SU-MA10の写真
Panasonic SU-MA10
DIGITAL STRAIGHT AMPLIFIER ¥107,000

1989年,松下電器産業がテクニクスブランドではなくパナソニックブランドで出した,D/Aコンバーター内蔵型
のプリメインアンプ。「テクニクス」というブランド名は,1965年に松下電器が当初スピーカーのために作った高
級品専門のブランド名ということだったのですが,やがて松下のオーディオ機器全体のブランド名になりました。
しかし,このころセパレートアンプや大型スピーカーなどの高級機に「テクニクス」,それ以外には「パナソニック」
と使い分けるようになりました。ブランド名はともかく,このSU-MA10は,D/Aコンバーターなしでも超強力な
内容を持ち,価格を超えた実力派のアンプでした。

基本的には,SE-M100の後継機ともいえるアンプで,D/Aコンバーターとアンプ部の関係を見直して開発され
た「D.D.D.(デジタル・ダイレクト・ドライブ)方式」が大きな特徴の一つでした。通常のD/Aコンバーター内蔵型の
プリメインアンプでは,D/Aコンバーターをプリメインアンプにそのままつなぐという形で,D/Aコンバーターからの
出力はアナログ入力信号と同一の信号経路を通ることになっていました。「D.D.D.方式」では,高出力のD/Aコン
バーターを搭載し,その出力をアナログ増幅の経路を全く通さずに電圧増幅1(0dB)のパワーアンプに直接接続す
るというもので,D/Aコンバーターの出力電圧=スピーカー端子電圧というもので,D/Aコンバーター内蔵のメリ
ットを最大限に発揮させようとするものでした。

D/Aコンバーターには,テクニクスがCDプレーヤーで広く採用していたMASH・1ビットDACを搭載していました。
このD/Aコンバーターは,1ビット方式の代表的なもので,PMW(Pulse Width Modulation=パルス幅変調)
とMASH(Multi Stage Noise Shaping=多段ノイズシェイピング)の2つに技術の組み合わせによる方式で
従来のマルチビットタイプに比べて,微少信号時のリニアリティに優れ,回路もシンプルにできるというメリットを持っ
ていました。
D/Aコンバーターのインターフェース部には,ジッター歪みを低減するため,クォーツを用いたVCXO方式を採用し,
あわせて2個のVCOによる2PLL方式も搭載して,デジタル出力機器の発振精度の高さに合わせてインターフェー
スを選択できるようになっていました。D/Aコンバーター部はアンプの底面に配置され,アナログ増幅部と離され,
相互干渉の排除が図られていました。

SU-MA10内部

パワーアンプには,電流ドライブアンプと電圧コントロールアンプをパラレルに接続し,高い安定性と低歪みを実現し
「クラスAA方式」を採用していました。この「クラスAA方式」の高い安定度が,入力電圧と出力電圧を安定して一
致させる0dBパワーアンプを実現していました。電圧増幅度1(0dB)のパワーアンプは文字通り電圧増幅を行わな
いためノイズレベルが低く,パワーアンプ部トータルでS/N比140dBを実現していました。

電源部パーツ

電源部は,SE-M100から大きく強化された強力なものが搭載されていました。電源トランスには,この筐体に搭載
できる限界の大きさとも言えそうな300VAのEIコアトランスがL/R独立で搭載され,通常より約30%低い磁束密
度で使用することで,機械振動と磁気輻射を低く抑え込んでいました。電解コンデンサーには新開発のX-Proツイン
キャパシタを採用していました。これは,+側−側の電源用の2個の電解コンデンサーを銅キャップ付きの樹脂ケース
内に封入し,振動吸収材を詰めることで機械的振動と電磁輻射を低減させるもので,L/Rそれぞれに搭載され,計
4個の高品質電解コンデンサーが一体化されて搭載されていました。

SU-MA10の内部

パワーアンプ部は,L/R独立のツインモノラル構成で,左右対称の構造となっており,さらに,プリアンプ部とデジタ
ル部を厳重にシールドしたT型構成となっていました。これらにより,パワーアンプ部とプリアンプ部・デジタル部,さら
にL/R間の相互干渉が低く抑えられていました。
入・出力端子も左右対称構造で,アナログ入力もラインレベルでTAPE,TUNER,AUX×2の4系統を持っていまし
た。デジタル入力は光×2,同軸×2となっていました。

リア端子部

SU-MA10には,専用の組み合わせを想定したDACレスのCDプレーヤー(トランスポート?)SL-PA10が用意され
ていました。テクニクスのアナログプレーヤーでも使われているTNRC重量ベースと金属シャーシベースによる多層構
造ベース,特殊粘弾制振材による防振対策を施した天板,大型のTNRCインシュレーター,センターメカニズムなど,
無共振・無振動設計と,強力電源部,高品質パーツなど本格的な内容を持ったCDプレーヤーでした。

SL-PA10
Panasonic SL-PA10
CD PLAYER UNIT ¥53,500

SU-MA10+SL-PA10

以上のように,SU-MA10は,価格を超えた充実した内容を持った強力なプリメインアンプでした。強力な電源部と
低ノイズのアンプ部から,力強くかつ繊細で透明な癖のない音を聴かせてくれました。価格を超えた実力派の名機
だと思います。
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

ツインモノラル構成,
D.D.D.採用のデジタルストレートアンプ。

◎”スピーカー直前までデジタル”を実現した
 デジタル・ダイレクト・ドライブ
◎微少信号の再生能力を大幅に向上。
 MASH・1ビットDAC内蔵
◎ジッター歪を改善する,独自の
 デジタルインターフェイスレシーバー
◎厳選されたパーツにより,重低音の
 量感・質感を向上した強力電源部
◎L/Rチャンネル間の相互干渉を
 最小限に抑えるツインモノラル構成
◎アナログ機器とのシステム化もOK。
 4系統のアナログ入力端子装備
 
●SU-MA10の主な定格●
 

■パワーアンプ部■


実効出力 100W+100W(20Hz〜20kHz,THD0.007%,6Ω)
全高調波歪率 0.003%(20Hz〜20kHz,−3dB,8Ω)
ダンピングファクター 110(8Ω),55(4Ω)

■プリアンプ部■


周波数特性 TUNER,AUX1・2,TAPE,DAT
 0.8Hz〜120kHz(+0dB,−3dB)
 20Hz〜20kHz(+0dB,−0.2dB)
入力感度/入力インピーダンス TUNER,AUX1,TAPE,DAT
 150mV/100kΩ
AUX2
 150mV/22kΩ 
SN比 TUNER,AUX1・2,TAPE,DAT 105dB(IHF’66)

■デジタル部■


全高調波歪率 0.005%以下(EIAJ)
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.3dB

■総合■


消費電力 250W
電源 AC100V 50/60Hz
外形寸法 430W×186H×433Dmm
重量 25.0kg
※本ページに掲載したSU-MA10,SL-PA10の写真,仕様表等は1990年6月の
 Panasonic/Technicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律
 で禁じられていますのでご注意ください。
 

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