KENWOOD L-03DP
DIGITAL AUDIO DISC PLAYER ¥240,000
ケンウッド(当時はトリオ・ケンウッド株式会社)が1982年に発売したCDプレーヤーの第1世代機。同社の第1号機
でした。当時関係の深かったオーレックス(東芝)との共同開発機でした。レーザーピックアップを初めとするトランスポ
ート部及びDAコンバーター部は共同開発機オーレックスXR-Z90と同一のものですが,アナログ部分が異なっていた
ようで,Σドライブ出力が特徴でした。精悍なオーディオ機器らしいデザインも,第1世代機の中でも魅力的な1台でし
た。そして実は,当時,私自身が悩んだ末選んだCDプレーヤー第1号機でした。
Aurex XR-Z90
DIGITAL AUDIO DISC PLAYER ¥225,000
レーザーピックアップ部は1ビームタイプで,トラッキングエラー検出には,4分割ディテクターによる時間差検出方式,
フォーカスエラー検出には,反射型の臨界角検出方式を採用し,ここから得られたサーボコントロール信号により2次
元駆動アクチュエーターを駆動するタイプでした,この当時,1ビームタイプと3ビームタイプの両者があり,どちらが優
れているのか論争があったことも思い出します。現在では,どのような方式なのか話題に上ることはありませんが・・。半導体レーザーピックアップのスライド機構には,クロスローラーを採用し,後に登場するリニアモーターメカニズムには
及びませんが,第1世代機としては最も高速の選曲速度(1秒から3秒で頭出し可能でした。)を持つDPSS(Direct
Program Search System)機能を搭載していました。選曲には,1曲ずつ次に送るNEXT PLAYキーによるほか
(何と前の曲にバックする機能はなかった)テンキーによるダイレクト選曲,前後へ3段階のスピード(2倍,20倍,100
倍)に自動的に切り替わっていく早送り,早戻し機能等を持っていました。メモリーは8曲まででした。リモコンはありま
せんでしたが,高速で安定した選曲動作とシンプルな操作性で意外と使い勝手が良かったことを覚えています。D/Aコンバーターは,最も基本的なマルチビットタイプ(当時はもちろん1ビットタイプはなかった。)16ビット高速積分
型を搭載していました。当時としては,直線性がよく,歪みの少ない方式だったようです。ローパスフィルターには,まだ
デジタルフィルターは搭載されておらず,アナログタイプの11次アクティブ・ローパスフィルター(チェビシェフ型)を搭載し
ていました。
最大の特徴であった「Σドライブ出力」は,付属されていた独自のΣケーブルを使って接続する方式で,プリアンプの電源トラ
ンスの1次側とL-03DPの電源トランスの間が電源コードによってできるループと,2次側の交流的に結合されていて生じる
大きなループにより,歪んだ電流がプリアンプの入力に流れ込むのを防ぎ,相互干渉歪みをなくすというものでした。XR-Z90
との違いは恐らくここの部分だけではなかったかと思います。当時,初めて発売されたCDプレーヤー第1世代機の購入を考えて何度も試聴をし検討を重ねてこのL-03DPを購入した
ことを思い出します。当時のCDプレーヤーの中では,広いレンジ感と高い解像度を持ち,使い勝手も良かったことを記憶
しています。4年後に現用機CDP-553ESD+DAS-703ESに買い換えるまでしっかり音楽を楽しませてくれました。
当時としてはかなり完成度の高いCDプレーヤーだったと今でも思っています。縦型ローディングと当時のカタログの表記
がCDプレーヤ−ではなく,DADプレーヤーであるあたりに,今では時代を感じますが・・。私自身の第1号機という思い
入れを理由に掲載させていただきました。私の中では今でも名機の1つです。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
トリオはハイスピードD.P.S.S。
トータル制御精度が瞬間選曲を実現。
◎ミクロン単位のデジタル信号を忠実に検出する
半導体レーザーピックアップ。 |
◎コンピューターコントロールの
高精度メカニズムシステム。 |
◎リニアリティにすぐれた
分解能16ビットの積分型D/Aコンバーター。 |
◎低ひずみ率,高SN比を確実にした
11次有極アクティブ・ローパスフィルター。 |
◎クオリティの高いデジタルオーディオ特性を
忠実に伝送するΣドライブ回路。 |
◎あらゆる選曲動作が1〜3秒以内でできる
超高速応答のD.P.S.S機能。 |
●定格●
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方式 | 光学式(コンパクトディスク方式) |
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ピックアップ形式 | 半導体レーザーピックアップ | レーザーダイオードピックアップ |
標本化周波数 | 44.1kHz |
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量子化ビット数 | 16ビット |
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チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
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周波数特性 | 5Hz〜20kHz | 5Hz〜20kHz±0.3dB |
ダイナミックレンジ | 90dB以上 |
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SN比 | 90dB以上 |
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高調波歪率 | 0.004%以下(1kHz定格) |
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チャンネルセパレーション | 90dB以上(1kHz)
80dB以上(10kHz) |
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ワウ・フラッター | 水晶発振精度(測定限界以下) |
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出力 | 可変端子(Σドライブ) 0〜7V(1Ω以下)
固定端子 2V(600Ω) |
可変 0V〜5V
固定 2V |
頭出し機能 | トラックナンバーおよびインデックスナンバー
にて可能 |
曲番号(TNO)および節番号(INDEX)
で可能 |
サーチ可能曲数 | トラックナンバーおよびインデックスナンバー
とも99曲まで可能 |
曲番号(TNO)および節番号(INDEX)とも
99まで |
アクセスタイム | 平均1秒 |
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FFリバース送り精度 | 1秒単位 |
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電源電圧・電源周波数 | 100V 50Hz/60Hz |
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定格消費電力
(電気用品取締法に基づく表示) |
50W(PLAY時) |
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最大外形寸法 | 440W×148H×349.5Dmm | 420W×135H×340Dmm |
重量 | 9.9kg | 9.7kg |
※本ページに掲載したL-03DPおよびXR-Z90の写真・仕様表等は1983年1月の
KENWOODおよび1982年10月のAurexのカタログより抜粋したもので,ケンウッ
ド株式会社および東京芝浦電気株式会社に著作権があります。したがってこれらの
写真等を無断で転載,引用等をするこ とは法律で禁じられていますので,ご注意く
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