新開発の素材であり,当時,究極的といえる剛性と適度な内部損失を兼ね備える
とうたっていた素材でした。これも,コーラルが住友金属の系列会社であり,金属素材を吟味できるというこ
とによるのかもしれません。磁気回路もウーファー同様強力で,銅キャップを採用し,軽くて伝導率の高い銅
クラットアルミ線のボイスコイルで,マグネットも直径140mmと強力なものでした。フレームにも振動板に採
用できるほど硬度の高いアルミ合金(52S材という)を使い,高い剛性を誇っていました。単体での能率が
97dBにも達する高能率で,150Hz〜10,000Hzのワイドレンジを誇る強力ユニットでした。この強力な
ユニットを280Hz〜4,000Hzの余裕ある帯域で使用していました。                     

ハイスコーカーユニットは,スコーカーと同様の素材と構造を持つ直径6cmのハードドーム型ユニットで,
500Hz〜20kHzの再生帯域を持つユニットを,4,000Hz〜8,000Hzの最も特性の良い帯域で余
裕を持たせて使用していました。                                          

スーパートゥイーターは,スコーカーと同様の素材を使用し,軽量のアルミリボン線のボイスコイルを振動
板に直接固定する構造で,軽量高剛性化を追求していました。再生帯域は,5,000Hz〜40,000Hz
を誇る高性能ユニットでした。                                            

ネットワークは,ウーファー部と中・高音域との回路基板を完全に独立させた分散型設計で,コイル,配線
材ともすべて無酸素銅線を使用し,半田を使用せずに圧着ワイヤリングとし,抵抗分を徹底的に低減して
いました。                                                        

DX-ELEVENの内部

エンクロージャーも高剛性で高品質なものでした。高密度パーチクルボードを使用し,前後バッフルとも,
15mm厚のものを2枚再合板して30mm厚として使用していました。側板は25mm厚のものを使用し,
さらに側板,底板,天板それぞれに補強として20mm厚板を回してあり,側板の厚さは45mmにもなっ
ていました。さらに,前バッフルには,横方向に補強桟を2本,後バッフルには,ウーファーのくりぬき板
を補強のために使用し,板厚は60mmにもなっていました。形状は,前後ともラウンドバッフルとしてい
ました。型式は密閉型で,ウーファーの性能を最低域まで出し切る設計でした。             

以上のように,ユニットメーカーであり,かつスピーカー専業メーカならではの贅沢なユニットの使用と,
豪華なエンクロージャーの構造,各部に生かされたノウハウが感じられ,この価格では考えられないほ
ど豪華で強力なスピーカーシステムであり,今でも印象に残っている1台です。また,ハードドームをベ
ースとしたシステムでありながら,歪み感がほとんどなく,高品位で実に情報量の多い音であったことが
今でも強く印象に残っています。                                          
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 



 

4WAY 新時代の幕開け。



 

◎分割振動をも抑えた
  高剛性カーボングラファイト振動板を採用。
  張りのある力強い低音域をクリアーに再現。
  (31cmコーンウーファー)
◎新開発素材を組み込んだ,世界最大級の
  100mm大口径スコーカー。
  バランス型磁気回路を採用97dBを実現。
  (10cmハードドーム・スコーカー)
◎スコーカーとのつながりを追求し,理想的な
  低foを確保。
  エネルギッシュでクリアーな音色を再現。
  (6cmハードドーム・ハイスコーカー)
◎限界を極めた軽量高剛性化
  エネルギー感に満ちあふれた高音域再生
  (2.2cmハードドーム・スーパートゥイーター)
◎各ユニットのトランジェント特性を最大限に
  発揮させる音質最優先の圧着ワイヤリング
  方式による分散型ネットワーク
  (ディバイディング・ネットワーク)
◎徹底した高品位設計思想。
  原音に迫るシャープな音像定位を実現。
  (高剛性ウォールナットキャビネット)
             
 

●DX-ELEVEN SPECIFICATION●


エンクロージャー 型    式  4ウェイ4スピーカー 完全密閉型システム 左右対称型 
基    材  最高級高密度パーチクルボード 
バッフル板   前後とも30mm厚ラウンドバッフル(15mm厚 2層合板)
使用ユニット 低  音  31cmコーン型 
中低音  10cmドーム型 
中高音  6cmドーム型 
高  音  2.2cmドーム型
再生周波数帯域 25Hz〜40,000Hz
最低共振周波数 37Hz
プログラムソース入力 150W
瞬間最大入力 300W
公称インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 90dB/W-m
クロスオーバー周波数 280,4000,8000Hz
外形寸法 395W×740H×380Dmm
サランネット 黒色 着脱可能
重量 40kg
※本ページに掲載したDX−ELEVENの写真・仕様表等は1985年7月
 のCORALのカタログより抜粋したもので,コーラル株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等するこ
 とは,法律で禁じられていますのでご注意ください。           
 

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