Lo-D HA-8700
STEREO AMPLFIER ¥159,0001978年にローディー(日立)が発売した高級プリメインアンプ。自社開発の優れた素子MOS FETを出力段に
搭載し,優れた性能を実現した意欲作でした。MOS FETアンプの名機HMA-9500の開発で得たノウハウを
受け継いだ高性能プリメインアンプでした。
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HA-8700の最大の特徴は,MOS FETによる出力段を持つことでした。差動増幅器の1段目と定電流増幅回
路を負荷とする2段目がMOS FETコンプリメンタリープッシュプル回路をダイレクトにドライブする3段パワー回路
というMOS FETの優れた特性を生かしたシンプルな構成になっていました。そして,MCヘッドアンプ,イコライザ
ーアンプ,プリアンプ,メインアンプの各入り口と負帰還のループ内からコンデンサーを取り去った全段DCアンプ構
成をとり,安定したアンプ動作を実現していました。
HA-8700はメインダイレクトスイッチをONにすることで,メインアンプのゲインを高くして,(29dB→45dB)イコライ
ザーアンプとメインアンプが直結になり,よりシンプルな回路構成となる機能も持っていました。そして,ミューティン
グスイッチにより,メインダイレクト時にもOFFじと同じゲインになるようになっていました。また,プリ,メイン間のジャ
ンパーピンを外すことで,プリ,メインの分割使用が可能になっていました。電源部は,電源トランスから左右独立構成とした左右独立2電源になっていました。強力な大型トランスと高品質
大容量電解コンデンサによるこの強力な左右独立の電源部により,セパレーションに優れた再生音を実現してい
ました。また,小信号系のトーンアンプ,イコライザーアンプ,MCヘッドアンプにそれぞれ独立した安定化電源を採
用し,アンプ間の相互干渉も抑えていました。
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イコライザーアンプは,上記のようにDC構成で,初段にローノイズジャンクションFETを採用したカスケード差動
のICL回路,2段目はカレントミラー式差動回路,終段はSEPP回路の3段直結で,入力感度2.5mVに対して
SN比90dB,最大許容入力300mVを誇る高性能なものでした。
MCヘッドアンプは,初段に初段にローノイズジャンクションFETを採用し,2段目は定電流駆動回路,終段は,
SEPP回路の3段直結のより,250μVの入力感度に対し,73dBのSN比を誇りました。
また,カートリッジの負荷抵抗に対応したPHONOセレクターを装備し,MMポジションで4段階,MCポジションで
4段階の切り替えが可能になっていました。スピーカー出力端子のA,B2系統の切換には,スイッチの接触抵抗や配線引き回しによる害を防ぐため,保護リ
レーを兼ねたパワーリレーを2個用いて行い,スピーカーへの出力をリアパネルのスピーカー端子のところで切り
換える仕組みになっていました。また,大電流の流れる出力段の電源部,メインアンプ部には,従来のプリメイン
アンプの約2倍の厚さを持つ70μ銅箔基板を採用し,電源ラインから出力ラインまでの低インピーダンス化を図っ
ていました。リアパネルの入力端子もすべて金メッキが施されていました。
パーツの面でも,高品質なものを使用していました。出力カップリングケミカルコンデンサのバックトゥーバック接続
をはじめ,電源部のケミコンは音質重視で選択され,メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの並列接続,アン
プの位相補正へ銅リード線を使用した500V耐圧スチロールコンデンサを使用するなど,高品質部品を厳選して使
用していました。ボリュームも,左右連動誤差,減衰特性に優れ,歪みの発生の少ない,多接点摺動子を使用した
高品質なものを使用していました。
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以上のように,HA-8700は,MOS FETの高性能を世に知らしめた高性能パワーアンプHMA-9500の好評を
受け,ローディーが気合いを込めて開発したのが分かるプリメインアンプの力作でした。当時のブランドイメージの弱
