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ONKYO PX-100M
LINEAR-MOTOR SYSTEM ¥500,000(アームレス・カートリッジレス)
オンキョーが1981年に発売した超弩級のターンテーブルユニット。「誘導型リニアモーター」という非常に
ユニークな駆動方式を採用したプレーヤーで,その回転精度と滑らかな回転には驚異的なものがありまし
た。PX-100Mの最大の特徴は,自重10kg,慣性質量が実に2000kg・cm2にも達する超弩級のハイイナ
ーシャ・ターンテーブルを直接外周駆動する,誘導型リニアモーターにありました。この方式は,つまり,電
気メーターのローター(電気使用量を図るメーターのあのゆっくり回っている円盤)に使われている方式で,
AC(交流)モーターの一種で過電流モーターとも呼ばれるものです。ローターとなっているターンテーブル
は無磁極であり,動作原理からも,磁極の押し曳きに伴うコッキング現象は全くなく,ステータから与えられ
る連続的推力により,安定した滑らかな回転を得ることができ,ワウ・フラッター0.005%という驚異的な
回転精度を実現していました。この誘導型リニアモーターは,もともとトルクが弱いモーターであるため,10kgにも及ぶ重量級のターンテ
ーブルを起動するために,アイドラードライブの起動用補助モーターがついているというユニークな方式でし
た。しかし,トルクの弱いモーターで駆動するということは決して弱点ではなく,むしろ細かな回転の変動が
生じにくく,重量級ターンテーブルの慣性による,安定で滑らかな回転が得られました。そして,この安定し
た回転を,必要最小限のクォーツPLLサーボでコントロールし,驚異的な回転精度を実現していたのでし
た。ターンテーブルは,純度削り出しで,10kgの重量を持つものでした。純銅削り出しのターンテーブルを採用
したのは,@誘電率がよくリニアモーターのローターとして理想的な素材であるA比重が8.9と大きいため
十分な慣性質量を得るにもコンパクトにできるBムクからの削り出しのため,ターンテーブルとローターを一体
に仕上げられ,しかもコイルにはさまれるローターの精度が確保できる,等のメリットがあるためでした。
ターンテーブルを支えるキャビネットは,アルミ合金によるダイキャストで,高精度な仕上げと高い剛性を誇り
ました。以上のように,非常に独特の方式による高性能なターンテーブルユニットで,非常に安定した再生音が得ら
れ,音像定位,音場再現性の確かさは素晴らしいものでした。また,78回転にも対応しており,SPレコード
も再生もできました。知る人ぞ知るといった感じのオンキョーの渾身の作だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
フォノ・モーターの理想に挑む, |
外周駆動誘導型リニアモーター。 |
慣性質量,実に2,000kg・cuの |
純銅製・超弩級ターンテーブルを |
直接駆動。 |
ワウ・フラッタも1桁違う0.005%の |
高水準を実現しています。 |
●PX-100Mの定格●
主モーター | 誘導型リニアモーター(アウトロータ・ダイレクトドライブ方式) |
補助モーター | ハイトルクDCモーター |
ターンテーブル | 33cm径・タフピッチ銅ブロック削り出し,自重10kg |
制御方式 | クォーツPLLコントロール |
ワウ・フラッタ | 0.005%(当社測定法による) |
SN比 | 78dB以上(DINーB,測定限界) |
起動特性 | 1/2周で規定回転(起動ブースター使用) |
寸法 | 560W×206H×374Dmm |
重量 | 40kg |
※本ページに掲載したPX-100Mの写真・仕様表等は1982年9月のONKYOのカタ
ログより抜粋したもので,オンキョ−株式会社に著作権があります。したがってこれら
の写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意く
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