ONKYO MONITOR2000X
ピュア・クロスカーボン3ウェイスピーカーシステム ¥139,000(1台)
オンキョーが1985年に発売した重量級の3ウェイブックシェルフ型スピーカー。1983年発売のMONITOR2000
のモデルチェンジ版で,値段は11,000円上がりましたが,エンクロージャーが改良されてラウンドバッフルになり
重量も3kg増,そして,何よりぐっと高級感が増して人気を得たモデルでした。そのエンクロージャー,使用ユニット,
そして,音から考えても20万円クラスと遜色がないほどで,当時,本気で欲しいと思っていたスピーカーシステムで
した。ウーファーユニットは,34cmの大口径で,オンキョー自慢の「ピュア・クロスカーボン振動板」を採用した強力なもの
でした。この「ピュア・クロスカーボン振動板」は,軽量で高い強度を誇るカーボンファイバーの特性を生かしたままコ
ーン状に成形することに成功した画期的なものでした。カーボンファイバー(つまりカーボン繊維)を平織りにし,それ
を繊維の方向をクロスさせて重ねる(MONITOR 2000Xでは3層重ね)ことで全ての方向にカーボン特有の剛性を
発揮させるというものでした。はりあわせるバインディング材に特殊なエポキシ系樹脂を使用し,内部損失を大きく確
保して素材固有の響きを追放する工夫もされていました。この大口径の強力ユニットのおかげで,しっかりしたクリア
な低音が聴けました。ツィーターには,2.5cm口径の「プラズマナイトライデッドチタン」によるドーム型ユニットが搭載されていました。この
「プラズマナイトライデッドチタン」というのは,軽くて剛性の高いチタンにプラズマ法による表面硬化処理を施したもの
で,表面のチタンそのものがセラミック化され純チタンの4.5倍の硬度が得られるというものでした。これにより,非常
に軽量で高剛性の振動板となっていました。さらに,高剛性の振動板になるほど鋭くあらわれてくる高域共振を抑える
ために,振動板の周囲2カ所に,精度の高いレーザー加工により切れ込みを入れて周方向に共振を分散させる構造
となっていました。癖のないすっきりのびた高音を実現していました。
スコーカーには,10cm口径の「ピュアクロスカーボン/プラズマナイトライデッドチタン複合型」のユニットが採用され
ていました。これはピュアクロスカーボンによるコーン型振動板の中心部にプラズマナイトライデッドチタンによるドー
ム型振動板が複合されたもので,ウーファーとツィーター物性を併せ持ち音のつながりをスムーズにすることをねらっ
たものでした。また,ツィーターと同じく高域共振を分散させる構造を採用しており,広帯域の再生能力を持つ強力な
スコーカーユニットでした。エンクロージャーは重量級高剛性なもので,高密度パーティクルボードを前面には40mm,裏板には30mm,側板に
は25mmの厚さで用いていました。フロントバッフルには側面に大きなアールを設け,上側にもテーパーをつけたラウ
ンドバッフルとして音場感・定位感を向上させていました。仕上げもすばらしく,高級感がありました。
ネットワークは,MONITOR2000以来の,アンプ回路のノウハウを投入した,高品質「集中一点アース方式」と各帯
域分散配置により,ユニット間,ネットワークの相互干渉が排除されていました。また,音質を最重視して。レベルコント
ローラーも廃されていました。当時,NS-1000Mを愛用していた(現在も使用中)私は,知り合いの販売店で試聴させてもらい,そのすっきりとのび
たレンジ感と癖のない素直な音にスピーカーの進歩を感じ,心ひかれたことを思い出します。その後長く手にすることは
ありませんでしたが,2006年,20年の歳月を経て所有することとなり,オンキョーらしい開放的なクリアな音を聴かせ
てくれています。何か縁を感じる1台となりました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
新しい表現
音楽を極微な要素から
構築していく精密な再現力。
デジタルソースの純度を
ダイレクトに伝える
3ウェイシステム。
◎新開発・ピュア・クロスカーボン/プラズマナイト
ライデッドチタン複合型スコーカー ◎ピュア・クロスカーボンウーファー ◎プラズマナイトライデッドチタンツィーター ◎ラウンドバッフル仕様 重量級高剛性エンクロージャー |
●主な定格●
形式 | 3ウェイ・バスレフ型 |
インピーダンス | 6Ω |
最大入力 | 250W |
出力音圧レベル | 91dB/W/m |
再生周波数帯域 | 25Hz〜50,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 500Hz,4000Hz |
