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LUXMAN L-58A
INTEFGRATED AMPLIFIER ¥149,000ラックスが1979年に発売したプリメインアンプ。プリメインアンプにもこだわりを持ち,高性能なモデルを多く輩出
したラックスですが,このL-58Aは,後のL-550等に続く基本的な技術を確立した高性能機でした。ラックスらし
さを持つ優美なデザインも印象的でした。L-58Aの最大の特徴は,「デュオ・ベーター・サーキット」を開発搭載していたことにありました。この「デュオ・ベー
ター・サーキット」とは,2つのフィードバック回路(NFB回路とDCサーボ回路)を巧みに組み合わせ高音質を実現
しようというもので,電気用語でフィードバック回路を意味するギリシャ語「β(ベーター)」と音楽用語でイタリア語
で二重奏を意味する「Duo」を組み合わせて名付けられていました。
「デュオ・ベーター・サーキット」は,大量のNFB(負帰)をかけて特性を改善を図ることをやめ,アンプの裸特性を向
上させ,そこに適量のNFBをかけ,DCサーボにより,可聴帯域外からの制御でアンプの動作の安定性を確保する
という技術でした。パワーアンプは,入力段には,Nチャンネル用(2SK163)とPチャンネル用(2SJ44)のFETによるピュア・コンプ
リメンタリー・ディファレンシャル・プッシュプル回路を採用し,DCアンプ構成として裸の歪み特性を向上させていま
した。入力段から出力段に至るまで,すべてをプッシュプル回路で構成し,同時に,ft(高域遮断周波数)が高く,
Cob(コレクター出力容量)の小さいトランジスターやFETを採用して,裸の歪み特性を向上させていました。特に
出力段には,ftが約500MHzのMOS FET(2SK134と2SJ49)を使用したプッシュプル回路とし,バイアス電
流を300mA以上流すとともに,高速ドライバー回路を組み合わせてスイッチング動作をしないアンプにし,ノッチ歪
みも追放し,波形合成のリニアリティに優れたMOS FETの特性を生かしてプッシュプル動作の宿命ともいえるク
ロスオーバー歪みの発生も抑えた回路とし,「ノッチレス・クラスA」と称していました。プリアンプ部は,入力段には,FET4石によるカスコード・ブートストラップ回路採用し,トランジスターによる動抵抗
回路を組み合わせ,裸の歪みを抑えていました。出力段は,インピーダンスを低く抑えるために,トランジスター4
石によるSEPP(シングル・エンド・プッシュプル)回路を採用し,裸特性を向上させていました。以上のようなパワーアンプ部,プリアンプ部により,裸特性が向上し,裸状態での歪みは従来のアンプでの5〜10
分の1に低減され,NFB量をパワーアンプ部で約40dB,プリアンプ部で約60dB程度少なくしても十分な特性が得
られるようになっていました。実際には,パワーアンプ部で,NFB量を80dBから37dBに,プリアンプ部では100dB
を37dBにと,NFB量を従来の100分の1以下に減らしていました。少量NFB回路により中高域の音質が改善されますが,低域再生においてダンピングが不足しがちになります。そ
のため,少量NFB回路にパラレルにFETアンプを用いたDCサーボ回路を組み合わせた方式の独自のDCサーボ
回路としていました。このDCサーボ回路により,DCドリフトの防止,超低域のダンピングの向上,プリアンプ段で
の超低域ノイズのカットなどの効果が得られるということでした。DCサーボにより高められたアンプ動作の安定度を生かしてパワーアンプ部のゲインを,フラットアンプにより得ら
れるゲイン(10〜16dB)程度上げることで,音質の劣化の原因となるフラットアンプを省略して音質の向上を図
っていました。しかし,その結果トーンコントロール回路が他の回路の影響を受けることになるため,トーンコントロ
ールの前段にバッファ回路を設けていました。バッファ回路とトーンコントロール回路には,いずれもFET入力によ
るカスコード接続のソースフォロア回路を採用していました。また,トーンコントロール回路には,LUX方式NF型湾
曲点切替式付を採用し,多彩で精妙ななコントロールができるようになっていました。また,トーンコントロールをバ
イパスできるようにもなっていました。
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MCカートリッジに対しては,MCヘッドアンプが搭載されていました。MCヘッドアンプは,ノイズ特性に優れたNチ
ャンネルFETをパラレルに接続するとともに,定電流回路を組み合わせて,特に高域特性を改善したDCアンプ構
成としていました。SN比的にはやや不利になる構成ですが,接続するMCカートリッジのインピーダンスが変わる
と,自動的に増幅度を調整するゲイン自動調整方式を採用して,この問題を解決し,実質的な音質を改善していま
した。
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以上のように,L-58Aはラックスが同社のプリメインアンプの新展開として,デュオベータ方式等後のモデルにつな
がる技術を開発搭載した意欲作でした。ラックスらしいパネルデザインとリアルウッドのキャビネットは優美なもので
した。また,水平に配置された基板に直づけされたために横方向に動かすカタチになったレバー式のスイッチも外観
上の特徴で,ラックスらしい磨かれたような美しさを持った音とともに印象に残っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
デュオ・ベーター・サーキット
◎デュオベーターサーキットとは・・・
◎裸特性の改善
◎少量NFB回路 β1(ベーター1)
◎DCサーボ回路 β2(ベーター2)◎全体の回路構成
●ゲイン自動調整方式を採用したDCアンプ構成
によるMC用ヘッドアンプ
●バッファ回路付トーンコントロールの採用により
音質劣化の原因となるフラットアンプを追放
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LUXMAN L-68A
INTEFGRATED AMPLIFIER ¥188,000L-58Aの発売の翌年1980年には,L-58Aをベースに各部を強化した最上級機L-68Aが登場しました。以下
のように各部に改良・強化が行われていました。L-58Aとともにラックスらしい名機だと思います。●デュオベーター方式の適量フィードバックの考えを電源部に応用し,電源の強化により素特性を向上させた電
源部に周波数特性を持たせた(低域のみに強力にフィードバックをかける)適量のフィードバックをかけることによ
り,音質の向上を図った,新開発「plus-X電源」の搭載。
●電源極性を示す,「ラインフェーズセンサ」の搭載。
●アナログディスク再生時にディスク再生に不要な回路を配線から切り離し,回路のシンプル化を行う「フォノ・ス
トレート機能」の搭載。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
一貫した”過剰排除”の思想。
アンプはいま,
