PMA-780Dの写真
DENON PMA-780D
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥89,800

1987年にデンオンが発売したプリメインアンプ。当時各社から出ていたD/Aコンバーター内蔵型のプリメイン
アンプで,その内容から見て,当時,価格が高くなると思われていたD/Aコンバーター内蔵アンプの常識をう
ち破り,価格を超えた中身を持った最もコストパフォーマンスの高い1台でした。

パワー部は,デンオン自慢の「スーパー無帰還パワーアンプ」で,当時各社から出されていたノンNFBタイプの
パワーアンプで,いわゆるトータルでのNFB(負帰還)ループが存在しない方式でした。オペアンプによって入
力信号と出力信号を比較(逆相加算)し,歪み成分を検出して出力側に逆相で加えることで歪みを除去するも
ので,理論上,動的歪み,静的歪みいずれをも発生させないというものでした。オーディオ信号の流れが一方
向(帰還ループがない)ため,回路構成がシンプルで,動作が安定しているという特長がありました。
パワーアンプ初段にはFETを使用し,電圧増幅段は差動増幅3段,終段には,fT20MHz・Pc150Wの高速
大容量のパワートランジスターをシングルプッシュプルで搭載し,ローノイズ化,DC構成化が行われていまし
た。パワートランジスターは熱容量1300J/℃という厚肉大型ヒートシンクに固定され,ハイパワー動作時の
温度上昇や振動が抑えられ,安定した動作が確保されていました。

電源部からのハイスピードな電源供給を図るため,パワーアンプ部は電源部と一体化された合体構成がとら
れていました。
電源部は,400VAクラス,6.2kgの重量級大容量のEIトランスが搭載され,AC/DC変換にはサージ電流
200Vの大型整流器,総計32,800μFの電解コンデンサーなどによる「ピュアダイナミック電源」が搭載され
ていました。この「ピュアダイナミック電源」では,タンデルタの異なる2種類の電解コンデンサーを2基ずつ搭載
した2−2構成で,電源ノイズを遮断する仕組みになっていました。

「デジタル・マルチインターフェース部」は,「インターフェース回路」と「D/Aコンバーター回路」で構成されてい
ました。「インターフェース回路」は,サンプリング周波数を自動的に識別して対応する回路と直線位相2倍オー
バーサンプリング95次デジタルフィルターからなっていました。「D/Aコンバーター回路」は,D/A変換時の
歪みを低減する「変換誤差補正回路」を搭載し,補正用信号を加えることによってゼロクロス歪みを排除する
デンオン独自の「スーパーリニアコンバーター」を左右独立で搭載した「Wスーパーリニア・コンバーター」が搭
載され,単体のD/Aコンバーターとしても優れた性能を持っていました。
インターフェース回路とD/Aコンバーター回路は別々の回路基板に構成されて,シールドが施され,インター
フェース回路にはトランスの2次側から独立した専用電源回路が設けられ電源を迂回するようになっていまし
た。さらに,デジタル部のシャーシ全体はシャーシや回路基板の防振を兼ねたシールドケースで覆われ,デジ
タル信号のアナログ部への干渉を抑えていました。

PMA-780Dは,入力系を豊富に備えていました。アナログ系として,PHONO1系統,CD,TUNER,AUX
とハイレベル入力3系統,TAPE-1,TAPE-2,DAT/TAPE-3とTAPE系3系統を備え,デジタル系として,
CD,DAT,AUX/DBSの3系統を備えていました。また,ソースダイレクトスイッチをONにすることにより,ラ
ウドネス,トーンコントロールなどのコントロール部をキャンセルしてパワーアンプのボリュームに直結するよう
になっていました。
また,アナログ入力系には,サラウンドプロセッサーやグラフィックイコライザーなどを接続・活用できるプロセッ
サーループ端子も装備されていました。
アナログレコードに対しても本格的なイコライザーアンプを搭載し,デンオン自慢のスーパーイコライザーアンプ
が搭載され,MC入力時にも20Hz〜100kHz±0.3dBというワイドレンジなRIAA周波数特性を実現してい
ました。

筐体全体にはしっかりした振動対策がとられ,トップカバーは8点止めで,メインシャーシに直止めとされ,ボト
ムシャーシは,トランス部とその他を分割して,トランス部の振動と渦電流の干渉をカットする2枚構造とすると
ともに,各寸法の設定,ねじ止めの位置,インシュレーターの配置などにより振動モードの分散が行われてい
ました。

