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LUX L-550
デュオ・ベータ・サーキット/S インテグレーテッド・アンプ ¥250,000
ラックスが1981年に発売した高級プリメインアンプ。STATUSシリーズと称されたこの
一連の高級プリメインアンプは,L-550,L-530,L-510の3機種からなり,一番安い
L-510でも135,000円もするという,プリメインアンプとしては非常にグレードの高い
シリーズでした。中でもこのL-550は,トップモデルであるとともに,2番手のL-530の
165,000円という価格からも飛び抜けて高くなり,回路やパーツなど別格的存在で,
セパレートアンプにもせまるグレードを追求するとともに,一体型のプリメインアンプなら
ではの良さを追求した意欲作でした。L-550の最大の特徴は,プリメインアンプでありながら純A級動作で50W/chの出力
を持っていることでした。通常バイアス電流を固定で流しっぱなしにする純A級動作では
大出力を得ようとすると発熱が非常に大きくなり,コンパクトなプリメインアンプの筐体に
納めることは大変なことです。電源効率も通常のAB級動作に比べ4分の1程度になる
ので,200Wクラスのアンプの電源部が必要になり,全体がどうしても大きくなり,プリ
メインアンプでは難しくなり,純A級50Wものプリメインアンプはとても異例なものでし
た。大量の発熱に対しては,大型のヒートパイプを2基搭載することで対処し,ヒートパイプを
左右対称に配置することで,放熱時の音を打ち消す形で追放する設計にもなっていまし
た。電源部は,特注のEIコアを用いて400VAの容量をもたせ,珪砂で内部を固めて温
度上昇を抑えていました。ケミカルコンデンサはアルミ純度99.99%の音質対策済み
の高級品で,容量30,000μFのものを2個搭載していました。
このSTATUSシリーズのプリメインアンプには,ラックス独自の1段増幅を特徴とした「デュオ・
ベータ・サーキット/S」という回路が採用されていました。これは,ラックスのそれまでの「デュ
オ・ベータ」技術と「plusX電源」を統合し,発展させたものでした。「デュオ・ベータ」技術は,大
量のNFB(負帰)をかけて特性を改善を図ることをやめ,アンプの裸特性を向上させ,そこに適量
のNFBをかけ,DCサーボにより,可聴帯域外からの制御でアンプの動作の安定性を確保するも
のでした。この考え方を電源部に応用したのがplusX電源で,定電圧回路の細かな制御をやめ,
余裕ある電源部に,ゆとりある制御をかけていくものでした。これにより,電源電圧の細かなゆらぎ
がなくなり,安定したなめらかな電源供給が可能になっていたということです。
通常のパワーアンプ部は,NFB(負帰還)をかけることで失われるゲインを稼ぐために,初段増幅,
2段目増幅というように,出力段に至るまでに2回増幅をしていました。デュオ・ベータ・サーキット
で「適量NFB」ということで,高ゲインは不要となり,高性能な増幅素子を厳選して使用してたっぷ
りと電流を流し,必要なゲインを取りだす回路を完成し,2段目の増幅段を撤去したのが,「1段増
幅アンプ・デュオ・ベータ・サーキット/S」でした。これにより,増幅回路のシンプル化,パーツ点数
の減少が実現していました。この設計手法はイコライザー部やヘッドアンプにまで適用され,動特
性の優れたアンプとなっていました。機能面で特徴的だったのはトーンコントロールでした。高域,低域ともに9つのターンオーバー周
波数が選べるようになっていました。その他,イコライザのカーブを高域上昇,高域下降の特性に
微妙に調整できるリニア・イコライザ,少量の電流を流してアンプを温めるプリヒーティングや安定
動作に入ったことを示すウォームアップインジケーター,AC電源の極性を検知するライン・フェーズ
センサーなども特徴的な機能でした。L−550は,ラックスならではのこだわりが感じられる高級プリメインアンプでした。純A級動作や
立体感のある独特のデザインなど印象に残る1台でした。この後もL−550X,L−560,L−570
L−580と後継機が続いていきましたが,その基礎を作った名機だったと思います。そのなめらか
で繊細でかつ渋みと陰影のある音は今でも記憶に残っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
アンプの純化は,
「一段増幅」と「A級重視」に帰結する。
充実のデュオ・ベータとA級専用動作。
すべてがピュア!
◎イコライザにもパワー部にもサーキット/Sを |
◎A級動作専用50W/chの大出力をコンパクトに |
◎新型回路構成による高性能MCヘッドアンプ |
◎リニア・イコライザで録音特性の補正も |
◎音質調整が緻密にできるトーンコントロール |
◎余裕ある実力の電源部 |
●L−550 SPECIFICATION●
実効出力 | 50W+50W(A級専用,8Ω,両ch同時) |
全高調波歪率 | 0.005%以下(8Ω,両ch同時,−3dB) |
入力感度 | phono(MM):2mV
phono(MC):100μV tuner,aux,monitor:250mV main in:250mV |
入力インピーダンス | phono(MM):100kΩ,50kΩ,100Ω
phono(MC):300Ω,100Ω,40Ω tuner,aux,monitor:40kΩ main in:47kΩ |
SN比 | phono(MM):84dB
phono(MC):80dB(250μV入力) tuner,aux,monitor:110dB main in:110dB |
周波数特性 | 10〜100kHz(−1dB) |
トーンコントロール | 低域ターンオーバー:
55Hz,77Hz,110Hz,155Hz,220Hz,310Hz 440Hz,620Hz,880Hz 高域ターンオーバー: 620Hz,880Hz,1.2kHz,1.7kHz,2.5kHz 3.5kHz,5kHz,7kHz,10kHz 最大変化量:±9dB(高,低域とも) |
テープモニター | 3系統(tape-1,tape-2,tape front) |
テープダビング | 4系統(1→2,2→1,1→front,front→1) |
リニア・イコライザ | up tilt,down tilt 各2ステップ(1ステップ1dB) |
消費電力 | 310W |
外形寸法 | 453(幅)×174(高さ)×460(奥行)mm |
重量 | 21.4kg |
※本ページに掲載したL−550の写真,仕様表等は1981年8月のLUXMANの
カタログより抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
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