再現力の極致を究めた。
デュオ・ベータplus-X
◎デュオ・ベータ回路
◎新開発電源plus-X
●裸特性のすぐれた電源回路
●ライン・フェーズ・センサプッシュプル
全段P.P.構成パワー段
◎全段プッシュプル構成
◎パワーMOS FET採用
◎クロスオーバ歪みを追放ディスク再生を優先
◎フォノ・ストレート機能
◎デュオ・ベータ・イコライザ
◎DC構成ヘッドアンプ
◎バッファ付トーンコントロール徹底した音質管理
●フィルム・コンデンサの極性を管理
●磁性体を徹底して排除
●金メッキ入力端子を採用
●SPECIFICATIONS●
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連続実効出力 | 100W+100W
(8Ω,両ch同時動作,20〜20kHz) |
110W+110W
(8Ω,両ch同時動作,20〜20kHz) |
全高調波歪率 | 0.015%以下
(8Ω,100W,20〜20kHz) |
0.008%以下
(8Ω,20〜20kHz,−3dB) |
混変調歪率 | 0.015%以下
(8Ω,100W,60Hz:7kHz=4:1) |
0.008%以下
(8Ω,60Hz:7kHz=4:1,−3dB) |
入力感度 | phono(MM):1.5mV
phono(MC-1):1.5mV(イコライザー部へダイレクト) phono(MC-2):0.05mV(2Ω)〜0.15mV(40Ω) (ゲイン自動調整式MCヘッドアンプが動作) tuner:220mV aux-1・2:220mV main in:220mV |
phono(MM):2.0mV
phono(MC-1):2.0mV(イコライザー部へダイレクト) phono(MC-2):0.07mV〜0.2mV(インピーダンス切替) tuner:280mV aux-1・2:280mV main in:280mV |
入力インピーダンス | phono(MM):50kΩ
phono(MC-1):100Ω tuner:20kΩ aux-1・2:20kΩ main in:820kΩ |
phono(MM):50kΩ
phono(MC-1):100Ω tuner:40kΩ aux-1・2:40kΩ monitor-1・2:820kΩ |
SN比 | phono(MM):80dB以上(IHF-A補正,入力ショート)
phono(MC-1):80dB以上(IHF-A補正,入力ショート) tuner:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) aux-1・2:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) main in:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) |
phono(MM):80dB以上(IHF-A補正,入力ショート)
phono(MC-1):80dB以上(IHF-A補正,入力ショート) tuner:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) aux-1・2:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) monitor-1・2:100dB以上(IHF-A補正,入力ショート) |
周波数特性 | phono(MM):20Hz〜20,000Hz(±0.2dB以内)
phono(MC-1):20Hz〜20,000Hz(±0.2dB以内) tuner:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) aux-1・2:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) main in:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) |
phono(MM):20Hz〜20,000Hz(±0.2dB以内)
phono(MC-1):20Hz〜20,000Hz(±0.2dB以内) tuner:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) aux-1・2:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) monitor-1・2:10Hz〜100,000Hz(−1dB以内) |
トーン・コントロール | LUX方式NF型湾曲点周波数切替付
低域湾曲点:150Hz,300Hz,600Hz 高域湾曲点:1.5kHz,3kHz,6kHz |
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プリ部出力 | pre out:220mV(インピーダンス:220Ω) | |
付属装置 | サブソニック・フィルター(15Hz,off,30Hz)
ハイカット・フィルター(9kHz,off,15kHz) ローブースト・スイッチ(70Hz,off,150Hz) テープモニター・スイッチ(tape-1,source,tape-2) テープダビング&REC OFFスイッチ(TAPE-1用&TAPE-2用) スピーカー・セレクター(main,remote,main&remote off) ヘッドホン・ジャック ACアウトレット (SWITCHED:3個max300W,UNSWITCED:1個max200W) |
フォノ・ストレート・スイッチ
サブソニック・フィルター(15Hz,off,30Hz) ハイカット・フィルター(9kHz,off,15kHz) ローブースト・スイッチ(70Hz,off,150Hz) テープモニター・スイッチ(tape-1,source,tape-2) テープダビング&REC OFFスイッチ(TAPE-1用&TAPE-2用) スピーカー・セレクター(main,remote,main&remote) ヘッドホン・ジャック ACアウトレット (SWITCHED:3個max300W,UNSWITCED:1個max200W) ライン・フェーズ・センサ |
電源電圧 | AC100V(50Hz/60Hz) |
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消費電力 | 300W(電気用品取締法の規定による) |
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外形寸法 | 466W×378D×181Hmm | 478W×378D×194Hmm |
重量 | 15.3kg | 15.5kg |
※本ページに掲載したL-58A,L-68Aの写真,仕様表等は
1981年12月,1980年12月のLUXMANのカタログより
抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
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