SL-P1200の写真
Technics SL−P1200
Compact Disc Player ¥160,000
テクニクスが1986年8月に発売したCDプレーヤーです。業務用機のような思い切ったデザインと
高機能が人気を呼びました。従来のカセットデッキかチューナーのようなデザインから脱し,アナロ
グプレーヤーのように最上段に設置することを要求するそのデザインは,CDプレーヤーがシステム
の中心の座に着いたことを高らかに宣言したと感じたものでした。精密感あふれるデザインに込め
られたその中身も高性能なもので,テクニクスの高度なオーディオ技術を投入した優れものでした。

SL−P1200は,オーディオ回路にテクニクス自慢の「classAA方式」を導入していました。テクニ
クスの「classAA方式」は,アメリカのスレッショルドが開発した「STASIS方式」によく似た方式で
電圧制御と電流供給を2つの異なるアンプが分担し,電圧制御アンプは事実上無負荷の状態で動
作し,変化する接続負荷に対してもアンプ全体として強力なドライブ能力と正確な波形伝送が得ら
れる方式ということでした。SL−P1200では,「classAA回路」をサンプルホールド回路とバッファ
アンプに採用し,安定した波形伝送を実現していました。                        

D/AコンバーターはL/R独立のデュアルコンバーターで,スイッチングを不要とし,L/Rの厳密
な同時変換を図っていました。さらに,サンプルホールド回路に「classAA回路」を導入することに
よりD/Aコンバーター出力を電流モードでダイレクトに取り出して,高速な伝送を可能にし,他の回
路からの干渉を受けやすいサンプルホールドコンデンサーのホールドタイムを大幅に短縮し(同社比
1/3)SN比が大幅に改善されたということでした。デジタルフィルタは新開発の96次デジタルフィ
ルタに7次の高精度アナログフィルターを組み合わせたもので,「スパー・クリーン・デジタルフィルタ」
と称していました。

オーディオ回路のパーツ類は,銅箔スチロールコンデンサ,ファインセラミック微粒子含有のオーディ
オ用電解コンデンサなど,高品質なものが採用されていました。また,上面パネルで目立っている可
変出力用のフェーダーには,鏡面仕上げの抵抗体と多接点ブラシを用いた構造のPCLN(Pure Co
-nductive Low Noise)抵抗体を使用し,高音質の可変出力を実現していました。          

SL−P1200では,それまでのテクニクスのCDプレーヤーに比べ,振動・共振対策も充実していま
した,キャビネットのベース部には,金属シャーシベース,特殊ダンピングゴム,TNRC(テクニクス
ノンレゾナンズ・コンパウンド)の異なる3種類の素材からなる3層のベースを採用し,高い強度と十
分な重量を確保し,振動エネルギーを熱エネルギーに変換するTNRCの働きにより,優れた制振効
果も持たせていました。キャビネット全体も強固な精密亜鉛ダイキャストの一体成形構造を採用し3層
ベースと一体化して高い防振性能を発揮させていました。脚部は,4つの大型インシュレーターから成
り,そのうえで,光学デッキ部を本体からフロ−ティングするダブルインシュレーター構成としていまし
た。また,振動源となりやすい電源トランスもインシュレーターでフローティングさせた構造になってい
ました。

SL-P1200の内部構造

デジタル回路系やサーボ系からのオーディオ回路への雑音混入を防ぐために,オーディオ回路部は
独立した基板にブロック化されて搭載され,電源トランスもデジタル系とオーディオ系にそれぞれ専用
のトランスを搭載した2トランス方式になっていました。オーディオ系のトランスは,Lch,Rch,ヘッド
ホンアンプそれぞれ別巻線とし,専用の整流回路,安定化電源を装備して相互の干渉を徹底的に排
除していました。