キャビネット内容積 | 75リットル |
使用スピーカー | ウーファー:34cmピュア・クロスカーボンコーン型 スコーカー:10cmピュアクロスカーボン/プラズマナイトライデッドチタン複合型 ツイーター:2.5cmプラズマナイトライデッドチタンドーム型 |
外形寸法 | 418W×732H×396Dmm(サランネット含む) |
重量 | 43kg |
ONKYO MONITOR2000
3ウェイ・バスレフ型スピーカーシステム ¥128,0001983年にオリジナルモデルMONITOR2000は発売されました。従来から振動板としてパルプに混抄されて用いら
れていたカーボンを,直接繊維を平織りし3層重ねでエポキシ樹脂で固めることで振動板として用いた「ピュア・クロス
カーボン振動板」の第1世代モデルで,この後各社からクロスカーボン振動板搭載のスピーカーが登場することになり
ました。ウーファーは,ピュアクロスカーボン振動板による34cmの大口径コーン型で,マグネット寸法φ200×φ95×25tmm
磁束密度14,150gaussという38cm口径ユニット以上の規模をもつ強力なマグネットと直径76mmの大口径。ロング
ボイスコイルによる強力な磁気回路が搭載されていました。
スコーカーは,実用金属中最も密度が小さいマグネシウム(100μ厚)による10cm口径コーン型と6.5cm口径ドー
ム型の複合型ユニットが搭載されていました。このユニットは,140φ×75φ×17tmmの強力なマグネットと65mm口
径のボイスコイルにより駆動されていました。また,トゥイーターには,スコーカー同様マグネシウム(40μ厚)の2.5cm
口径ドーム型ユニットが搭載され,90φ×45φ×15mmのマグネットによりクロスカーボンウーファーに負けないクリア
な再生を実現していました。
また,資料によると,後期型では,スコーカー及びトゥイーターの振動板がマグネシウムから超硬度特殊合金振動板に変
更されていました。エンクロージャーは,木目の美しい高剛性なもので,バッフル板,天板,底板,側板には25mm厚のパーチクルボード,裏
板には28mm厚の高剛性・高内部損失のアピトン合板が使用され,しっかりした補強が施されていました。バッフル面の
平滑化が図られ,レベルコントローラーも調整時以外は押しこんでフラットになる方式がとられ,バッフル面の厚いエンブレ
ムも,型番を直接バッフル面に書き込む形をとることで廃されてフラット化が徹底されていました。
ネットワークには,高品質なパーツが投入され,アンプの回路技術を生かし,各配線のアースを一点に強化・集中した「集
中一点アース」が開発・搭載され,ユニット,ネットワーク間の干渉を排除していました。以上のように,初代MONITOR2000は,10万円超の価格帯に突如出現した強力モデルとして高い評価を得,各社のス
ピーカーにも多大な影響を与えた1台だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎新次元の解像度をもたらした
ピュア・クロスカーボン振動板
◎素材固有の響きが極めて少ない
マグネシウム合金振動板
◎高解像度ウーファーを強固に支持する
重量級・高剛性キャビネット
形式 | 3ウェイ・バスレフ型 |
インピーダンス | 6Ω |
最大入力 | 160W |
瞬間最大入力 | 1600W |
出力音圧レベル | 90dB/W/m |
再生周波数帯域 | 25Hz〜45,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 600Hz,4000Hz |
キャビネット内容積 | 73リットル |
使用スピーカー | ウーファー:34cmコーン型 スコーカー:10cm複合型 ツイーター:2.5cmドーム型 |
外形寸法 | 408W×732H×382Dmm(サランネット含む) |
重量 | 40kg |
ONKYO MONITOR2001
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥145,0001987年に,MONITOR2001が登場しました。同社の最高峰のシリーズモデル「2001シリーズ」のスピー
カーシステムとして,MONITOR2000Xをベースにさらに強化された内容を持った強力モデルでした。MONITOR2000Xからの最大の改良点は,スピーカーユニットのマウント方法とエンクロージャーの強化で
した。「アイソレーテッド・マウントシステム」と称され,上級機のSCEPTERE5001と同一ではありませんで
したが,前面バッフルの裏面の各ユニット固定部の間にスリットを設けて,3ウェイそれぞれの振動モードを分
