JA-S75の写真
Victor JA-S75
STEREO  INTEGRATED AMPLIFIER ¥79,800
           (別売ウッドケース WD-20 ¥6,500)

 
1976年にビクターが発売したプリメインアンプ。同年発売で,中級機ながら,独立電
源論争を生んだ名機JA-S41のA・B級独立電源をさらに推し進めて,独立電源の理
想を追求した力作でした。

JA-S75の最大の特徴は,上記したように,独立電源論争に対する回答であるかのよ
うなA級B級独立電源+L・R独立電源にありました。1975年にトリオ(現ケンウッド)
が左右独立電源搭載のKA-7300の発売で巻き起こした「独立電源ブーム」の中で各
社左右独立電源のアンプを発売した中で,1976年にビクターはA級B級独立電源の
プリメインアンプJA-S41を発売し高い評価を得ました。このA級B級独立電源は,B級
動作を行う電力増幅段(出力段)と,それより前段の電圧増幅を行うA級増幅段の電源
をトランスから独立させ,さらにA級段の電源を定電圧化したもので,前後独立電源とも
いうべきものでした。出力段の電源電圧の変動がそれより前段に影響をもたらして歪み
を増加させることを防ぐ技術でした。さらに,B級増幅段(出力段)の電源をトランスから
左右独立させたL・R独立電源として,A級B級独立電源とプラスして,電源部による各増
幅段の干渉を徹底して抑える設計になっていました。
そして,全体のシャーシレイアウトもA級段B級段とL・Rの独立性を考えて前後・左右に
分けて合理的に整然と配列されたものとなっていました。

JA-S75の内部

出力段は,PNP-NPNのペア特性,基本特性を重視しながら特別に選定した高性能パワー
トランジスターを各チャンネル4個ずつ使用したパラレルプッシュプル動作で80W+80Wの
出力を確保していました。

プリアンプ部は±2電源・全段A級動作で,広帯域に深いNFBをかけ,SN比やダイナミックレ
ンジ,安定性を高めた設計になっていました。
イコライザー回路には,初段に3段の低雑音FETをカスコード接続で配して,入力コンデンサー
を排除したICL回路となっていました。ICL・FET化することによって,入力セレクター切換時の
ポップノイズ,ダイナミックレンジの確保など,諸問題が解消され,入力コンデンサーが音に与
える影響も皆無としていました。また,負荷抵抗と容量をそれぞれ3段階に切り換えられるスイ
ッチを備え,合計9通りの組み合わせの負荷条件に切り換えられるようになっていました。
トーンコントロール回路には。2段NF型の直結ハイゲイン・アンプを採用し,高いリニアリティと
低歪みを確保していました。
信号系のコンデンサーの排除に加え,パーツの面でも配慮がなされ,ゼロにはできないコンデ
ンサーについては,高調波歪み成分を厳密に分析・解析して開発された新開発のコンデンサー
が使用されていました。

実使用時に音質への影響が大きいボリュームには,「ハイ・リニア・ツイン・ボリューム」が採用
されていました。単一材料で抵抗体を構成し,その面積を連続的に変化させることで正確な減
衰特性を得ようとしたのがハイ・リニア・ボリュームで,均一な材質によって,信号を分配するた
め,小音量時に生じる歪み,リニアリティの劣化や高域減衰をほとんどなくすことができるもの
でした。また,トーンコントロール回路の前後にボリュームを置いたツイン・ボリューム方式を採
用して,小音量時の残留雑音を効果的にカットし,聴感S/Nを向上させていました。

以上のように,JA-S75は,JA-S41の上級機として,独立電源化をより推し進め,比較的コ
ンパクトな筐体にハイパワーとしっかりした内容を実現していた実力派のプリメインアンプでした。
A級B級独立電源にL・R独立電源を加えた強力な電源部に支えられ,安定感のあるクリアな音
を実現していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音像がくっきり浮かびます。
A・B独立+L・R独立電源方式,
動的干渉歪の徹底追求から。



音楽を生かす原点への細微。
◎音像定位を向上させる充実電源
 AB・LR独立方式
◎ハイパワー80W+80W,
 低歪率0.005%(1kHz)
◎初段FET3段カスコード接続
 ICLイコライザー回路等
◎ハイ・リニア・ツイン・ボリューム
◎フロント・パネルの
 カートリッジ・ロード切換え
◎新3大重点保護回路
◎扱いやすく,しかも接触抵抗の少ない
 高信頼スピーカー・ターミナルとアース・ ターミナル。
◎ハイ・リニア・ツイン・ボリュームの精度 を象徴する
 コンベックス(浮文字)スタイルの精密加 工dB目盛。




●JA-S75型規格●

■パワーアンプ部■ 

実効出力 80W+80W(20Hz〜20kHz,8Ω両CH動作時,THD0.05%)
高調波歪率 0.005%(80W・1kHz),0.005%(1W・1kHz)
混変調歪率 0.05%(80W),0.008%(8W)
パワー・バンド・ウィズス 5Hz〜40kHz(−3dB出力,8Ω両CH動作時,THD0.05%)
周波数特性 7Hz〜80kHz+0,−1dB(1W)
出力端子 スピーカー:SYSTEM-1,2(4〜16Ω),SYSTEM-1+2(8〜16Ω)
ヘッドホン:4〜16Ω
ダンピングファクター 50(8Ω,20Hz〜20kHz)
SN比 105dB(IHF-Aネットワーク,ショート・サーキット)



■プリアンプ部■

入力感度/インピーダンス PHONO:2.5mV/33,47,100kΩ&100,220,330PF
TUNER:170mV/50kΩ以上
AUX:170mV/50kΩ以上
TAPE PLAY:170mV/50kΩ以上
PHONO最大許容入力 200mV(RMS)/550mV(P・P)
PHONO RIAA偏差
±0.3dB(20Hz〜15kHz)
出力端子
TAPE REC1,2:170mV
PRE OUT:1.2V(THD0.01%)
周波数特性 TUNER,AUX,TAPE PLAY:7Hz〜80kHz+0,−1dB
トーンコントロール BASS±8dB(100Hz)/TREBLE±8dB(10kHz)
フィルター サブソニック:18Hz(−6dB/oct)
ハイ     :9kHz(−6dB/oct)
ラウドネス・コントロール +6dB(100Hz)/+4dB(10kHz)(ボリューム−30dB時)
ミューティング −20dB
SN比 PHONO・75dB(IHF・Aネットワーク)
TUNER,AUX,TAPE・100dB(IHF・Aネットワーク)

 
 

■電源部・その他■ 

回路方式 A級・B級(左右専用)独立電源
電源電圧
AC100V(50/60Hz)
消費電力 195W(電気用品取締法基準)
ACアウトレット 電源スイッチ連動2,非連動1
寸法・重量 420W×162H×390Dmm・14.5kg


※本ページに掲載した JA-S75の写真,仕様表等は,1976年11月
 のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著
 作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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