SS-G7の写真
SONY SS-G7
3WAY FLOOR TYPE SPEAKER SYSTEM ¥128,000(1台)
1976年にソニーが発売したフロア型スピーカーシステム。このころソニーが展開していたスピーカーシステム
「Gシリーズ」の中核的な製品で,1980年に後継機G7aにモデルチェンジするまでに1万台以上という大型の
フロア型としては異例の大ヒット作となった製品でした。

G7の最大の特徴は,「PLUMB IN LINE方式」でした。前後方向の定位を改善ずるために写真のようにウー
ファーユニットが前に出ていて,スコーカー,トゥイーターなどの全ユニットの等価的な音源位置を鉛直線上にそろ
えたもので,テクニクスの「リニアフェイズ」と同様な考え方で位相をコントロールするものだったと思われます。 
(テクニクスの場合は,スコーカー,トゥイーターを後方に下げて同じ効果をねらっていました。そして,この後,ソ
ニーもテクニクスも音源位置をそろえやすい平面スピーカーに走ったのは偶然ではなかったのかもしれません。)

SS-G7の内部構成  ダンプ材の塗布

この「Gシリーズ」の設計に当たって,ソニーは当時のカタログによるとNASTRAN(有限要素法)というコンピュー
タを用いた物体の高速運動時の形状変化を分析する手法を導入し,ユニットのコーン紙の形状の決定に応用した
とのことでした。ウーファーユニットは38cm口径の半頂角60度のストレートコーンで,カーボンを混抄した当時,ソ
ニー自慢のCARBOCONユニットでした。同心円状のリブコルゲーションを施され,総磁束214,000マクスウェル
の強力磁気回路でドライブされ,力強い低音再生を可能にした強力なウーファーユニットでした。エッジ等のダンプ
材が7回の手塗り作業で仕上げられていることも売りものでした。
スコーカーとトゥイーターはそれぞれ10cmと3.5cmのバランスドライブ型ユニットでした。このバランスドライブ型は
通常のコーン型より大きなセンタードームを持ち,有効面積を小さくした形のユニットで,ソニーがこのGシリーズ以前
から採用していたものでした。特に,トゥイーターは,軽量で剛性の高いチタンを一体深絞り成形でバランスドライブ型
に加工したものとなっていました。

ネットワークは,1.8mm銅線を用いて特殊樹脂で封入成形したインダクターと無共振コンデンサーで構成され,内部
配線には,1本あたり55芯のウレタン皮膜銅線(リッツ線)が用いられていました。          
エンクロージャーは,バッフルが30mm厚,その他の部分が18mm厚のパーティクルボード製のバスレフ型の大型の
もので,各面の共振周波数をコンピュータを用いて測定し,箱鳴りを効果的に抑えた設計でした。バッフル面には,ソ
ニー独自の「AGボード」を採用していました。「AGボード」は,バッフルボードからの不要な反射が直接波に悪影響を
える現象を抑えるために,バッフル面に無数の縦横の溝を刻み反射波が散乱するようにしたもので「Accuusticcal 
Grooved Board」(アコースティカル・グルーブド・ボード)の略でした。そして,これが外観上のもう一つの特徴にな
っていました。しかし,この贅沢な作りのエンクロージャーをはじめ,大口径ウーファーの巨大なダイカストフレームなど
今作れば,1本20万円でもできないでしょう。

このように,ソニーが当時の先端技術と細かな音楽的な詰めをして開発した高級システムでした。このころ各社が,
1本13万円前後の大型のフロア型システムを次々に発売して,激戦を繰り広げましたが,このG7はその中の1台
でした。しかし,各社とも20万円してもおかしくない高精度なエンクロージャーと高品質な部品を投入したネットワー
クなど贅沢な作りのシステムを出していたという感じで,何社かは赤字だったのではないでしょうか。このG7もその
競争の中で出されただけあって贅沢な作りでした。大型システムらしい迫力ある低音に支えられたパワー感のある
癖のない音が人気を得ました。後継機G7aになって一気に¥158,000に値上げされたことからも,このG7のお買
い得ぶりがうかがえます。当時,中学生だった私は,でっかくてすごいスピーカーだなあと販売店で眺め,迫力ある
音にあこがれたものでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 





 

奥行感までも再現する自然で深い音場感。
演奏家の心の機徴を             
迫真力をもって伝えるフロア型スピーカー。
●主な仕様●


型式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ型
ユニット構成 ウーファー:38cmコーン型 
スコーカー:10cmバランスドライブ型 
トゥイーター:3.5cmバランスドライブ型
クロスオーバー周波数 550Hz,4.5kHz
公称インピーダンス 8Ω
再生周波数帯域 30Hz〜20,000Hz
出力音圧レベル 94dB
最大許容入力 200W(瞬間)
レベルコントロール 中域・高域連続可変
外形寸法 510(幅)×940(高さ)×445(奥行),ネット付き
重量 48kg,ネット付
 ※本ページに掲載したSS-G7の写真・仕様表等は1979年9月の
 ソニーのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があ
 ります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすること
 は法律で禁じられていますので,ご注意ください。
 
 

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