PM-94の写真
marantz PM-94
DIGITAL MONITORING AMPLIFIER ¥228,000

マランツが1985年に発売したプリメインアンプ。それまでの同社伝統のゴールドパネルからブラックパネルに変
身し,左右対称のデザインは引き継ぎながらも,大きくイメージを変えたPM-54,PM-64,PM-74,PM-84と
続くシリーズの最上級機にあたるモデルでした。

PM-94の1つ目の特徴は,出力段へのMOS FETの採用でした。MOS FETは,(1)良好な高周波特性を持
つとともに,高耐圧,大電力化の要求に応えられる (2)原理的に多数キャリアのみで動作するため,高入力イン
ピーダンスを実現 (3)スイッチング時の蓄積効果が少ないため,ターンオフ時間が極めて短く,高速スイッチング
が可能,などの優れた特徴を持った素子で,各社がその優れた性能に注目していた素子でした。PM-94では,
出力段をMOS FETトリプルプッシュプル構成の強力なものとしていました。

2つ目の大きな特徴は,純A級動作とAB級動作を電子的に自動切換を行う「クォーターA」方式でした。それまで
もマランツのアンプは,A級動作,AB級動作をスイッチで切り換えるアンプのほか,PM-94にも採用された自動
切換の「クォーターA」を搭載したPM-6aを発表するなど,A級動作に積極的でした。PM-94でも「クォーターA」の
名の通り,1/4の出力までは完全な純A級動作を行い,それ以上の最大出力まではAB級動作へと自動的にシ
フトするようになっていました。この切換は,メインアンプの出力電圧を検出し,バイアス電流を高速スイッチング回
路で制御するようになっており,従来の「クォーターA」回路よりも検出速度の向上が図られ,デジタルサウンドの広
いダイナミックレンジに対応して,純A級35W×2のローレベルでのリニアリティとAB級140W×2の強力なスピー
カードライブ能力の両立が行われていました。

PM-94のフロントパネル

PM94は,当時の様々なソースに対して対応しようとする設計が行われていました。CDに対しては,通常の入力
セレクターでのCDポジションに加えて,CDダイレクトポジションを装備していました。CDダイレクトポジションにする
ことで,入力セレクター,テープモニターなどのステージをジャンプし,直接マスターボリュームからFET入力のフラッ
トアンプに直結され,マスターボリューム自体の抵抗変化に対しても入力インピーダンスの影響を受けないピュアー
な再生を実現していました。
アナログディスクに対しても,高性能なイコライザー部を装備し,MCカートリッジに対しては高性能なMCトランスを
左右独立で2個搭載していました。このMCトランスは,2コイル構成で,コア方向と巻線方向の2重シールドが採用
され,昇圧比もHigh・Low2段切換の本格的なものでした。
また,TAPE MONITORの中にHiFi-VCRのポジションを装備し,他のテープデッキと同列に録音・ダビングなどの
操作ができるようになっていました。

PM-94のMCトランスPM-94の電源トランスPM-94の電解コンデンサ

電源部も充実した構成,大型のトロイダル電源トランスと90,000μF級の大型電解コンデンサを搭載していまし
た。この大型のトロイダルトランスは,ケイ素鋼板3重シールドが行われ徹底してフラックス対策がとられ,力強い
再生音とともに高SNを実現していました。

シャーシは,従来の銅メッキ鋼板を一歩進め,より均一な銅メッキ仕上げで通常の銅メッキ以上の効果を発揮する
銅メッキ鋼板の新素材「カッパータイト」をシャーシに全面的に採用していました。パーツも,特性音質とも同等のペ
ア電解コンデンサー,銅メッキによる音質改善を施した各スイッチ類,厚さ70μの回路基板,無酸素銅配線コード
など厳選して搭載されていました。また,ハンダによる微妙な音質変化を排除するため,コンデンサーはビス止め
とされ,各部のビスもすべて銅メッキビスが採用されていました。

カッパータイトシャーシPM-94のパーツ
PM-94の内部

以上のように,PM-94は,マランツ伝統の技術の上に新しい練り上げを施した高性能なプリメインアンプでした。
ブラックパネルからうける力強い感じよりも高域のクリアでさわやかな音が印象に残っています。1987年には
500台限定で,ゴールドパネルのPM-94limited(¥260,000)が発売されました。「カッパータイト」にさらに
共振部分に非磁性素材を貼り付けた異種金属接合構造,鋼製だった天板をアルミ製天板に変更等によるコン
ストラクションの見直し,内部の空間にポルトラングセメントを充填した大型インシュレーターの採用,特別仕様
のHiFiオーディオ用電解コンデンサーの搭載などパーツ選定の見直し,PHONOダイレクトポジションの追加な
ど各種の強化が行われ,これも好評を得ていたことを思い出します。

PM-94LIMITEDの写真
marantz PM-94LIMITED
DIGITAL MONITORING AMPLIFIER  ¥260,000


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


音楽再生の可能性に挑戦する
「MOS FET」,「クォーターA」
●理想的デバイス「MOS FET」を投入した
 トリプル・プッシュプル構成出力段
●純A級のクオリティとAB級のハイパワー
 を電子コントロールする「クォーターA」
●ダイナミックレンジ,SN比,そしてクロストーク
 においてもCDの水準をクリア
◎純A級35W×2のクオリティとAB級 140W×2
 のハイパワーを獲得した最高級プリメイン
◎さらにピュアーでハイスピードなCD再生を
 実現したCDダイレクトポジション装備。
◎MCカートリッジの能力を100%発揮させる
 高性能MCトランス
◎AV時代の新しい音楽ソースに対応する
 HiFiVCRモニターポジション
◎マランツ伝統の電源重視思想を継承した
 強力電源部
◎新素材「カッパータイト」を採用した
 高音質シャーシ
◎テクノロジーを支える音質重視パーツ群は
 ヒヤリングテストにより厳選
●PM-94 SPCIFICATIONS●


定格出力
(20Hz〜20kHz)
35W×2(純A級・8Ω)
140W×2(AB級・8Ω)
220W×2(AB級・4Ω)
出力帯域幅
(8Ω/THD0.008%)
10Hz〜40kHz
全高調波歪率 0.005%(20Hz〜20kHz・8Ω)
0.01%(20Hz〜20kHz・4Ω)
混変調歪率 0.005%
周波数特性 20Hz〜20kHz+0,−0.2dB
ダンピングファクター(8Ω) 120
入力感度/入力インピーダンス MM      2.5mV/47kΩ
MC(HIGH) 350μV/40Ω
MC(LOW) 125μV/3Ω
テープ・チューナー・CD・AUX 150mV/25kΩ
出力インピーダンス PRE OUT 220Ω
RIAA偏差 20Hz〜20kHz±0.2dB
SN比
(IHF-Aネットワーク)
MM 90dB
MC 76dB
テープ・チューナー・CD・AUX 100dB
フォノ最大許容入力 MM 220mV
MC 24mV
トーンコントロール特性 低域 100Hz±10dB
高域 10kHz±10dB
消費電力・電源 395W・100V 50/60Hz
390W・100V 50/60Hz(LIMITED)
外形寸法・重量 465W×166H×452Dmm・23kg
462W×167H×446Dmm・23kg(LIMITED)
※本ページに掲載したPM-94, PM-94LIMITEDの写真,仕様表等
は,1985年7月,1987年5月の
marantzのカタログより抜粋したもの
で,日本マランツ株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写
真等を無断で転載・引用等する
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意ください。                                         

 

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