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KENWOOD L-A1
INTEGRATED AMPLIFIER ¥280,0001992年にケンウッドが発売した高級プリメインアンプ。ケンウッドの歴史の中で,「Lシリーズ」は実験的高級機
が揃っていますが,このL-A1は,ケンウッド最後の高級アンプであるとともに,最後の「Lシリーズ」となってしま
いました。L-A1の1つ目の特徴は,初段増幅部における「Super C4」という技術でした。これは,「スーパー・コンスタント
・カレント・カスコード・サーキット」の略で,従来あまり問題視されず,単なる差動増幅構成の初段としてドライバー
段に一体化され,同一基板上でレイアウトされてきた初段電圧増幅部を,同相成分ノイズの発生を防ぐために完
全に独立させボリュームアッテネーターの直後に配置するというものでした。これにより,信号成分のみの差動増
幅が行われるようになり,素子内部を理想的な状態に保つことができるなど,ノイズを徹底的に排除し,混変調や
S/Nの低下を抑えた動作が実現していました。
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2つ目の特徴として,ファイナル段をドライブするドライバー段を強化した「クアドライブ・マルチプル・ファイナル・ステ
ージ」がありました。これは,従来のアンプが,ファイナル段の複数のファイナルトランジスタに対してそれをドライブ
するドライバー段がシングル接続であることに対して,それぞれ1個のファイナルトランジスタに対し1個の専用ドラ
イバーを独立して持たせるというもので,各ドライバーごとの負担を分散し,従来の常識を越えた電圧駆動のトータ
ルヘッドルームを持たせることが可能となるというものでした。その結果,低インピーダンスのスピーカーに対しても
高い駆動力を持っていました。さらに,大電力を扱うファイナル段と小電力を扱うドライバー段をヒートシンクの裏表
に分離して配置して放熱効果を高めていました。プリドライバー段,ドライバー段は純A級動作で,スイッチング歪み
のない,熱的に安定した動作が可能となっていました。ボリュームには,摺動子が固定され円盤状の抵抗体が回転することで接点の数を減らし高音質を実現した抵抗体
回転式ボリュームを搭載していました。インピーダンスを通常の1/100に相当する1kΩとし,熱雑音も1/10に
抑えていました。さらに,ボリューム及び周辺回路を分割気室フレーム内に納め,パワーアンプ出力部,電源回路
音圧などからシールドすることで,干渉を受けることを防いでいました。イコライザー部には,L-02A以来の「MC・MMデュアルヘッドイコライザー」が搭載されていました。これは,MC・
MMそれぞれのカートリッジ特性にマッチしたディスクリートアンプをイコライザー初段に搭載し,高出力・ハイインピ
ーダンスのMM型にはFET素子を,低出力・ローインピーダンスのMC型カートリッジにはバイポーラ素子をと異な
る特性の素子を使い分けてカスコード接続するというものでした。電源部には,450VAの容量の大型のトロイダルトランスを搭載し,高音質タイプのアルミ電解コンデンサーととも
に強力な電源部を構成していました。さらに,電源側と増幅側の間のVIG(ボルテージ・インターフェース・ゲート)
回路は,増幅側から見てインピーダンスが低く,電源側から見てインピーダンスが高く設定してあり,電源からの
直流エネルギーだけを通してノイズ成分をカットすることができ,電源部からの歪みが抑えられていました。
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INPUT/REC OUTセレクターは,ピンジャックの隣接して配置し,高性能金接点小型不活性ガス密閉型のリ
レーを使用してセレクター部における伝送ロスを抑えていました。アースには純銅ブスバーを使用しクロストークを
抑えていました。インプットセレクターは,REC OUTとツマミが兼用で,スイッチで切り替わり,LEDの異なる色
の表示によってINPUTとREC OUTが示されるようになっていました。
L-A1はリモコン操作が可能となっているため,リレー制御,電動ボリューム操作等のために制御マイコンが搭載
されていました。このデジタル信号のアナログ回路への影響を防ぐために,専用スモールトランスを設け,さらに,
