SONY PS−X9
INTEGRATED STEREO TURNTABLE ¥380,000
ソニーが1977年に発売した高級アナログプレーヤーシステムです。高級機としては珍しくMCカートリッジが付属して
いるだけでなくMCヘッドアンプやイコライザーアンプまでも一体化して搭載した「インテグレーテッド思想」が大きな特
徴でした。そのためこのプレーヤーは,アンプのフォノ入力ではなく,ライン入力につなぐという使い方をしました。ターンテーブルは,アルミダイキャスト製で38cmという大型重量級のものを搭載していました。モーターは,ソニー自
慢の「リニアスロットレスモータ」の専用品を搭載し,滑らかな回転と7kg-cmの強力な起動トルクを誇りました。この
強力なモーターによるダイレクトドライブで,スタート,ストップ,回転数切り換えも高速にできました。サーボ系は「クリ
スタルロック・マグネディスクサーボ方式」という水晶制御を用い,高精度な回転(ワウ・フラッター0.02%)と±6%
の回転数調整を実現していました。
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アームは,炭素繊維とアルミ合金をラミネートした複合構造で剛性を高め,共振を抑えたスタティックバランス型のJ字
型のアームでした。先端には,当時のソニーの最高級カートリッジXL−55のヘッドシェル一体型版XL−55pro(単体
で¥37,000で売られていました。)を搭載していました。また,このプレーヤーシステムは,高級機には,珍しく無接
触の光電素子を使っての針先位置検出機構を持つオートリターン機構を持っていました。
このPS−X9の最大の特徴は,MCヘッドアンプやイコライザーアンプまでも本体内に搭載していたことでした。これは,
小出力のカートリッジからの信号をフォノコードで長く引き回すことなく初段の増幅をしアンプに送り込むという考え方で
す。どちらかというとプロ機的な発想でしたが,一つの方法として納得させるものであったと思います。フォノコードの影
響を排除できるという利点と,ヘッドアンプ,イコライザーアンプによる音づくりの楽しみがないという欠点を使う人がどう
考えるかにもよると思いますが,このプレーヤーシステムの根幹となる考え方「インテグレーテッド思想」の現れだった
といえます。このPS−X9は,作りもしっかりしていて(重量35kg)安定性が高く,音も良かったのですが,そのプロ機的な飾り気
のないメカニックなデザインが受け入れられなかったか,あまり大きな話題にはなりませんでした。しかし,ソニーが高
い技術を投入した名機だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
インテグレーテッド思想を網羅した
超弩級プレーヤーシステム。
MCヘッドアンプ,イコライザーアンプ搭載。
◎強大なトルクを誇る
リニアスロットレスモーター採用。 ◎高精度とすぐれた負荷特性を実現。 クリスタルロック・マグネディスクサーボ方式。 ◎大型重量級ターンテーブルを採用。 ◎音質劣化を極力抑えた伝送系。 ◎ヘッドアンプ,イコライザーアンプ内蔵。 ◎信頼性の高い高感度・新開発アーム採用。 ◎万全を期したハウリング対策。 ◎ルミナスセンサーによるオートリターン機構。 ◎リモートコントロール可能。 ◎カートリッジはXL−55pro使用。 |
PS−X9の主な規格
●ターンテーブル部●
ターンテーブル | 38cmアルミダイキャスト |
モーター | リニアブラシアンドスロットレスサーボモーター |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
制御方式 | クリスタルロックマグネディスクサーボコントロール |
回転数 | 331/3,45rpm |
速度調節範囲 | ±6%(クリスタルロックOFF時) |
起動特性 | 1/3回転以内(331/3rpm) |
ワウ・フラッター | 0.02%WRMS(331/3rpm) |
SN比 | 75dB(DIN−B) |
●トーンアーム部●
型式 | スタティックバランス型ユニバーサルトーンアーム |
有効長(全長) | 264mm(356mm) |
オーバーハング | 14mm |
針圧調整範囲 | 0〜3g |
使用可能カートリッジ重量 (ヘッドシェル重量含む) |
10.5g〜18.5g(ウェイト小) 18g〜33g (ウェイト大) |
●カートリッジ●
型式 | MC型(ムービング・コイル型) |
出力電圧 | 0.2mV(5cm/sec,1kHz45度方向) |
周波数特性 | 6〜50,000Hz(本機アーム取り付け時) |
チャンネルセパレーション | 30dB以上 |
チャンネルバランス | 1.0dB以内(1kHz) |
直流抵抗 | 40Ω |
コンプライアンス | 15×10−6cm/dyne |
針圧(標準値) | 1.5〜2.5g(2.0g) |
針先形状 | 0.3×0.8mil楕円ソリッドダイヤモンド針 |
自重 | 22g |
●オーディオ部●
使用半導体 | FET14石,トランジスタ86石,ダイオード4個 |
ヘッドアンプ | 初段LECトランジスタ差動アンプ |
イコライザーアンプ | 初段デュアルFETダイレクトカップリング差動アンプ NF形終段SEPP |
出力端子 | PHONO:カートリッジダイレクト出力 LINEOUT:出力電圧150mV 出力インピーダンス600Ω |
●イコライザーアンプ●
SN比 | 87dB(2.5mV,入力ショート,IHF−Aネットワーク) |
ひずみ率 | 0.005%以下(20Hz〜20kHz,1V OUT) |
RIAA偏差 | ±0.2dB |
利得 | 36dB(1kHz) |
入力インピーダンス(切換スイッチ付) | 25kΩ,50kΩ,100KΩ,100pF,200pF,400pF |
許容入力 | 240mV(1kHz) |
●ヘッドアンプ+イコライザーアンプ●
SN比 | 80dB(0.2mV,入力ショート,IHF-Aネットワーク) |
ひずみ率 | 0.005%以下(20Hz〜20kHz,1V OUT) |
周波数特性 | 10Hz〜500kHz+0,−1dB(ヘッドアンプのみ) |
利得 | 63dB(1kHz) 入力インピーダンス 100Ω |
許容入力 | 10mV |
●電源部・その他●
電源 | AC100V,50/60Hz(周波数切換不要) |
消費電力 | 45W |
大きさ | 540(幅)×220(高さ)×450(奥行)mm (ダストカバーなしの場合の高さ140mm) |
重さ | 35kg |
※本ページに掲載したPS-X9の写真・仕様表等は1977年12月のソニーの
カタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって
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