DENON SC−R99
3WAY・3SPEAKER SYSTEM ¥168,000(1台)
デンオンが1987年に発売した重量級ブックシェルフ型スピーカー。ボロン,カーボンなどの最先端の新素材を
使用した強力なユニットと木材とセラミックとの異種素材の組み合わせによる高剛性重量級エンクロージャーを
組み合わせ,20万円以上と言われてもおかしくないほどの物量が投入されていたデンオンの力作だったと思
っています。(恐らくコストぎりぎりだったのではないかと思います。)このSC−R99の最大の特徴は,ダブルD.A.S構造の強力なエンクロージャーでした。これは,通常のパーチ
クルボード製のエンクロージャー内部にポーラスセラミックという多孔質のコンクリート状の重い材質を貼りつけ
た構造でした。エンクロージャーの剛性を大きく高め,不要な振動を防ぐだけでなく,形状をテーパー状にする
ことで,内部の定在波を分散し,多孔質であることを利用して定在波の吸収さえ行うというものでした。このよ
うな木材とセラミックの複合構造により,フロントバッフルは何と厚さ70mmにも達し,スピーカーユニットをしっ
かり支える強力なエンクロージャーとなっていました。このため,システムの総重量は1本62kgと,同じクラ
スの大きさのスピーカーシステムを大きく超えるものとなりました。
ウーファーユニットは,ボロン長繊維とクロスカーボンを組み合わせた32cm口径の強力なユニットでした。ボロ
ンとカーボンの高弾性・高剛性を生かし,異種素材の組み合わせにより内部損失を確保するという巧妙な構造
になっていました。ウーファーユニットは,厚さ30mmのポーラスセラミックを介して底部のポーラスセラミックに
結合され,フロントバッフルの不要な振動を抑え,ウーファーユニットを強固に支える構造となっていました。
(R.M.M構造とデンオンは呼んでいました。)スコーカーユニットは,チタン素材をベースにボロン化合物とチタン酸化物をプラズマジェット熔射して作り上げた
65mmドーム型振動板,ツイーターは,ジュラルミン箔をベースにボロン化合物とチタン酸化物をプラズマ融着
25mmのドーム型振動板でした。ボロン化合物とチタン酸化物を金属箔に融着させることにより,単なる金属
振動板に比べ剛性が3〜4倍に高まり,内部損失が約10倍に高まっているそうです。スコーカーユニットは,
ポーラスセラミックによるサブバッフルに強固に支えられ,ツイーターユニットは,バッフル板に埋め込まれた
気密構造マウントにより振動板の振動がストレートに音に反映するように工夫されていました。(R.M.M構造)このように,SC−R99は,新素材を積極的に取り入れ,高剛性を追求した非常に日本的なアプローチで作
り上げられた高性能なスピーカーシステムでした。高剛性の新素材の固まりだけに,カチカチの音を想像し
ますが,実際には,当時聴いた印象では,非常に静かな感じの音がするスピーカーだったことを覚えていま
す。不要な共振が抑えられていたためにかえってこのような派手さのない音だったのかもしれません。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
重低域の一音まで見えてくる
◎音の”粒子”がくっきり見える。
2つのエンクロージャー技術が
音楽のディティールをクリアにした。
●70mm超剛性バッフルがウーハーを強力にサポート
●”ダブルD.A.S構造”が定在波を一挙に吸収・排除
●ユニットの振動板だけを鳴らす”R.M.M構造”◎低域の”音のフォルム”を聴く。
画期的ボロン長繊維採用の32cm新開発ウーハー
●ボロン長繊維とクロスカーボンを複合させた高剛性
ボロンファイバー振動板◎中域の”音のリアリティ”を聴く。
ニューα-ボロン・直径65mmドーム新開発スコーカー◎高域の”音のセンシティビティ”を聴く。
ニューα-ボロン・直径25mmドーム新開発ツイーター
●SC−R99の主な仕様●
形式 | 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ形 |
スピーカー構成 | ウーハー 32cmコーン形×1
スコーカー 6.5cmハードドーム型×1 ツイーター 2.5cmハードドーム型×1 |
入力インピーダンス | 6Ω |
最大入力(EIAJ) | 200W |
再生周波数帯域 | 25Hz〜50kHz |
平均出力音圧レベル | 91dB(1m・1W) |
クロスオーバー周波数 | 500Hz,1kHz |
キャビネット | ジェラルドエボニー木目調仕上げ
針葉樹高密度パーチクルボード ダブルD.A.S構造 |
外形寸法 | W415×H715×D417mm |
重量 | 62kg |
※本ページに掲載したSC-R99の写真,仕様表等は1987年2月のDENONの
カタログより抜粋したもので,日本コロムビア株式会社に著作権があります。した
がって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられてい
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