L-03Aの写真
KENWOOD  L-03A
INTEGRATED  AMPLIFIER ¥180,000

1983年にトリオ(現ケンウッド)がケンウッドブランドで発売したプリメインアンプ。当 時高級ブラ
ンドであったケンウッドの名を冠して「Lシリーズ」のプリメインアンプとして発売されたL -03Aは,
L-02Aの弟機として位置づけられていたモデルですが,トリオブランドで出ていたKA- 2200を
ベースに作られたスペシャルモデルともいえる存在でした。

L-03Aの最大の特徴は,上級機である超弩級プリメインアンプL-02Aで開発された「DLD(ダ
イナミック・リニア・ドライブ)サーキット」の搭載にありました。これは,ローパワーアンプとハイパ
ワーアンプを持ち,約50Wまでの通常使う出力領域の大部分を歪み率0.001%以下のクオリ
ティの高いローパワーアンプが受け持ち,それを超える瞬間的な大出力時のみハイパワーアン
プに電子的に切り換えるという方式でした。これにより,通常の使用状態では,ローパワーアンプ
をハイパワーアンプに対応できる巨大な電源部で駆動することになり,結果として電源インピーダ
ンスを低くすることができ,スピーカーの負荷変動にも強い良好な特性を得ることができるというも
のでした。そのため,ローインピーダンスのスピーカーにも強く,2Ω負荷では,430W+430W
の瞬間最大出力を実現していました。

2つ目の特徴として,スピーカー出力への「Σドライブ」の搭載がありました。これは,通常のスピー
カーコード以外にもう一系統Σコードによる結 線を行い,スピーカーまでもアンプのフィード バックの
中に組み込んで最適なスピーカー駆動をしよう というものでした。当時のトリオのカタログによ ると,
アンプ単体の歪みがいかに少なくても,スピーカーからの逆起電力(スピーカーの動きの暴れに よっ
て発電作用が起こり,音楽信号とは関係ない電気信号がアンプに戻ってくるのだそうです。)に よっ
て実際には,多くの歪みが発生するのだそうです。それを防ぐため,理想的なスピーカー駆動が 行
われるというものでした。

3つ目の特徴として,「デュアルヘッド・イコライザーアンプ」がありました。通常,イコライ ザーアンプは,
(1)FET入力で入力インピーダンスとNFB回路の利得を切り替える方式,(2)MMイコライザーアン
プの前にMC用ヘッドアンプを持つ方式のどちらかが使われていますが,(1)の方式では,FET入力
であるためMCのSN比が劣化する欠点があり,(2)の方式では,MCカートリッジの信号は2つのNF
ループや,2つの切り替えスイッチの接点を通ることで音質が劣化するという欠点があることになると
トリオは主張し,MMカートリッジ,MCカートリッジそれぞれに入力部の作動回路とNF素子をそっくり
差し替えるという方式を採用し,これを「デュアル・ヘッド・イコライザーアンプ」と名付けていました。こ
の方式により,MM,MCそれぞれに最適のイコライザーアンプとなり,それぞれの性能を引き出すこ
とができるようになっていました。低インピーダンスMCカートリッジにも十分対応できるというものでし
た。

ボリュームは,フラットアンプの前後に設置され,2つのボリュームを連動することにより,ボリューム
を絞った状態でのSN比を改善し,小音量時のダイナミックレンジの拡大を図っていました。しかも入
力側のボリュームはアンプの入力インピーダンスを高く確保するためにはいインピーダンスに設定さ
れ,出力側のボリュームはきわめて低いインピーダンスに設定されて高SN比,広ダイナミックレンジ
を確保していました。このボリュームを「超連動ボリューム」と称していました。また,このボリュームと
別にタッチ式のフェーダーボリュームも搭載されていました。
トーンコントロールはNF-CR型で,トーンオフ回路も装備されていました。ラウドネスコントロールは,
周波数3段,ブースト量3段切換のものが装備されていました。
また,プリアンプ部とメインアンプ部とを切り離して使えるように,プリアウト端子とメインイン端子が
装備されていました。

ここまでの主な特徴は,ベースとなったトリオブランドのKA-2200と共通のもので,当時の同社のプ
リメインアンプがほぼ共通して備えていた特徴でもありました。L-03Aでは,さらにスペシャルモデル
として,KA-2200との違いがいくつか見られ,そのことにより音質の違いも生じていました。
まず,ボンネットが全体に厚くなり強度が高められていました。そして,フロントパネルもブラック仕上
げのため,厚手のアルマイト処理が施され,強度が高められていました。また,フロントパネルとボン
ネットを除くキャビネット各部とシールド板は銅メッキ処理が施され,非磁性化が図られていました。
ボリュームノブも,KA-2200がプレスのものであったのに対して,アルミ無垢のものとなっていました。
さらに,背面のピンジャックがすべて金メッキになっていました。

L-03Aの内部

以上のように,L-03Aは高級ブランド「ケンウッド」の「Lシリーズ」のプリメインアンプとして,L-02Aに
次ぐモデルとして作られた1台でした。当時のトリオブランドのプリメインアンプの最上級機KA-2200
をとほぼ共通した内容を持つモデルながら,スペシャルモデルとしての作り込みにより,透明度,鮮度
を高めながらどぎつさのないバランスのとれた音を実現していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DADの高SN比,
広Dレンジに応えます。
150W+150W,
THD0.003%のL-03A


◎ダイナミック・パワーサプライを先進させる
 とダイナミック・リニアドライブ・サーキット。
 ローインピーダンス負荷の
 瞬間パワーにつよくなった。
◎DA時代のハイパワーアンプ,
 ダイナミック・リニアドライブ・サーキット。>
◎アンプの入力波形がそのまま
 スピーカーのドライブ波形。
 スピーカーの入力端子までを保証
 するΣドライブ方式。
◎低出力MCカートリッジを使いこなす
 デュアルヘッド・イコライザーアンプ。
◎小音量時のダイナミックレンジを拡大。
 超連動ボリューム。
◎マグネチック・ディストーションの排除。

●フェーダー・タッチボリューム
●金メッキ・ピンジャック
●トーンオフ回路つきNF-CR型トーンコントロール
●フロント,リアの切換スイッチつき前背面AUX端子
●プリアウト/メインイン端子
●周波数3段,ブースト量3段切換のラウドネスコントロール




●SPECIFICATIONS●
定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作8Ω)
150w+150w
全高調波歪率
 PHONO→SP端子
  定格出力時 20Hz〜20kHz 8Ω
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子
  定格出力時 20Hz〜20kHz 8Ω
  1/2定格出力時 20Hz〜20kHz 8Ω
0.004%

0.003%

0.003%

混変調歪率(60Hz:7kHz=4:1)
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子
 定格出力時 8Ω 
0.003%
周波数特性
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子
DC〜200kHz−3dB
ダンピングファクター 55Hz 2000
入力感度および入力インピーダンス
 PHONO(MM)→SP端子
 PHONO(MC)→SP端子
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子
 MAIN IN

2.5mV 47kΩ
0.1mV 100Ω
150mV 47kΩ
1V 100kΩ
SN比(IHF-A)
 PHONO(MM)→SP端子
 PHONO(MC)→SP端子
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子

88dB
71dB(100μV入力時)
110dB
トーンコントロール
 BASS   200Hz
         400Hz
 TREBLE 3kHz
         6kHz

50Hz±10dB
100Hz±10dB
10kHz±10dB
20kHz±10dB
ラウドネスコントロール(Vol−30dB) 30Hz,60Hz,90Hz
/+3dB,+6dB,+9dB
サブソニックフィルター −3dB 18Hz 6dB/oct
ライズタイム TUNER・AUX・TAPE→SP端子 1.7μs
スルーレイト TUNER・AUX・TAPE→SP端子 ±100V/μs
出力帯域幅(ひずみ率0.02% 8Ω)
 TUNER・AUX・TAPE→SP端子

5Hz〜90kHz
PHONO最大許容入力(PHONO→TAPE REC)
 PHONO(MM)1kHz
 PHONO(MC)1kHz

260mV(0.003%THD)
10mV(0.003%THD)
PHONO RIAA偏差 20Hz〜20kHz ±0.2dB
出力レベルおよび出力インピーダンス
 PRE OUT
 TAPE REC PIN

1V 750Ω
150mV 220Ω
電源電圧・電源周波数 100V 50Hz/60Hz
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 370W
電源コンセント
 電源スイッチ連動
 電源スイッチ非連動

2個 100W
1個 400W
最大外形寸法 440W×158H×383Dmm
重量 15kg

※本ページに掲載したL-03Aの写真,仕様表等は,1983年
1月のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご
注意ください。  

 

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