マイコンから引き出される制御系をすべてフォトカプラを使用することで完全に遮断していました。
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筐体は本体フレームや底板を2mm厚板で構成し高い強度を持たせていました。さらに,セレクター・イコライザー
アンプパート/電圧増幅電源パート/電力増幅電源パート/ボリューム・SuperC4パートの4つを独立した4気
室で構成し,それぞれを2mm厚鋼板で分割して各パートの相互干渉を抑え,筐体全体の剛性を大きく高める構
造になっていました。プリント基板には高硬度のガラスエポキシ基板を採用し,それをさらに鋼鉄製のスタッドを介
して高剛性の2mm厚フレームにリジッドに取り付けるという強固な固定方法をとっていました。
パネルやボリュームノブ,INPUTセレクターノブ,さらにキー類は切削材か充分な厚みのある押し出し材を使い
高い剛性と信頼性を持たせていました。フロントパネルは5mm厚のアルミ押し出し材で仕立てられていました。
また,ピンジャックも真鍮削り出しに金メッキを施したものを搭載していました。以上のように,L-A1は,静けさを求めたという高精度な回路設計と構造・回路などすべて必要容量の2倍を超え
る余裕度を持たせたという,「Lシリーズ」にふさわしく贅を尽くした作りが素晴らしいアンプでした。ケンウッドらしく
歯切れがよく高解像度でしかもうるささのない音は,プリメインの枠を超えたものでした。これ以降,ケンウッドが
高級アンプを出していないことが惜しまれるところです。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
スペックのための贅沢ではない。
無論,音の深淵に触れるためだ。
◎同相成分ノイズを極限まで抑えたSuperC4
◎トータルヘッドルームの獲得に成功した
QUADRIVE MULTIPLE FINE STAGE
◎接点を減らし高音質を実現,完全シールド型
超低インピーダンス抵抗体回転式ボリューム
◎ノイズ成分をカット,純粋なエネルギーを
増幅回路に供給するVIG回路
◎余裕の電源部,大容量トロイダルコアトランス
高品位でピュアな音へのアプローチが
ディテイルに宿る。
◎各種カートリッジにきめ細かく対応。
MC・MMデュアルヘッドイコライザー
◎完全分割気室フレーム構造の
重量級厚鋼板筐体構造
◎フォトカップラで固定された
制御系電源の完全独立構成
◎鋼鉄スタッドによるガラスエポキシ回路基板
◎ムク材をふんだんに使った高品位パーツ
◎ボリューム指標インジケーター
◎コンセントレーテッドINPUT/REC OUTセレクター
●L-A1 SPECIFICATIONS●
定格出力 | 100W+100W(20Hz〜20,000Hz,THD0.005%,8Ω) |
全高調波歪み率 | 0.005%(20Hz〜20,000Hz,100W,8Ω) |
周波数特性 | 3Hz〜100,000Hz |
S/N(IHF-A) | PHONO(MM) 92dB
PHONO(MC) 78dB LINE(1/2/3) 110dB BALANCED 95dB |
入力感度 | PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 0.2mV/100Ω LINE(1/2/3) 200mV/33kΩ BALANCED 200mV/30kΩ |
PHONO最大許容入力 | MM:1kHz 150mV/0.03%THD
MC:1kHz 12mV/0.03%THD |
出力レベル/インピーダンス | TAPE REC 200mV/430Ω |
電源電圧/電源周波数 | AC100V 50Hz/60Hz |
定格消費電力 | 280W |
電源コンセント | 非連動 1(TOTAL MAX 100W)
連動 2(TOTAL MAX 200W) |
最大外形寸法 | 476W×163H×469Dmm |
重量(正味) | 27.6kg |
※本ページに掲載したL-A1の写真,仕様表等は1993年2月のKENWOODの
カタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
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