![]()
TRIO KA-9300
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥150,0001976年にトリオ(現ケンウッド)が発売したプリメインアンプ。プリメインアンプとしては初めてDCアンプ
をメインアンプ部に採用し,DCアンプブームを巻き起こしました。そして,このKA-9300以降,DCアン
プが一般的なものとなりました。DCアンプは,その名の通り,直流領域まで増幅性能を持つアンプで,そのために,信号経路からカップ
リングコンデンサーを排除したもので,当時,トリオではNFループ内にもコンデンサーを持たないことを売
りにしていました。当時,OCL(アウトプット・コンデンサーレス),ICL(インプット・コンデンサーレス)とい
うように,信号経路からコンデンサーを追放しようとする発想が広まり,「DCアンプ」とともに「ダイレクトカ
ップリング」と称されて,各社に一気に広まっていきました。
現在では常識となっている,信号経路,NFループ内に時定数を形成するコンデンサーを持たないDCア
ンプとすることで,低域の位相特性の向上,過渡応答特性の改善,超低域の安定した再生など多くの
メリットがあったようです。
KA-9300では,このDCアンプをプリメインアンプとして初めてパワー部に搭載し,KA-7300以来の
左右独立電源と組み合わせ,その後のトリオ(ケンウッド)のアンプの基本を完成したともいえるモデル
でした。パワーアンプ部は,初段FET差動増幅+定電流駆動A級増幅+純コンプリメンタリー・パラレルプッシュ
プル増幅によるICL・OCL・DCアンプという回路構成で,20Hzから20kHzまで120W+120Wの出
力を低歪み(歪率0.05%)で保証したハイパワーアンプとしていました。
初段FETには,高入力インピーダンスで特性の揃ったデュアルFETを採用し,3段差動増幅段は,裸利
得が大きく十分なNFBをかけ,プリドライバー段の負荷回路を定電流化してパワートランジスタのバイア
スを安定化電源として,広帯域で低歪率で安定した特性を確保していました。イコライザー部は,差動増幅+A級増幅+ソースフォロア+定電流負荷A級増幅の初段差動増幅4段直
結オールFET・ICL方式となっていました。
初段差動増幅は,NチャンネルFETを使ったダイレクトカップリング方式として,位相まわりの特性を改善
し,ドレインにはごく低い電圧をかける回路とすることで,雑音の少ない回路としていました。4段直結回
路は裸利得が大きく,十分なNFBと定電流回路の採用で,低歪率を実現していました。
また,PHONO入力は2系統搭載し,金メッキ端子となっていました。PHONO1は,カートリッジに合わ
せて,入力インピーダンスが3段切換ができ,PHONO2はMCカートリッジにも対応して,連続してゲイ
ンのコントロールができるようになっていました。トーンコントロール回路は,初段差動3段直結フラットアンプ+NFB型TREBLEコントロール+NFB型
BASSコントロールの構成となっていました。
フラットアンプの初段には,定電流負荷回路を持つFET差動増幅ICL方式,出力段には定電流駆動バッ
ファーアンプを用いた±2電源3段直結回路を採用していました。これにより,ボリュームによるノイズ変
化が少なく,安定性にすぐれた低歪率設計となっていました。
トーンコントロールは,左右のトーンが別々にコントロールできる左右独立式で,ターンオーバーもBASS
150Hz・400Hz,TREBLE3kHz・6kHzのそれぞれ2段階に切り換えられるようになっていました。
![]()
電電部は,トリオ自慢の左右独立電源で,レギュレーションがよくリーケージフラックスの少ないトロイダ
ルトランスを左右独立で2個搭載し,18,000μFの大容量コンデンサーを4本使用したプリ部からパワ
ー部まで左右完全2電源方式としていました。また,イコライザー,コントロールアンプのローレベル用電
源には,左右別々のレギュレーターを使用して,パワー部の大入力信号の影響を抑えるようになってい
ました。ボリュームは,43ステップのアッテネーターで,レバー式3ステップのアッテネーターを組み合わせるこ
とで,広範囲の音量調整が可能となっていました。また,プリ部とパワーアンプ前段に同形式のアッテネ
ーターを使用した4連構成として,聴感上のSN比を改善していました。
フィルター類は,定電流負荷回路を持つ低歪率設計NF型アクティブフィルターで,サブソニックフィルター
とローフィルター,ハイフィルターを搭載していました。また,ラウドネスコントロールは,4ステップ切り替え
式となっていました。その他,スピーカー端子として,A,B以外に,スピーカー切り換えスイッチの接触抵抗を通らず,プロテク
