QL-A95の写真
Victor QL-A95
レコード吸着レディ・クォーツロック・プレーヤー・システム
                          ¥170,000
(カートリッジレス S字ユニバーサル・アーム・パイプ付き)
ビクターが1982年に発売したマニュアルプレーヤーシステム。従来からTT-101などのタ−ンテーブルユニットでも定評
のあったビクターがTT-801型DDターンテーブルユニットの技術を投入して完成したプレーヤーシステムでした。オーソド
ックスなマニュアルプレーヤーながら別売のターボ・ディスク・スタビライザー・ユニットを追加することでレコード吸着システ
ムを搭載したプレーヤーになるというユニークな設計でした。

QL-A95の最大の特徴は何といっても上記のレコード吸着システム対応になっていることでした。別売のターボ・ディスク
スタビライザー・ユニットTS-1型を接続することによりターンテーブルのスタート同時に吸引動作を開始し,レコードをターン
テーブルに吸着しました。ビクターのレコード吸着システムは,カッティング・レースと同じ方式の,常時吸引方式で,常に
弱い力でレコードを吸着しておくものでした。ターンテーブル回転中は常に一定の力でレコードがターンテーブルに密着して
レコードのソリ,振動などの影響を抑制するというシステムでした。この方式を実現するために,ターンテーブルにエアインテ
ーク孔,ターンテーブルシャフトに空気の通り道が設けられた構造になっていました。
 

TS-1の写真
QL-A95の内部

ターンテーブルは,重量3.05kgで慣性質量470kg-cm2。分厚いアルミダイキャスト製の本体に亜鉛の防振 リングを付
加しさらに弾性リングをリム部内周にはめ込んで共振を抑え込む構造になっていました。シャフト径14mmの大型モーター
はコアレスDCタイプで,3.0kg-cmに達するハイトルクを実現していました。回転制御はクォーツロックでより安定度を高
めるためにダブル・サーボ・クォーツ回路になっていました。これらにより,起動から0.35秒以内(4分の1回転以内)で定
速回転に達し,±両方向サーボの働きと相まって,33・1/3と45rpmの回転数切換,回転停止も高速にスムーズに行え
ました。

トーンアームは,特殊高剛性素材シェル一体型ローマス・テーパード・ストレート・パイプとユニバーサルS字パイプの交換
式で回転軸受けは高感度・高安定度仮想一点支持構造ニュー・ジンバル・サポート方式をしていました。また,大型アー
ム・ベースとターンテーブル・ベースをドッキングプレートで強固に一体化して,振動伝搬ループの位相を整え,有害な混変
調歪を排除していました。
トーン・アームのカウンター・ウェイト内には,複共振系によってアームの共振をキャンセルするダイナミックQダンプ機構が
組み込まれていました。ウェイト・シャフトはゴムなどを介さずに強固に軸受けブロックに固定され全体の共振の位相が乱
れず,ここでも混変調歪が排除されていました。

キャビネットは,5層のソリッド材で構成された積層キャビネットで,美しいローズウッド調の仕上げはビクター伝統の優れ
た木工技術の賜物でした。インシュレーターは,支点位置を高めてキャビネットの安定性を増した低重心構造とし,鉛ベ
ースを介してキャビネットにがっちり取り付けられていました。

以上のように,QL-A95はオーソドックスながら,しっかりと物量を投入し,基本をきちんと作り上げ,その上にレコード吸
着機構への備えをした高性能プレーヤーでした。ビクター伝統のターンテーブル技術を感じさせる名機だったと思ってい
ます。

 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 




 
パイプ交換方式高剛性トーンアームなど
オーソドックスな手法で
徹底的に音質を錬磨した
無共振・無振動化技術の本流。

◎無共振・無振動の究極に迫る
  レコード吸着レディ・タイプ。
◎パイプ交換方式によって
  ユニバーサリティと無共振性を
  両立させた高剛性トーンアーム。
◎トーンアームの共振を抑制する
  ダイナミックQダンプ機構。
◎ハイ・トルク3.0kg-cmの
  コアレスDCサーボ・モーター。
◎異種金属複合構造の無共振化
  ヘビィウェイト・ターンテーブル。
◎高密度積層構造の重量級キャビネットと
  低重心インシュレーター。
◎オート・ストップ・アップ機構
 

●QL-A95型仕様●

駆動方式 FG検出ダブル・サーボ・クォーツ・コアレスDC・ダイレクトドライブ
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.008%(WRMS,回転部FG法)
SN比 85dB(DIN-B)
起動特性 0.35sec,1/4回転以内
起動トルク 3.0kg-cm
ターンテーブル重量 3.05kg(マットを含む)
慣性質量 470kg-cm
負荷特性 0%(針圧250gまで)
回転数偏差 0.001%
トーンアーム型式 ダイナミックQダンプ,パイプ交換方式
ニュー・ジンバル・サポート(有効長254mm)
針圧可変範囲 0〜3.0g
取付けカートリッジ重量 サブウェイト使用時4〜18g
大型ウェイト使用時34gまで(シェルを含む)
アーム高さ可変範囲 ±3mm
キャビネット仕上げ リアル・ウッド仕上げローズ調
寸法 515W×209H×427Dmm
重量 20.0kg
その他 オート・ストップ・アップ機構付き
S字形ユニバーサル・パイプおよびスペア・ウェイト付属