散させ,不要な振動を低減させる仕組みになっていました。また,エンクロージャーは,高密度パーチクルボ
ード製の高剛性な構造とされ徹底して振動を抑えていました。特に前面バッフルは,高密度パーチクルボード
50mm厚で,厚みを生かして55Rという大きなラウンド形状のラウンドバッフルとしていました。ウーファーユニットは,ピュアクロスカーボン35cm口径とされ,従来のものよりファイバーがより細密なものに
改善され,剛性を高めながら軽量化が図られていました。また,コーン底部を楕円形状に成形したカーブドコー
ンにより,さらに剛性が高められ,共振の分散化とコーンの変形を抑えフラットな特性を実現していました。
また,センターキャップ部には新たに2層のピュアクロスカーボンの間に粘弾性樹脂をはさみこんだ構造をとり
不要な共振を抑えていました。
ウーファーをドライブする磁気回路は,φ180×φ95×20tmm,磁束密度10,000gaussのマグネットを使
用していました。
エッジ部は材料として新たに「エンジニアリング・エラストマー(常温で弾性を示す高分子化合物・一種の合成
ゴム)」を導入し,高いリニアリティを実現していました。スコーカーは,8cm口径のドーム型で,チタン基材にプラズマ法による効果処理を施す「プラズマナイトライデッ
ドチタン」をさらに改良した「プラズマ・カーボナイトチタン」が使用されていました。これは,より硬度に硬化処理
を施したもので,高硬度のセラミック化チタンに加え,カーボナイト層を形成して,純チタンの5.6倍とさらに剛性
が高められ,ウーファーのカーボンに近いカーボン素材が加わることで,音のつながりも良くなるというものでし
た。振動板の周囲2カ所に,精度の高いレーザー加工により切れ込みを入れて周方向に共振を分散させる構
造も受け継がれていました。駆動する磁気回路には,φ160×φ85×17tmmという強力なマグネットが搭
載されていました。
トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,スコーカー同様「プラズマ・カーボナイトチタン」が使用されていま
した。ドームの外周部には補強構造が設けられ,高域共振のピークを抑えていました。さらに,トゥイーターの
マウントにフレームの振動を吸収する制振材「アコースティック・アブソーバー」が採用され,フレームと磁気回
路の間のアコースティック・アブソーバーがフレームの振動を大きく低減していました。トゥイーターを駆動する
磁気回路には,φ90×φ45×15tmmという大型のマグネットが使用されていました。以上のように,MONITOR2001は,MONITOR2000から始まった2000系列の最終形として高い完成度と
優れた性能を実現していました。よりクリアで癖の少ない純度の高い音を実現していました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎アイソレーテッド・マウントシステム採用
高剛性と無共振を両立したキャビネット
◎音場のリアリティを高めるラウンドバッフル
◎高剛性化・軽量化と無共振化を達成した
35cmピュア・クロスカーボンウーファー
◎高密度で鮮明な音場を立体的に表現する
プラズマ・カーボナイトチタンドームスコーカー
◎緻密で透明なハイレンジを描き出す
プラズマ・カーボナイトチタンドームツィーター
◎シンプルで高純度なネットワーク回路
形式 | 3ウェイ・バスレフ型 |
インピーダンス | 6Ω |
最大入力 | 250W(EIAJ) |
出力音圧レベル | 91dB/W/m |
再生周波数帯域 | 25Hz〜50,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 400Hz,3000Hz |
キャビネット内容積 | 75リットル |
使用スピーカー | ウーファー:35cmピュア・クロスカーボンコーン型 スコーカー:8cmプラズマカーボナイトチタンドーム型 ツイーター:2.5cmプラズマカーボナイトチタンドーム型 |
外形寸法 | 418W×732H×406Dmm(サランネット含む) |
重量 | 44.5kg |
※本ページに掲載したMONITOR2000X,MONITOR2000,MONITOR2001
の写真,仕様表等はそれぞれ1985年11月,1984年2月,1987年10月の
ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権がありま
す。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じら
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