さなどから広く人気を得るまでには至りませんでしたが,いいアンプだったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
素子の音色は優性遺伝する。
◎パワーMOS FET
・超広帯域(5Hz〜40kHz)にわたり,
低ひずみ(0.008%)大出力(90W+90W)
◎メインダイレクトスイッチ
・メインアンプの音質をさらに発揮させる
メインダイレクトスイッチの採用
◎全段DCアンプ構成
・応答特性の良い高忠実度伝送と
動作安定度の高い全段DCアンプ構成
◎左右独立電源
・音の分離,にごりを改善。左右独立電源
・独立させた小信号系安定化電源
◎ワイド・ダイナミックレンジ
・音楽の微妙で繊細な味を引き出す
MCヘッドアンプ内蔵
・SN比90dB,入力感度2.5mVに対して
許容入力300mV。イコライザーアンプ
◎低インピーダンス設計
・ダイレクト出力端子,70μ銅箔基板を採用
◎徹底した試聴試験
・徹底した試聴試験による音質重視設計
・細部にわたるまで,高品質部品を選択
◎多彩な付属機能
・PHONOセレクタースイッチを装備
・連続可変高性能レベルアッテネーター
●メインアンプ部●
実効出力(両ch駆動,8Ω) | 90W+90W(5Hz〜40kHz) |
全高調波ひずみ率 | 0.008%(5Hz〜40kHz・定格出力時・8Ω)
0.02%(5Hz〜100kHz・45W出力時・8Ω) 0.002%(1kHz・定格出力時・8Ω) |
混変調ひずみ率
(60Hz:7kHz=4:1) |
0.008%(定格出力時・8Ω)
0.003%(45W出力時・8Ω) |
周波数特性 | DC〜100kHz+0−1dB |
入力感度/インピーダンス | 1V/47kΩ(MAIN IN) |
SN比(IHF・Aネットワーク) | 115dB |
ダンピングファクター | 80(1kHz・8Ω) |
負荷インピーダンス | 4Ω〜16Ω |
●プリアンプ部●
入力感度/インピーダンス | PHONO-1,2 MM2.5mV
(100Ω,22kΩ,47kΩ,100kΩ/100pF,200pF,300pF,400pF) MC250μV(100Ω) TUNER,AUX 150mV(47kΩ) TAPE PLAY-1,2 150mV(47kΩ) |
出力レベル/インピーダンス | TAPE REC OUT-1,2 150mV(600Ω)
PRE OUT 1V(600Ω) |
PHONO最大許容入力
PHONO-1,2 |
MM 300mV(1kHz・0.005%)
MC 30mV(1kHz・0.005%) |
全高調波ひずみ率 | MM 0.005%以下(20Hz〜20kHz・AT REC OUT LEVEL 10V)
MC 0.005%以下(20Hz〜20kHz・AT REC OUT LEVEL 10V) TUNER,AUX,TAPE PLAY-1,2 0.005%以下 (20Hz〜20kHz・AT REC OUT LEVEL 1V) |
周波数特性 | PHONO-1,2 20Hz〜20kHz ±0.2dB(RIAA偏差)
TUNER,AUX,TAPE PLAY-1,2 10Hz〜100kHz+0−2dB |
SN比(IHF・Aネットワーク) | PHONO-1,2 MM90dB,MC73dB
TUNER,AUX 100dB TAPE PLAY-1,2 100dB |
トーンコントロール
(ターンオーバー周波数) |
BASS ±8dB(100Hz・50Hz)
TREBLE ±8dB(10kHz・20kHz) |
ローフィルター | 15Hz・6dB/oct |
ミューティング | −16dB |
●その他●
電源 | AC 100V 50Hz/60Hz |
消費電力(新電気用品取締法) | 240W |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動 2
電源スイッチ非連動 1 |
外形寸法 | 435W×164.5H×420Dmm |
重量 | 20kg |
※本ページに掲載したHA−8700の写真,仕様表等は,1978年12月
のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
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