SL−P1200の多機能性はプロ機の機能を受け継いだ群を抜いたものでした。サーチダイヤルが装備
され,1回転30秒と1秒の2スピードで頭出しができました。特に,SLOW側では1/25秒単位の頭出
しが可能になっていました。ピックアップの位置を1トラック単位(約0.13秒)でロックできる機能や,音
楽が始まる位置をデジタル的に検出してスタンバイし,0.3秒以内に音楽をスタートさせる機能,0.1秒
単位の時間指定での頭出し機能など,すぐれた機能を数々搭載していました。ディスプレー部も9桁表示
と20曲のマトリックス表示で,0.1秒単位での時間表示,デジタルアッテネーターの減衰量dB表示など
充実した表示機能を持っていました。

このように,SL−P1200は,当時(現在でも)の他のCDプレーヤーを圧倒する多機能を搭載し,プロ機
を思わせるデザインと安定した性能で高い評価を得ました。音質もしっかりした筐体に支えられた透明感
のあるしっかりした音でした。当時のCDプレーヤの中で,非常に印象的な1台でした。
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 




 
 

心たかぶる高音質,操作性
CDマスター,新登場。
◎ピュアAクラスのオーディオ回路を実現。  
  テクニクス独自のclassAA方式。    
◎無負荷状態で電圧制御。              
  classAAサンプルホールド回路     
◎接続機器の複雑な負荷にも,余裕で対応。
  classAAバッファアンプ。         
◎L/R独立同時変換方式。           
  デュアルD/Aコンバーター+classAA。
◎演算精度をいちだんと高めた新LSI採用。 
  スーパー・クリーン・デジタルフィルタ。  
◎ひとつひとつ検討を重ねて厳選使用。   
  高品質オーディオパーツ。         
◎メインアンプを直接駆動できる。       
 PCLN高性能フェーダ。          
◎デジタル系からのノイズ流入を防ぐ      
  シリアル伝送方式。             
◎信号検出能力を約40倍(当社比)にアップ 
  FF-1レーザーピックアップ。       
◎あらゆる振動をシャットアウト。        
  徹底した無共振,無振動対策。     
◎音圧振動を排除し,高い制動効果を獲得  
  異種素材による3層構造ベース。    
◎床振動を遮断する2段階構成。        
  ダブルインシュレーター方式。     
◎回路間のノイズ干渉を徹底排除。       
  完全独立電源回路。           
◎高度な使いこなしを可能にする        
  豊富なアクセス機能。          
◎デジタルアッテネータ機能装備。        
  10キー付きワイヤレスリモコン。   
◎豊富な情報をわかりやすく表示。        
◎ミュージックマトリックス・ディスプレイ。  

 
 
 

●SPECIFICATION●
 

●オーディオ●


チャンネル数 2チャンネル(ステレオ)
出力電圧 2V(0dB,EIAJ)
周波数特性 4Hz〜20,000Hz±0.1dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ 96dB以上(EIAJ)
SN比 106dB以上(EIAJ)
全高調波歪率 0.0025%以下(1kHz,0dB,EIAJ)
高調波歪率 0.0012%以下(1kHz,0dB)
チャンネルセパレーション 106dB以上(1kHz,EIAJ)
ワウ・フラッタ 測定限界以下(EIAJ)
ローパス・フィルタ スーパークリーン・デジタルフィルタ

 

●信号フォーマット●


標本化周波数 44.1kHz
誤り訂正方式 テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリズム
復号化 16ビット直線

●ピックアップ他●


ピックアップ方式 FF-1(ファイン・フォーカス・1ビーム)
光源 半導体レーザー
波長 780nm
トラバース ハイスピード・リニアアクセスシステム
スピンドル ブラシレスD.D.

●総合●


電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 20W
ヘッドホン出力レベル 100mW/32Ω(可変)
外形寸法 幅430×奥行380×高さ168mm
重量 14.5kg
※本ページに掲載したSL−P1200の写真・仕様表等は1986年7月の
 Technicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式会社に著作
 権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をするこ
 とは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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