SP-G300Uの写真 
SANSUI SP-G300U
FLOOR TYPE 3WAY SPEAKER SYSTEM
                    ¥145,000(1本)
サンスイが,1979年に発売した大型の3ウェイフロア形システム。ソニーのG7のライバルともいえるシステム
です。1976年頃,ソニーのG7に対抗してか,各社から1本13万円クラスの大型スピーカーが次々に登場しま
した。いずれもすごい作りの豪華なエンクロージャーを誇り,赤字覚悟の名機揃いだったと思います。サンスイ
のSP-G300(¥130,000)もその中の1台でした。このSP-G300Uは,その改良モデルで,当時JBLの
輸入代理店だったサンスイらしく,見事な木工技術による美しいエンクロージャーと,伸びやかなアメリカンサウ
ンドで高い評価を得ました。 

全体のシステム構成は,3ウェイという形をとっていますが,ウーファは30.5cm口径のパルプコーンウーファー
を2基搭載したパラレル駆動になっていて,4スピーカーという構成になっていました。このクラスで最大級となる
156mmφ×20tのフェライトマグネットを使用した強力磁気回路で駆動され,65mmφのロングボイスコイルと
の組み合わせにより,300Wの耐入力特性を実現していました。エッジは,発泡樹脂を熱成型したアップロール
タイプで,高いリニアリティを実現していました。フレームは,アルミダイカスト製の堅牢なもので,ダンプ材による
デッドニングとあわせ,共振を抑え,ユニット間の干渉を防いでいました。また,上下に並んだウーファーは同一
のユニットではなく,単純なパラレル駆動ではありませんでした。下側のウーファーは,振動系の質量が重く低
域共振周波数が低い(23Hz)タイプのユニットで,本来のウーファーとして低域を受け持ち,上側のウーファー
は,やや振動系質量が軽く,低域共振周波数が高い(33Hz)タイプのユニットで,ミッドレンジに近い働きをして
いました。2個の性質の違うウーファーをパラレル駆動して広い帯域を無理なくカバーしようとする巧妙な方式で
した。より大口径のウーファー1本と同じ実効的なコーン面積が得られ,低域のレスポンスも得やすいということ
で,現在の高級スピーカーにも見られる方式です。

SP-G300Uのウーファーとトゥイーター
                                                 
トゥイーターは,7cm口径のショートホーン形ユニットを搭載していました。ダイアフラムは厚さ50μの硬度の高
いアメリカ製ジュラルミンを成形歪みの少ない空気圧成型法により成形したもので,120mmφの強力なフェライ
トマグネットと45mmφのエッジワイズ巻ボイスコイルで駆動されていました。ホーン部は,アルミ合金製のエクス
ポーネンシャルホーン(断面が、円形若しくは楕円形のホーン)で,ダイアフラムの前には位相特性と指向性を改
善する19個の孔による多孔式イコライザーが設けられていました。さらに,指向性を広げるためにスラントタイプ
の音響レンズが前面に設けられ,外観はまさにJBLを思わせるものでした。

SP-G300Uのスーパートゥイータースーパートゥイーターの構造図

初代SP-G300との違いは,6.5cmホーン型スーパートゥイーターの搭載でした。写真のバッフル面左上部
に見える細いスリット状の開口部がスーパートゥイーターでデザイン的にも,まるでJBLの4343シリーズのト
ゥイーターを思わせるものでした。このスーパートゥイーターは,リング状のダイアフラムを持ち,それを2点支
持することで振動中心明確にし,イコライザーとの距離を狭めた構造で,縦型のスリットを入れることで指向性
を改善していました。このスーパートゥイーターの搭載により高域のレンジが拡大され,よりワイドレンジ化が
図られていました。 

エンクロージャーは,ウォールナット仕上げの豪華なもので,バッフル板には振動減衰特性の良い米松合板を
側板には音響用に開発された20mm厚高密度パーティクルボードを,コーナー部にはウォールナットのムク板
を用いたものでした。下部には,移動に便利なようにストッパー付きのキャスターが付いていました。そのデザ
イン,仕上げなどまさに日本版JBLといった感じで,JBLを思わせる伸びやかな音に,日本的繊細さが加わっ
た再生音は,好評を得ました。そのエンクロージャーの作り,ユニットのコストなどを考えても,この値段では儲
からなかったのではないかと思います。今作れば,何十万円になるでしょう。この時代を代表する印象的な名
機だったと思います。

    

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


 

小音量再生時にスポットをあてたフロア形。
ダイナミックな躍動感と
デリケートな表現力を発揮します。

 
◎量感豊かに引き締まった
  30.5cmパラドライブ式ダブルウーファー
◎音響レンズを装備し指向特性に優れた
  ホーン型ツイーター
◎繊細なニュアンスを逃さず表現する
  リングラジエター・ホーン型スーパーツイーター
◎各ユニットを絶妙のバランスで再現する
  低歪率ネットワーク
◎使いやすい前面操作アッテネーター
◎移動に便利なキャスター付


SP-G300の写真
SANSUI  SP-G300
FLOOR TYPE HIGH-POWER SPEAKER SYSTEM
                          ¥130,000(1本)
SP-G300の初代は,1976年に発売されました。上記したように,この当時各社から13万円台の
強力な重量級モデルが発売され,各社の意地の張り合いという状況を呈していました。その中で
このSP-G300は,サンスイらしくJBLライクなデザインとユニットの搭載で,個性を発揮し,スケール
感の中に繊細さをもった音は評価されていました。その中身を考えると,このSP-G300もコスト的に
赤字覚悟であったのではと想像してしまいます。


 

●定格●

  SP-G300 SP-G300U
型式 2ウェイ3スピーカー 3ウェイ4スピーカー
使用ユニット 30.5cmコーン型ウーファー×2
7cmホーン型ツイーター
30.5cmコーン型ウーファー×2
7cmホーン型ツイーター
6.5cmホーン型スーパーツイーター
最大許容入力 300W 300W
インピーダンス 8Ω 8Ω
周波数特性 35〜20,000Hz 30Hz〜25,000Hz
音圧レベル 95dB/W(1m) 95dB/W(1m)
クロスオーバー周波数 1.5kHz 1.5kHz,10kHz
寸法 460W×910H×392Dmm 460W×910H×392Dmm
重量 43.3kg 45.3kg
※本ページに掲載したSP-G300,SP-G300Uの写真・仕様表等は
 1976年11月,1979年6月の
SANSUIのカタログより抜粋したもの
 で,山水電気株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写
 真等を無断で転載,引用等をすることは
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