SB-RX70の写真
Technics SB-RX70
COAXIAL FLAT SPEAKER SYSTEM
           ¥65,000(ネット付・1本)
1988年にテクニクスが発売した同軸型平面スピーカーシステム。同社が追い求めてきた位相の直線性(リニアフェイズ)の
思想の延長線上にあり,最も純化した形と考えられ,リニアフェイズの面では最も理想に近い形のシステムでした。平面スピ
ーカーで同軸型を実現したシステムとしては,パイオニアのS-F1がありますが,SB-RX70はそれを普及価格帯で実現し,
一般向けのシステムとして発売された手が届く名機でした。

ウーファーは,24cm口径平面振動板を使用していました。振動板のスキン材には音速が速く比重の軽いピュアマイカを採用
し,4kHzにもおよぶピストンモーション帯域を実現していました。磁気回路は,メインマグネットに直径145mmのストロンチウ
ムフェライトを採用し,さらに直径120mmのバリウムフェライトのキャンセルマグネットを搭載してAV対応の防磁設計になって
いました。マグネット内周には銅リングを装着して低歪化を図っていました。ボイスコイルは,直径60mmの大口径で,耐熱素
材を使用して,システムとして200Wの高耐入力を実現していました。エッジには,直線性に優れ素材そのものの発生音が
少ないラバーエッジを採用していました。

トゥイーターには,曲げ剛性をより高めるために,コア材にピュアマイカ,スキン材にダイヤモンドコートマイカを採用してサンドイ
ッチ構造とした平面振動板を搭載していました。軽量・高剛性の素材ピュアマイカにダイヤモンドをプラズマ法によりコーティン
グすることにより,曲げ剛性で60%,内部損失で50%も特性が向上し,これにより,50kHzという高域限界を実現していまし
た。磁気回路には,サマリウムコバルトやアルニコをはるかにしのぐ磁気エネルギーを持つネオジウムマグネットを採用してい
ました。磁気キャップ内には,磁性流体を充填し,さらに界磁部に放熱板を設けることで優れたパワーリニアリティと高耐入力
を実現していました。
 

SB-RX70の同軸平面ユニット
 
SB-RX70では,振動板以外からの不要な音の放射を防ぐために「サイレント・テクノロジー」と称して,様々な対策がとられ
ていました。振動板の振動がフレームに伝えられて有害な音となって外部に放射されることを防ぐために,フレームの露出
部分を極力少なくする「シールデッドフレーム」を採用していました。これは,ダイカストフレーム前面をラバーガスケットで覆
い,スピーカーユニットをエンクロージャー内部から取り付けて,取り付けビスからの放射もシャットアウトしたものでした。
また,バッフル板からの不要な放射を防ぐために,「セパレートバッフル」構造として,バッフル板を分断して振動板の振動
の伝わるバッフル板の範囲を限定し,さらに表面に粘弾性物を貼り付けて不要輻射を大幅に低減していました。
 
SB-RX70の内部
ネットワーク回路など,システム内部の配線材には,防振被覆を被せたLC-OFCクラス1ケーブルを採用していました。
チョークコイルには,コアに大型低歪フェライト材を使用し,太径LC-OFCクラス1ケーブルを巻いたうえ,効果ワニスで
防振処理を施したものを使用していました。コンデンサは音響用大型電解タイプ,高品位ポリエステルフィルムタイプを
用途に応じて使い分けて搭載し,ネットワークボードには,防振材を介してエンクロージャーに取り付けられていました。
ネットワーク素子は圧着スリーブを用いて直接結線することで高純度伝送を実現し,ウーハー用回路とトゥイーター用回
路を独立配置して相互の干渉を排除していました。

エンクロージャー端での回折による悪影響を防ぐために,4方向に曲面を持たせたラウンドバッフルを採用し,エンクロ
ージャーは,前板厚30mm,その他25mmというクラス最大の板厚を持たせ,内部に仕切り板上の補強板を設けてエ
ンクロージャーの不要な振動を防ぐ「クロス・ブリッジド・エンクロージャー」構造とあいまって強固なエンクロージャーを
構成していました。バスレフポートにはアルミパイプを採用し,不要な振動を抑制し,ポート開口部に整流器を設置して
風切り音の発生を防止するなど,不要な反射・振動などを徹底して抑える設計でした。スピーカー端子は,大型金メッ
キOFC端子を,バイワイヤリング接続に対応して4端子搭載していました。

以上のように,SB-RX70は,クラスを超えた贅沢な設計で,徹底して不要な振動を抑え,位相を整えて再生音の純
化を図った,一種の理想を追求した設計が何か凄みを感じさせました。歪み感を感じさせないすっきりして定位のいい
音とあわせ,テクニクスの「リニアフェイズ」の集大成を思わせる力作でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




 
不要な振動・輻射音を抑制した
高SN再生。
理想の点音源に近づいた
同軸平面スピーカ,RX70。
◎サイレント・テクノロジーが生きる
  ピュアマイカ採用の同軸2ウェイ
◎ピュアマイカスキン材に採用した
  外径24cm平面振動板ウーハ
◎透明感を高め,音像定位を明快にする
  サイレント・テクノロジー
 ◆シールデッドフレーム
 ◆セパレート・バッフル
◎厳選したオーディオパーツ採用の
  低歪・高性能ネットワーク
◎音の回折効果を低減する
  四方向ラウンドエンクロージャー
●SB-RX70の主な定格●



 
 
 

型式 2ウェイ同軸平面スピーカ(バスレフ型)
使用スピーカ 外径24cm平面形ウーハ
外径2.7cm平面形ツィータ
許容入力 200W(MUSIC)
100W(DIN)
出力音圧レベル 86dB/W/m
インピーダンス 6Ω
クロスオーバー周波数 2kHz
再生周波数帯域 30Hz〜50kHz(−16dB)
外形寸法 幅300×高さ480×奥行280mm
重量 20kg(1本)
※本ページに掲載したSB−RX70の写真・仕様表等は1989年4月のテクニクス
 のカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式会社に著作権があります。し
 たがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられて
 いますので,ご注意ください。
 

★メニューにもどる       
 
      
★スピーカーのページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp