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Technics SU-V10
STEREO INTEGRATED DC AMPLIFIER ¥198,0001979年にテクニクスが発売した高級プリメインアンプ。同社のプリメインアンプとして,可変バイアス
方式による「ノンスイッチングアンプ」の第1号機でした。この後,テクニクスは,「ノンスイッチングアン
プ」を「ニュークラスA」方式として,V-7,V-5,V-8,V-6,V-3,V-9というようにV-○の型番で次
次と展開していきました。SU-V10のパワー部の回路構成は,FET差動回路とカスコード回路で構成された初段と,定電流負
荷を持つ電圧増幅段,およびSEPP接続したトランジスタまでがAクラス動作するエミッタフォロア出力
の電圧増幅ドライバー回路,そして,シンクロバイアス回路を介したダーリントン接続SEPP出力段とい
う構成になっていました。
テクニクスが,SU-V10で新開発し,搭載した「ニュークラスA」回路は,3段ダーリントン出力段の最
初のSEPP出力段を完全Aクラス動作させ,次段のSEPP段との間に「シンクロバイアス回路」が入っ
たという形になっていました。「シンクロバイアス回路」は,入力信号に同期(シンクロ)して出力段のバ
イアスをコントロールする回路で,プラス側の信号が入ったときは増幅作用を停止しているマイナス側
の出力段に,マイナス側の信号に対してはプラス側の出力段に一定の電流を流すようなバイアスを与
え,出力段をカットオフさせないようにはたらく,いわゆる「可変バイアス」方式となっていました。この結
果,スイッチング歪みが抑えられ,効率よく120W+120W(20Hz〜20kHz,8Ω)の実効出力を,
0.003%という低歪みで実現していました。SU-V10では,メインアンプ部のみでなく,ハイレベル入力(AUX,TUNER,TAPE)からスピーカー
出力までカップリングコンデンサを持たない直流域までの増幅能力を持つDCアンプとなった,「ストレ
ートDC」方式が採用されていました。
DCアンプで問題となる「DCドリフト」に対しては,まず,差動,カレントミラーなどのペア素子の特性を
厳密に揃えて対処し,さらに,「アクティブサーマルサーボ回路」によってDCドリフトを極小に抑えてい
ました。「アクティブサーマルサーボ回路」は,素子間の温度特性のバランスを能動的に補正すること
により,ドリフトの要因そのものを打ち消そうとするもので,回路は,信号系出力をリニアリティ,精度に
すぐれたオペアンプで積分し,その出力が,単にケースが接着されているだけで,電気的には信号系
トラジスタと全く絶縁されている,信号系トランジスタと熱的に結合した発熱用トランジスタを駆動すると
いう構成になっていました。これらの結果,−10℃〜+50℃という広範囲な温度条件下で,0±5mV
以下の極めて高い直流安定度を実現していました。パワートランジスタとして,SLPT(スーパー・リニア・パワートランジスタ)を採用していました。SLPT
は,高周波特性に優れた小信号用トランジスタを200個集積したのに等しいというもので,100MHz
オーダーの高域再生限界と小電流時から大電流時まで極めてリニアに高い増幅率を誇り,超高域に
いたるまでの低歪みを実現していました。DCアンプによるすぐれた低域の再生能力とあわせ,ワイド
レンジなパワーアンプを形成していました。パワー部には,「コンセントレーテッドパワーブロック」が採用されていました。これは,一体の放熱器
ブロックに,電解コンデンサ,電源回路,ドライブ回路,パワートランジスタなど大信号・大電流部をコン
パクトに集中(コンセントレート)したもので,大信号・大電流部が発生する強い磁界が他の信号経路に
影響を与えるのを防ごうとするものでした。
さらに,「コンセントレーテッドパワーブロック」には,信号ラインへの影響を極小にするため,搭載され
た電解コンデンサは,V10で新たに開発された,ローインピーダンス化と電磁波輻射の問題を抑えた
「スーパーオーディオキャパシタ」でした。また,「コンセントレーテッドパワーブロック」下部のブスライン
は,厚く幅広い銅板で,ローインピーダンス化を図り,V10では,さらに3枚の銅板が2層の絶縁層を
