L-309の写真
LUXMAN L-309
SOLID STATE INTEGRATED AMPLIFIER
                       ¥148,000

1973年にラックスが発売したプリメインアンプ。ラックス製ソリッドステートアンプの評価を高めた,1968年登場
のSQ-505から始まるSQ-500シリーズの正常進化モデルともいえる存在がL-300シリーズで,その中の最上
級機がこのL-309でした。

イコライザ回路は,リニアリティが高く,負荷に左右されにくいA級SEPP(Single Ended Push Pull)回路を採
用し,1kHzで300mV以上の耐入力を確保していました。標準RIAAカーブとの偏差は,使用パーツの許容誤差
を小さくしてバラツキを極度に抑えることで,±0.2dB以内に収めていました。超ローノイズ型トランジスタ,低雑音
抵抗を信号回路に使用して,高SN比を確保していました。
PHONO-1端子には,3段階(50kΩ,65kΩ,90kΩ)の負荷インピーダンス切換が搭載されていました。

トーンコントロール回路には,変化特性の素直なラックス方式NF型を採用していました。湾曲点周波数切換は,高
低各3ポイントずつで,きめの細かい音質調整ができるようになっていました。トーンコントロール・スイッチには,こ
の回路を飛ばすディフィート位置とこの回路にローブースト回路が重畳されるローブースト位置が設けられていました。
また,L-309の大きな特徴として,「リニア・イコライザ」と呼ぶ新しい回路が付いていました。これは,イコライザ回
路の次の段に設けられた,録音出力には影響を与えず,1kHzを中心とする全帯域にわたるごくわずかの”低域下
り,高域上り”,”低域上り,高域下り”の直線的な特性を与える一種のトーンコントロールで,通常のトーンコントロー
ルでは補正しにくい,RIAAカーブとのずれやソースの音のバランスの補償ができるシステムでした。

L-309のパネル面

L-309は比較的多機能なアンプで,その他機能的には,マイク端子が前面に設けられ,ソースとのマイクミキシ
ングが可能でした。フィルタ回路は,ローカット・フィルタ(70Hz,20Hz)とハイカット・フィルタ(7kHz,12kHz)
が備えられ,それぞれ2ポジションが選べるようになっていました。
変わったところでは,背面に0dB〜−18dB連続可変のアッテネーターがあり,ボリュームを使いやすいレベルに
設定したり,プリとメインをセパレートしてメインアンプとして使う場合のレベルコントロールの役目をしたりしました。
さらに,背面には,TUNER端子用レベルコントロールがあり,PHONOとのレベル差を解消することができるよう
になっていました。

メインアンプ部は,+−独立電源による2段差動全段直結ピュアコンプリメンタリー方式の回路を採用していました。
出力段のB級動作部分に,ペア特性の揃ったNPN型とPNP型のパワートランジスタをおのおのダーリントン接続し
て使用し,完全対称となるようにしていました。また,出力段とドライバー段には,ともに高域特性および耐破壊特
性がすぐれたトランジスタを使用して信頼性を高め,プリドライバー段には,高域遮断周波数が高くコレクタ出力容
量の少ないトランジスタを使用して,高域にわたるまで1kHzと同レベルの低歪みを実現していました。このプリド
ライバー段は,定電流駆動による差動増幅回路を採用し,B級動作を安定した状態に保っていました。

L-309の内部

電源部は,A級ドライブ電源用巻線とB級出力段用巻線を完全に分離し,B級出力段から2段差動段とA級ドライブ段
への影響を抑え,さらに,2段差動段とA級ドライブ段に供給する電源を定電圧化していました。
また,出力段用電源には,ハイリップルに耐えるコンピューター用大容量アルミニウム電解コンデンサ(15,000μF
63WV)を採用していました。プリアンプ用電源にも定電圧回路を採用し,B級出力段の変動による混変調歪みを抑
えていました。

以上のように,L-309は,ラックスらしい丁寧な作りのアンプで,使いやすさとラックスらしい自然で優しい音を持った
1台でした。デザインにもラックスらしいこだわりと品位が感じられるところが魅力でした。1975年にはL-309Vへと
モデルチェンジを受け,ロングセラーモデルとなりました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 

 オーディオ機器,とくにアンプの場合は
つねに科学的な進歩にせき立てられて
いますので,商品としての完成度を高め
ることが,どうしてもおろそかになりがち
です。かといって,製品の性格上,本質
にかかわる進歩を無視することも許され
ません。
 性能においては一歩も遅れをとらず,
製品としての品位においては,芸術品と
いわないまでも,独自の美しさを保つこと
現実には,これは非常にむずかしいこと
ですが,この困難を克服してほぼ満足す
べき域に達しているのが,本機L-309で
す。アンプに限ったことではないでしょう
が,一つの製品を成り立たせているのは
相当に複雑な要素ですから,すべての条
件が揃うということは一種の幸運です。
 創業50周年を目前に控えたラックスの
円熟期を代表する製品です。

 
 

●SPECIFICATIONS●

■メインアンプ部■


連続実効出力 75W+75W(8Ω,両cH同時動作)
85W/85W(8Ω,片ch動作)
全高調波歪率 0.03%以下(8Ω,75W)
混変調歪率 0.03%以下(8Ω,75W,70:7kHz=4:1)
出力帯域幅 5Hz〜50,000Hz(−3dB,0.1%)
入力端子 感度:600mV,インピーダンス:50kΩ
残留雑音 0.5mV以下
ダンピング・ファクタ 40(8Ω,20Hz〜20,000Hz)
付属装置 可変式アッテネータ,スピーカー切換スイッチ
ヘッドホン・ジャック

■プリアンプ部■


標準出力電圧 PRE OUT:600mV
最大出力電圧 PRE OUT:5V以上
出力インピーダンス PRE OUT:約100Ω
周波数特性 10Hz〜50,000Hz(−1dB以内,aux-1)
全高調波歪率 0.03%以下(1kHz,1V,aux-1)
入力感度 phono-1,-2:2.5mV
tuner:100mV(レベルセット付)
aux-1,-2:100mV
2.5mV
入力インピーダンス phono-1:50kΩ,65kΩ,90kΩ切換
phono-2:65kΩ
:40kΩ
100kΩ
50kΩ
SN比 phono:65dB以上
mic:60dB以上
tuner,aux-1,-2:80dB以上
最大許容入力 300mV以上(1kHz,R・M・S)
トーンコントロール LUX方式NF型湾曲周波数切換付
低域湾曲点:150Hz,300Hz,600Hz
高域湾曲点:1.5kHz,3kHz,6kHz
フィルタ ローカット:20Hz,70Hz
ハイカット:7kHz,12kHz
ローブースト 70Hz
付属装置 リニア・イコライザ,マイクミキシング,テープ・ダビング
モニタースイッチ,入力インピーダンス切換ほか

■構成そのほか■


トランジスタ 2SC1222/C1345(17)2SA640(8)
2SC853(2)2SC945(1)2SA620(4)
2SC1431(2)2SC1079(2)
2SA762(2)2SA679(2)2SB537(3)
2SD382(1)2SC1103A(4)
ダイオード WO-4(1)S3G-2(4)1N4003(2)
1S188(1)
ツェナダイオード WZ120(2)WZ290(2)
バリスタ KB165(2)KB265(2)SV-02(2)
SV-03(4)
IC TA7122AP(2)
消費電力 300W(8Ω,同時動作,最大出力時)
外形寸法 485W×300D×165Hmm
重量 15.5kg
※本ページに掲載したL-309の写真,仕様表等は,1973年の
LUXMANのカタログより抜粋したもので,ラックス株式会社に著
作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

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