PIONEER S-1000TWIN
VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM ¥220,000 
1989年にパイオニアが発売したスピーカーシステム。S-55TWINに始まった「バーチカル・ツイン方式」の
スピーカーシステムの集大成ともいえる高級機で,TADブランドに代表されるプロ用スタジオモニターや
EXCLUSIVE S5の開発などで培われた技術も投入されて練り上げが行われ,パイオニアブランドの同
方式スピーカーの中でも当時の最上級機でした。

S-1000TWINの最大の特徴は,トゥイーターを中心に2つのウーファーを上下に配置し,仮想同軸効果を
得る「バーチカル・ツイン方式」の採用でしたが,この方式は,うまく設計しないとトゥイーターとウーファーの
音の波が干渉し合い音が濁るということにもなりかねないといわれています。S-1000TWINでは,新たに
音の波がどのように拡がって到達するかを科学的に解明する「波面コントロール技術」を導入し,複数の音
源をもつS-1000TWINから1個の石を落としたときの波紋の広がりのように,音の波面をコントロールして
いました。具体的には,(1)ウーファーとトゥイーターのエネルギータイムを時間軸でコントロールする (2)
ウーファーとトゥイーターの指向性をコントロールする (3)ネットワークなどの電気的な位相をコントロールす
る (4)バッフル形状により,波面解析をコントロールする などの積み重ねで優れた音場感と音像表現を
実現していました。

トゥイーターには,EXCLUSIVE S5と同じ材質のイタヤカエデ積層削り出しによるW・F(ウェイブ・フロント)
ダイレクターと称する,フロントホーンを採用し,ウーファーとの位置関係を調整する時間軸のコントロールと
ホーン形状による指向性のコントロールを行い,リスナーの聴取位置における波面のウーファーとの一致を
図っていました。
振動板には,炭素原子を2次元的に配列させた結晶構造を持つグラファイ トをバインダーやベース材をいっ
さい用いずに成形しセラミック化したカーボン純度99.99%のセラミックグラファイト振動板を搭載し,強力
なアルニコマグネットの磁気回路で駆動していました。

S-1000TWINのトゥイーター

ウーファーにも,アルニコマグネットの強力磁気回路を搭載していました。振動板には,TADユニットにも用
いられているパルプコーンに高分子フィルムをラミネートした20cmコーン型を使用し,センターキャップには
S5と同様に,センターキャップ部表面のサーフェスノイズを低減し,トゥイーターとの音のつながりをよくする
CRA(Cap Resonance Absorber)が施されていました。アルミの2.6倍という比重を持つ高剛性亜鉛
ダイキャストフレームが不要な共振・振動を抑えて高性能なウーファーユニットの純度の高い再生音を実現し
ていました。

S-1000TWINのウーファー部アップ

ウーファ,トゥイーターともに,エンクロージャー内部のインナーバッフルにしっかり固定され,フロントバッフル
の不要な共振を低減した「ミッドシップマウント」が採用され,天板の不要振動を抑えるフローティングトップ,
フレームに伝わる不要振動を抑えるシールドフレームなど,システム全体にわたる無共振・無振動化が追
求されていました。ネットワークは,ウーファー回路とトゥイーター回路を独立させ,特に,トゥイーターとの接
続にはカシメ圧着配線によりハンダを排してダイレクト化されていました。また,各素子のマウントも防振処理
が施され,クロストークを徹底して抑えていました。背面のターミナルはバイワイヤリング対応の大型のものが
搭載されていました。

エンクロージャーはウォールナットのリアルウッドが用いられ,オイルステン仕上げが施されて,天然木ならで
はの風格あるエンクロージャーでした。前面のサランネットはバッフル面とフラットサーフェス化が図られ,音の
チューニングもサランネットを付けた状態で行われ,すっきりしたシックなフォルムを実現していました。バスレ
フ型のエンクロージャーに設けられたダクトは中域の不要輻射を避けた背面ダクトで,開口部には吸音フェルト
が付けられ,開口部の干渉を抑えていました。底部にはフローリングなどの床にはフェルトを,絨毯などの床に
はスパイク止めができるスパイクが付属していました。

以上のように,S-1000TWINは,「バーチカルツイン」方式のスピーカーシステムの集大成として,洗練され
たデザインと歪み感の少ない音場感の豊かな美しい音を実現していました。