ションリレーから直接スピーカー端子につながる「スピーカーダイレクト端子」を搭載していました。以上のように,KA-9300は,プリメインアンプとして初めてDCパワーアンプを搭載し,基本に忠実なオ
ーソドックスな設計で,後のプリメインアンプに大きく影響を与えることとなりました。トリオらしいかっちり
としたクリアな音が特徴でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
結論T究極の回路”DCアンプ”DCアンプ,左右完全2電源搭載。
◎動特性理論から生まれたDCアンプ
◎位相歪の追放
◎過渡応答特性の改善
◎超低域の安定化
◎真の音楽再生のための回路方式です
結論U理論解明が生んだ”左右完全2電源”
◎ダイナミッククロストーク歪
◎イコライザーからパワーアンプまで
左右完全2電源方式を採用
◎動特性追求の成果
◎実効出力120W+120W(20Hz〜20kHz両ch動作8Ω)
しかも0.05%の超低歪率設計パワーアンプ部
◎オールFET ICL方式イコライザー
◎ターンオーバー切換ICL方式トーンコントロール
◎トロイダルトランスを使った左右完全2電源
◎定電流負荷回路を持つアクティブ・フィルター
◎SN比にすぐれた本格的アッテネーター
◎スピーカーダイレクト端子
◎金メッキを施したPHONO入力端子
◎PHONO1入力インピーダンス3段切換
◎PHONO2ゲインコントロール
◎4ステップ式ラウドネスコントロール
●KA-9300定格●
(パワーアンプ部)
実効出力 | 120W+120W(20Hz〜20kHz,両ch動作8Ω)
125W+125W(1kHz,両ch動作8Ω) 140W+140W(20Hz〜20kHz,両ch動作4Ω) |
全高調波歪率 | 0.05%(定格出力時,8Ω)
0.03%(1W出力時,20Hz〜20kHz,8Ω) |
混変調歪率 | 0.05%(定格出力時,8Ω)
0.05%(1W出力時,20Hz〜20kHz,8Ω) |
出力帯域特性 | 5Hz〜50kH(IHF規格) |
SN比 | 110dB以上(IHF-Aカーブ使用) |
入力感度/インピーダンス | 1.0V/100kΩ |
ダンピングファクター | 50
80(ダイレクト端子) |
最適負荷インピーダンス | 4Ω〜16Ω |
周波数特性 | DC〜70kHz+0dB−1dB |
(プリアンプ部)
入力端子
感度/インピーダンス/SN比(IHF-Aカーブ) |
PHONO1 2.5mV/30・50・100kΩ/76dB(5mV入力)
PHONO2 2.5〜5mV/50kΩ/76dB(5mV入力) TUNER 150mV/50kΩ/96dB AUX 150mV/50kΩ/96dB TAPE PLAY 150mV/50kΩ/96dB |
出力端子
出力レベル/出力インピーダンス |
TAPE REC PIN 150mV/600Ω
TAPE REC DIN 30mV/80kΩ |
プリアウト出力インピーダンス | 2.5kΩ以下 |
プリアンプ部 出力歪 | 0.02%(1V出力時) |
許容最大入力 | PHONO1 220mV(1kHz,歪0.05%)
PHONO2 220mV〜440mV(1kHz,歪0.05%) |
周波数特性 | TUNER・AUX・TAPE PLAY 7Hz〜50kHz+0,−1dB
PHONO RIAA偏差 ±0.2dB |
トーンコントロール | BASS 150Hz・40Hz ±7.5dB
400Hz・100Hz±7.5dB TREBLE 3kHz・10kHz ±7.5dB 6kHz・20kHz ±7.5dB |
フィルター | SUBSONIC 18Hz 12dB/oct
LOW 40Hz 12dB/oct HIGH 8kHz 12dB/oct |
ラウドネスコントロール | +2dB/+4dB/+6dB/+8dB(−30dB出力時・100Hz) |
アッテネーター | 0,−15dB,−30dB |
(電源部その他)
電源電圧・電源周波数 | 100V 50Hz/60Hz |
定格消費電力 | 290W(電気用品取締法に基づく表示) |
電源コンセント | 電源スイッチ連動 2(200W)
非連動 1(100W) |
寸法・重量 | 440W×154H×393Dmm・19kg |
※本ページに掲載したKA-9300の写真,仕様表等は1976年2月のTRIO(KENWOOD)
のカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,これ
らの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
★メニューにもどる
★プリメインアンプPART3のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。