以上のように,PMA-780Dは,通常のプリメインアンプとしてもしっかり物量が投入され,ダイナミックでシャ
ープな音を持ち,価格を超えた内容を持つとともに,D/Aコンバーターとしても優れた内容を持った実にコスト
パフォーマンスの高いアンプでした。販売的には苦戦したD/Aコンバーター内蔵アンプの中では,健闘した
1台でした。
 
 

以下に,当時の方ロブの一部をご紹介します。
 


ハイクオリティCDソースを
ピュアに鳴らす。
未来派機能を搭載した
デジタル信号ダイレクト再生アンプ
◎”電力増幅回路/電源回路”の合体を強化
◎パワーアンプの瞬時能力を支える強力電源によって
 音の粒子を洗練
◎不動の性能を追求したハイスピード・スーパー
 無帰還パワーアンプ。あらゆるひずみはゼロへ
◎マルチインターフェース搭載。CD,DATなどの
 信号をデジタルビットのままダイレクトに入力
◎セパレートタイプCDプレーヤーを圧倒
 高性能D/Aコンバーター搭載
◎クオリティをサポートするため,
 完全シールド&専用電源方式
◎シンプル&ストレート再生を可能にした
 デジタル・ダイレクト設計
◎時代を先取りする,豊富な入力端子を装備
◎TAPE(DAT)3系統の入出力端子/裏録もOK
◎サウンド・クリエイティブ機能を接続できる
 プロセッサーループ端子
◎微振動を排除するクリアーサウンド設計
 
●PMA-780Dの仕様●
 

●パワーアンプ部(LINE端子→SP端子)●


定格出力
(20Hz〜20kHz)
8Ω:110W+110W
6Ω:130W+130W      
入力感度/入力インピーダンス
(プロセッサーループ入力)
150mV/47kΩ
全高調波ひずみ率 0.004%(20Hz〜20kHz,55W,8Ω)
混変調ひずみ率 0.003%以下
(出力110W相当8Ω)
動特性 ダイナミックパワー:350W/2Ω
TIM歪み率:測定限界値以下
スルーレイト:±350V/μS
出力帯域幅
(IHF両ch駆動)
5Hz〜100kHz(出力55W,0.5%,8Ω)
ライン入力周波数特性 4Hz〜150kHz+0,−3dB(1W8Ω)
出力インピーダンス 0.1Ω以下
出力端子 スピーカー:
 AorB/6〜16Ω
 A+B/12〜16Ω
ヘッドホン:
 最大出力 430mW(8Ω)
 8〜400Ωに適合

●インターフェース/DAC部●


デジタル入力レベル・インピーダンス 0.5Vp-p75Ω同軸
周波数特性(0dB) 5Hz〜20kHz±0.3dB
SN比(対0dB,1kHz) 105dB
ダイナミックレンジ(1kHz) 96dB
全高調波歪率(0dB,1kHz) 0.0025%
チャンネルセパレーション(0dB,1kHz) 100dB

●プリ(主にEQ)アンプ部●


入力感度/入力インピーダンス PHONO MM:2.5mV/47kΩ
PHONO MC:0.2mV/100Ω
CD,TUNER,AUX,TAPE-1,2,3(DAT)PB:150mV/47kΩ
最大出力/定格出力 8V/150mV
RIAA偏差 20Hz〜100kHz±0.3dB(MC IN)
全高調波歪率 0.002%(1kHz出力8V時)

●総合●


SN比
(朝刊補正A,入力短絡)
PHONO MM:88dB
PHONO MC(0.25mV入力時):69dB
LINE(150mV入力時):108dB
トーンコントロール BASS  :100Hz±8dB
TREBLE:10kHz±8dB
PHONO用サブソニックフィルター 16Hz・12dB/oct
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+4dB
高域:10kHz+4dB
ミューティングスイッチ −20dB

●その他●


電源 AC100V 50/60Hz,216W
外形寸法
(ツマミ,足,端子含む)
W434×H172×D396mm
重量 15.6kg
※本ページに掲載したPMA-780Dの写真,仕様表等は1987年4月
 のDENONのカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
 法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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