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新しい音楽空間と,音像の質感表現
バーチカルツイン・システムに,波面コントロール技術を駆使。
壮大な音場と,濃密な音像が現れる。

 
◎波面コントロール技術を導入したバーチカルツイン。
 壮大な音場と,濃密な音像を実現。
◎トゥイーターは,波面コントロール技術を投入した
 W・F(ウェイブ・フロント)ダイレクター採用。
◎アルニコ・マグネット,亜鉛ダイキャストフレーム
 採用の20cmコーンウーファー。
◎フルミッドシップマウント採用。
 システム全体にわたって無共振化を追求しました。
◎各ユニット専用の回路構成,
 防振処理を施した波面コントロールネットワーク。
◎天然銘木によるエンクロージャー。
 サランネット付で,音もデザインも仕上げ。
◎中音域の不要振動を抑える背面ダクト。

S-1000TWINAの写真
PIONEER S-1000TWIN
VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM ¥240,000
1991年にS-1000TWINはS-1000TWINAへとモデルチェンジされました。ユニットをはじめいくつかの
改良を施され,より内容を強化して登場しました。

ウーファーには,新開発のALCC振動板が採用されていました。ALCCは「アルギン酸コンポジットコーン」
の略で,高剛性物質(炭素繊維,アラミド繊維など)とパルプとの結合を強めるために,海藻から抽出した
アルギン酸を糸状に繊維化したアルギン酸繊維を混抄したもので,振動板の剛性を高め,軽量な繊維であ
るため高い内部損失も得ることができていました。さらに,S-1000TWINAでは,高剛性物質として振動吸
収性に優れた高強力ポリアレエート繊維が混入され,ウーファー振動板の反応速度をより高めていました。
また,ウーファーのCRAには,新たにエクセーヌが用いられていました。

ウーファー及び,トゥイーターのボイスコイルにはリボン線によるエッジワイズ巻きが採用され,磁気キャップ
内のコイルの占有率が高められ,駆動力の10%アップを果たしていました。また,ウーファーのボイスコイル
には銅のショートリングが追加され,磁性材の磁化による歪みを防止する対策が施されていました。

エンクロージャーでは,フロントバッフル面に新たに人工皮革処理が施され,質感の向上,音質面でのS/N
感の向上が図られていました。

S-1000TWINAの内部
以上のように,S-1000TWINAはウーファーを中心に各部に改良が施され,より充実した内容をもち,音質的にも響きの
厚さとダイナミックさを高めていました。
 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



第2幕【かくも新しき音楽空間】
   立体的にみがく。ハイスピードなバーチカルツイン。
 

低域の解像力を高め,
見通しのよい音場感を実現。
ハイスピードな新開発ALCC振動板ウーファー搭載。
より磨かれ,完成度を高めたS-1000TWINAが,新時代をひらく。

 
◎バイオテクノロジーを応用した
 新開発ALCC振動板ウーファー搭載。
◎OFCエッジワイズ巻きボイスコイルを
 採用。駆動力を向上しました。
◎銅ショートリングによる低歪磁気回路。
 高磁束密度のアルニコマグネット採用。
◎サーフェスノイズを低減するエクセーヌ
 CRAを採用。
◎不要振動を低減する亜鉛ダイキャスト
 フレーム採用。
◎OFCエッジワイズ巻きボイスコイルなど
 質的向上をはかったトゥイーター。
◎イタヤカエデ積層削り出しのW・F
 (ウェイブ・フロント)ダイレクター採用。
◎S/N感を向上させます。
 バッフル面に人工皮革処理。
◎波面コントロール技術を導入した
 バーチカルツイン・システム。
◎フルミッドシップマウント採用。
◎天然銘木によるエンクロージャー。
 
●主な仕様●

 

  S-1000TWIN S-1000TWIN
型式 位相反転式トールボーイ・フロア型
スピーカー ウーファー:20cmコーン型×2
トゥイーター:3cmドーム型+W・Fダイレクター
インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 28〜20,000Hz 28〜40,000Hz
出力音圧レベル 91dB/W(1m) 91.5dB/W(1m)
最大入力 180W(EIAJ)
クロスオーバー周波数 1,800Hz
外形寸法 276W×1060H×407Dmm
重量 44.0kg
※本ページに掲載したS-1000TWIN,S-1000TWINAの
写真・仕様表等は1989年9月,1992年11月のPIONEER
のカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
 

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