PL-L1の写真
PIONEER PL-L1
STEREO PLAYER SYSTEM ¥200,000

パイオニアが1978年に発売した高級アナログプレーヤー。リニアトラッキングアームを採用したプレーヤーの中でも
最も重量級に属するモデルで,リニアトラッキング方式で一つの理想を追求した力作で,その全体が黒い筐体は,何
か凄みを感じさせたものでした。

PL-L1の特徴は,トラッキングエラー,インサイドフォースがほぼゼロになるという,理論的に最も理想に近いといわ
れたリニアトラッキングアームの採用でした。しかし,理想といわれるリニアトラッキングアームの一番の問題点がア
ームベースの移動にありました。本来,がっちり固定するのが理想であるはずのアームベースが移動することによる
問題点が指摘されました。そのため,アームベースの移動に対しては,高精度でスムーズな移動が理想とされてい
ます。PL-L1では,そのために「リニアD.Dアーム方式」を開発し,採用していました。この「リニアD.Dアーム方式」
は,アームベースの下に取り付けた可動マグネットに,直線状のコイルを対向させ,コイルに電流を流し,これによっ
て発生した磁気反発エネルギーを利用してアームを直線駆動する方式でした。アームを駆動するのに,歯車,ベルト
ギア,糸かけといった伝達機構が一切なく,アームをダイレクトに静かに駆動できる方式でした。PL-L1では,アーム
ベース部の高精度な加工と,重量級のアームベースの採用で,リニアトラッキングアームとしては非常に静寂でスム
ーズなアームの移動が実現していました。現在のCDプレーヤーのピックアップ部のリニアモーターによる駆動に通じ
る先進的な技術でした。リニアトラッキングアームのもう一つの利点,アームの実効質量を小さくでき,トラッカビリティ
が向上できるという点については,さらに,左右対称の高精度で軽量のストレートアームを搭載してその利点を高めて
いました,

リニアD.Dアーム方式

ターンテーブルの駆動には,パイオニア自慢の「SHローター方式モーター」を採用していました。これは,従来モーター
底部にあったローターの支点をターンテーブルのすぐ下へ移動させ,ターンテーブルの重心と支点の位置をほとんど一
致させた構造です。これによって,ターンテーブルの不安定動作を根本から追放し,サーボをかける以前のターンテー
ブルの回転を極めて安定させることができるというものでした。実際,その成果は0.01%(WRMS/FG直読法)とい
う高度な回転精度に表れていました。

SHローター方式モーター

高精度な「リニアD.Dアーム」と直径32cmアルミダイキャスト製の重量級のターンテーブルを支えるキャビネットは,
耐ハウリング特性を突き詰めた高密度重量級パーチクルボード製で,プレーヤーシステム全体の重量は,26kgに
も達していました。以上のように,PL-L1は,パイオニアがリニアトラッキングアーム方式の理想を追求しようとした
完成度の高い名機だったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


 
◎SN比78dB(DIN-B)以上を実現。
 リニアトラッキング・リニアD.Dアーム方式。
◎回転ムラ0.01%(WRMS/FG直読法)を実現した
 ハイトルク2.0kg-cm,SH・ローター方式モーター。
◎実効長が短く左右対称のストレートアーム。
◎耐ハウリング特性を限界までつきつめた
 高密度重量級針葉樹パーチクルボードキャビネット。
◎電子オートアップ機構。
◎ピンジャック,ターミナルピンを金メッキ処理。

 

●PL-L1仕様●
 

■フォノモーター■

モーター Quartz PLL DCサーボ・ホールモーター
駆動方式 ダイレクトドライブ
軸受方式 SH・ローター方式
ターンテーブル 直径32cmアルミダイキャスト
ターンテーブル慣性質量 380kg-cm2 (ターンテーブルシートを含む)
回転数 33 1/3・45rpm
回転数切換え タクトスイッチによる
回転ムら 0.01%以下(WRMS FG直読法) 
0.018%以下(WRMS/JIS)
SN比 78dB以上(DIN−B),65dB以上(JIS)
負荷変動 0%(針圧220g以内)
起動特性 1/4回転以内
起動トルク 2kg-cm
回転数偏差 0.002%以下
ドリフト 時間ドリフト:0.00008%/h 
温度ドリフト:0.00003%/℃
ブレーキ機構 純電子式

■トーンアーム■

形式 リニアD.D.ダイナミックバランスリニアトラッキングアーム
実効長 210mm
オーバーハング
適合カートリッジ自重 4〜24g(ウェイト交換方式)
高さ調整範囲 ±3mm
ヘッドシェル カーボンファイバー,自重7.6g

■その他■

使用半導体・その他 水晶×1,IC×14,cds×1,ホール素子×3,LED×2,トランジスター×12
フォトカプラー×4,ダイオード×16
付属機構 クイックプレイ(アーム連動),クイックストップ(アーム連動),
アーム高さ調整機構,アームエレベーション(専用DCモーター使用)
マニュアルアーム送り機構,チャック式ジョイント(ヘッドシェル取付部)
オートアップ,オートストップ
消費電力 18W
供給電源 AC100V,50/60Hz兼用
外形寸法 530(W)×210(H)×573(D)mm
重量 26kg

 
※本ページに掲載したPL−L1の写真・仕様表等は1979年11月のパイオニアの
 カタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したがっ
 てこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますの
 で,ご注意ください。 

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