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DENON PMA-790
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥178,0001982年にデンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。堂々とした風格を持つ大型の筐体が印象
的な1台でしたが,中身の方も,同社の高級セパレート機POA-8000などで開発された技術を導入し
しっかりと物量を投入した充実したものでした。PMA-790の最大の特徴は,パワー段に「無帰還0dBパワーアンプ」を採用していたことでした。信号
の負帰還ループを排除したもので,プリメインアンプとしては初めてのことでした。従来のプリメインアン
プでは,電圧増幅,電流増幅と,2段,3段となっている増幅段全体に負帰還(NFB)をかけて歪みを
低減する手法がとられていました。「無帰還0dBパワーアンプ」では,電圧増幅部は通常通り負帰還を
かけて歪みを低減する増幅段とし,ここで,必要な電圧増幅をすませ,最終段では,電圧増幅を行わ
ず,電流増幅(電力増幅)だけを行うという形をとっていました。この最終増幅段は電圧増幅率が1倍
すなわち0dBとなり,このような名称となっていたようです。そして,この最終増幅段には負帰還がかけ
られていないというのが大きな特徴でした。これにより,信号系のハイスピード化,スピーカーの逆起電
力に強い,動的ひずみが少ないなどの利点が得られていました。負帰還をかけていない最終増幅段には,「ダイレクトディストーションサーボ回路」が搭載され,歪みの
低減が行われていました。この「ダイレクトディストーションサーボ回路」は,最終段の入力と出力を比較
して歪み成分のみを検出し,これを逆相にして入力に戻して歪みを打ち消すというもので,理論的には
歪みがゼロになるというものでした。以上のようなパワー段は,電圧増幅部の構成として,初段がローノイズFETによる差動3段カレントミラー
とし,コンプリメンタリー・エミッタホロワによってローインピーダンス化を図り,電力増幅段からの影響を
うけにくくしていました。
最終増幅段は,高速・大容量電源部と高効率ヒートシンクに支えられたPc130Wの大容量パワートラ
ンジスタによるパラレルプッシュプルで,さらに,バイアスを最適にコントロールしてスイッチング歪みを
防ぐ「ゼロクロス・リニアバイアス回路」によるダイレクトA級として,スイッチング歪み,クロスオーバー
歪みなどをおさえていました。イコライザーアンプは,初段にローノイズFETを4個使用した2パラレル差動増幅として,高SN比を確保
し,カスコード・ブートストラップを構成してMMカートリッジの中・高域のインピーダンス上昇によって生じ
る歪みの低減を図っていました。NF型DCアンプとCR型イコライジング・フィルターを組み合わせたデン
オン自慢の「広帯域イコライザー」として,20Hz〜100kHz±0.2dBという広帯域特性を実現していま
した。また,MC入力は,LOW(125μV),HIGH(250μV)の2ポジションとして幅広いカートリッジへ
の対応を図っていました。
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電源部は,プリメインアンプとして圧倒的に大型の600VA級のトロイダルトランスを搭載し,66,000μF
の大容量コンデンサー,スイッチング歪みを防ぐファストリカバリーダイオードなどとともに,強力な電源部
を構成していました。強力なパワー段を支え,150W+150W(8Ω),200W+200W(6Ω)240W+
240W(4Ω)のハイパワーを実現していました。機能的には,オーソドックスで,PHONO入力は2系統,TAPE端子も2系統装備していました。トーンコン
トロールは,デンオン独自の「リアルタイム・トーンコントロール」を搭載していました。これは,トーンコントロ
ールを必要な受動素子だけからなり,パワーアンプに組み込むことで,信号経路からコンデンサーを排除
したものでした。以上のように,PMA-790は,デンオンがセパレートアンプ,プリメインアンプで丁寧に積み上げてきた技術
を投入し,オーソドックスに作り上げた高級プリメインアンプでした。サイドウッドを含めると506mm幅にもお
よぶ堂々たる筐体同様に,滑らかでどっしりとした癖のない音を持つ,安心して使えるアンプでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音の輝き,表情・・・。
本物を響かせる近未来アンプ。
◎シャープ&ダイナミックなデジタルソースを豪快に鳴らす
240W+240Wハイパワー無帰還パワーアンプ。
◎パルシブなデジタルソースを一瞬のゆるみもなく再現する
驚異的なハイスルーレイト±350V/μsecを達成。
◎急峻な音楽エネルギーの変化に対応し,圧倒的なスケー
ル感をサポートする超弩級高速・大容量電源部。
◎キメ細かで豊かな音楽表現。
RIAA偏差20Hz〜100kHz±0.2dBを実現した
広帯域イコライザーアンプ。
◎2本のカートリッジを自由に切換え試聴できる
デュアル・リスニング機構
◎クオリティ劣化をなくした広帯域リアルタイム・トーンコントロール
◎高速プロテクション回路
■パワーアンプ部(チューナー端子→スピーカー端子)■
回路方式 | 無帰還0dBパワーアンプ方式 |
定格出力
(両ch駆動,正弦波連続出力) |
20Hz〜20kHz負荷4Ω:240W+240W
20Hz〜20kHz負荷6Ω:200W+200W 20Hz〜20kHz負荷8Ω:150W+150W |
入力感度/入力インピーダンス | 150mV/47kΩ |
全高調波ひずみ率 | 0.002%以下(20Hz〜20kHz定格出力−3dB) |
混変調ひずみ率 | 0.0015%以下
(60Hz/7kHz:4/1,定格出力相当振幅出力時) |
TIMひずみ率 | 測定限界以下 |
スルーレイト | 350V/μs以上 |
出力帯域幅
(IHF両ch駆動) |
5Hz〜80kHz(THD.0.015%) |
周波数特性 | 1Hz〜300kHz+0,−3dB(1W出力時) |
出力インピーダンス | 0.1Ω(1kHz) |
SN比 | 108dB(IHF-A) |
ライズタイム | 0.6μV |
出力端子 | スピーカー:
A,B/4〜16Ω A+B/8〜16Ω(インピーダンス切換スイッチ付) ヘッドホン: ステレオヘッドホン (インピーダンス切換可能LOW,HIGH,ダイレクトの3段) |
■プリ(主にEQ)アンプ部■
回路方式 | 広帯域イコライザー方式 |
入力感度/入力インピーダンス | PHONO MM:2.5mV/47kΩ
PHONO MC:(HIGH)0.25mV/100Ω(LOW)0.125mV/100Ω TUNER,TAPE,DAD/AUX:150mV/47kΩ |
最大出力/定格出力 | 12V/150mV |
RIAA偏差 | MM,MC=20Hz〜100kHz±0.2dB |
全高調波歪率 | 0.001%以下(1kHz出力8V時) |
■総合的特性■
SN比
(IHF-A,入力短絡) |
PHONO MM:90dB(2.5mV入力時)
PHONO MC:75dB(0.25mV入力時) TUNER,TAPE,DAD/AUX:110dB |
トーンコントロール | BASS :50Hz/100Hz±8dB
TREBLE:10kHz/20kHz±8dB |
サブソニックフィルター/ミューティング | 18Hz・6dB/oct/−20dB |
ラウドネスコントロール特性 | 低域:100Hz+7dB
高域:10kHz+6dB |
ミューティング | −20dB |
■その他■
電源・消費電力 | AC100V 50/60Hz・380W(電気用品取締法による) |
外形寸法
(ツマミ,ゴム足,端子含む) |
W506(含,側板厚18×2)×H168×D451mm |
重量 | 20kg |
※本ページに掲載したPMA-790の写真,仕様表等は1983年4月のDENONのカタログ
より抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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