TT-801の写真
Victor TT-801
QUARTZ SYNTHESIZER D.D. TURNTABLE
                        ¥130,000

QL -A95発売の前年の1981年,吸着式のターンテーブルTT-801は発売されました。それまでも
マイクロ,ラックスなどから,ディスクを吸着してターンテーブルと一体化することで,レコードのソリの
影響をなくし,レコードの不要な振動を抑えるといったターンテーブルやプレーヤーシステムは発売
されていましたが,いずれもベルトドライブ方式のものでした。そして,ダイレクトドライブ方式では
初の吸着システムを採用したのがTT-801でした。

TT-801の内部構造

TT-801の吸着システムは,「ターボ・ディスク・スタビライザー・システム」と称され,ダイレクトドライ
ブ方式でありながらディスク吸着システムを実現するために,高度な加工技術によってセンタースピ
ンドル内にエア通路を設けていました。ターンテーブルマットの8個の吸気孔から吸い込まれた空気
はターンテーブル上のスリットとセンタースピンドル内を通ってユニットの外部へ導かれ,さらに長さ
2mの吸引パイプを介してTS-1型ターボ・ディスク・スタビライザー・ユニットが連結される構造となっ
ていました。

TS-1の写真
TS-1
TURBO DISC STABILIZER UNIT ¥50, 000

「ター ボ・ディスク・スタビライザー・システム」は,レコードの回転動作中に,つねに一定の吸引力が
働き続ける常時吸引方式が採用されていました。この方式は,レコード原盤のカッティングレースで
常識となっているスタビライザー方式と同じ原理で,グループにソフトメーカーを持っていたビクターら
しさを感じたものでした。スタビライザーの吸着力も,ディスクを吸着し振動抑圧の効果が得られるに
必要十分な4kg相当(70mmAq)を満足する力に設定され,常時弱い吸着力でディスクを傷めずに
吸着するというシステムとなっていました。

異種金属複合ターンテーブル

ターンテーブルは,アルミダイキャストの本体に2重の亜鉛リングを付加した異種金属複合構造で,不
要共振を抑制し,400kg・cm2の慣性質量をもつ重量級のターンテーブルでした。
モーターは,コッキングのない低振動のコアレスDCサーボモーターで,2.5kg-cmのトルクを持ったも
ので,1.0秒以内(
33・1/3rpm時)の起動特性を実現していました。シャフトは直径14mmで,重量級
のターンテーブルをしっかりと支える構造となっていました。
回転の制御には,FG(周波数発電機)検出のクォーツロック方式が採用されていました。クォーツロック
の安定度を従来比約30倍(同社比)に高めたダブル・サーボ・クォーツ回路とシンセサイザー方式の採
用で,0.1%ステップ±9.9%までの精密なピッチ・コントロールも可能となっていました。また,回転精
度の高い両方向サーボを利用した電子ブレーキにより1.0秒以内(33・1/3rpm時)のクィック・ストップ
も実現していました。

以上のように,TT-801は,非常に高度な内容を持った高性能のターンテーブルでしたが,ブランド力ゆ
えか,大きな話題になることはありませんでした。そして,ここで開発された技術が上記のQL-A95にし
っかりと生きていたことは間違いないでしょう。


以下に,当時のカタログの内容の一部をご紹介します。


ターボ・ディスク・スタビライザー
・システムを加えて
無共振・無振動の究極に迫る
ターンテーブル・ユニットです。

◎カッティング・レースと同じ原理の
 常時吸引方式ディスク・スタビライザー
 TT-801型プラスTS-1型。
◎4kg相当の空気圧で
 レコードとターンテーブル・マットの
 振動をシャットオフ。
◎新開発のコアレスDCモーターや
 ダブル・サーボのクォーツ・シンセサイザー
 方式等で,単体としても最高水準の
 性能を追求したTT-801型。
◎ターンテーブルは異種金属複合構造の
 無共振化重量級。
  ●回転精度の高い両方向サーボを利用した
   電子ブレーキのクィック・ストップ。
  ●電子表示管デジトロンによる明快なスピード
   およびクォーツロック・インジケーター。


●TT-801型仕様●

駆動方式
FG検出クォーツロック・コアレスDCサーボ・ダイレクトドライブ
ワウ・フラッター
0.01%(WRMS/回転部)
SN比
80dB(DIN-B)
起動特性
1.0sec以内(33・1/3rpm時)
クィック・ストップ特性
1.0sec以内(33・1/3rpm時)
負荷特性
0%(針圧200g)
ドリフト
0.0001%/H,0.00003%/℃
回転数偏差
0.002%以内
寸法/重量
356W×137H×356Dmm/8.5kg
取付孔寸法
直径281mm正円形



●TS-1型仕様●

型式
ターボ・ディスク・スタビライザー
送風機形式
2段ターボ方式
電動機
2極単相コンデンサー起動,誘導電動機
最大風圧
70mmAq
用途
TT-801型ターンテーブル・ユニットに組み合わせ使用
電源電圧
AC100V
電源周波数
50/60Hz
消費電力
29W/50Hz,37W/60Hz
寸法/重量
193H×283W×373Dmm/10.0kg



※本ページに掲載したQL-A95,TT-801,TS-1の写真・仕様表等
 は1981年1月,11月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本
 ビクター株式会社に著作権
があります。したがってこれらの写真等を
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