サンドイッチする積層構造を採用し,電源ラインのループを,より短いものとしていました。
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パワートランスは,120W+120WのB級動作を余裕を持って上回る大容量のトランスで,コイル
を特殊樹脂の中にフローティングさせて,シールド効果の高いケースの中に収容する構造となって
いました。これらの結果,リーケージフラックスの影響が極めて少なく,トランス自体の機械的振動
(うなり)も少ない,アンプ全体の高SN比動作につながっていました。
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フォノイコライザは,初段にローノイズデュアルFETの差動増幅器が配され,入力段のカップリング
コンデンサを排除したICL構成でとなっていました。RIAA素子には,偏差1%以下のポリプロピレ
ンコンデンサ,金属皮膜抵抗が使用され,RIAA偏差20Hz〜20kHz±0.15dB以下,ひずみ率
0.0015%,SN比90dB(2.5mV)という,低雑音・高精度のイコライザ回路となっていました。
MC入力に対しては,SN比80dB(250μV),歪み率0.005%という,プリ・プリアンプ(ヘッドア
ンプ)がPHONO1に搭載されていました。以上のように,SU-V10は,テクニクスらしく正攻法の設計で物量を投入した高性能プリメインアン
プでした。正攻法の作りは,23kgという重量にも表れていました。歪み感やノイズ,くせの少ない
音を持った正統派高性能アンプでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎スイッチング歪ゼロ・120W+120Wの驚異・・・
シンクロバイアスによるニュークラスA動作
◎20Hz低域限界の波形伝送を極める
ストレートDC方式を採用
◎100kHz低歪再生を実現するために
SLPT(スーパーリニア・パワートランジスタ)を採用
◎20kHz高域限界の波形伝送を極める
コンセントレーテッドパワーブロック採用
◎音質総合評価する3DA解析においても
V10の驚くべき性能が明らかです
◎SN比90dB(2.5m感度)のICLイコライザ回路をはじめ
プリアンプ部でも高忠実度波形伝送を徹底させています
●tuner,aux→SP out総合特性●
実効出力 | 120W+120W(8Ω,20Hz〜20kHz 0.003%)
160W+160W(4Ω,20Hz〜20kHz 0.007%) 120W+120W(8Ω,1kHz 0.0003%)
|
パワーバンド幅 | 5Hz〜100kHz THD0.01% |
TIM | スペアナにて測定不能 |
周波数特性 | streightDC DC〜20kHz+0dB,−0.1dB
streightDC DC〜200kHz+0dB,−3dB via tone 2Hz〜150kHz+0dB,−3dB |
S/N比 | streightDC 110dB |
残留ノイズ | 300μV |
ダンピングファクタ | 100(8Ω) |
負荷インピーダンス | main or remote 4Ω〜16Ω
main+remote 8Ω〜16Ω |
●その他特性●
入力感度/インピーダンス | phono1(MM) 2.5mV/47kΩ
phono2(MM) 2.5mV/47kΩ phono1(MC) 100μV/47Ω tuner,aux,tape 200mV/47kΩ main in 1V/18kΩ |
phono最大許容入力
(1kHz RMS) |
phonoMM 250mV
phonoMC 10mV |
プリ部T.H.D
(20Hz〜20kHz) |
phono(MM)→rec out 0.0015%(5V output)
phono(MC)→rec out 0.005%(5V output) tuner,aux→pre out 0.005%(1V output) |
phono S/N比
(IHF,A) |
phonoMM 90dB
phonoMC(250μV入力) 80dB phonoMC(100μV入力) 72dB |
phono周波数特性 | 20Hz〜20kHz RIAA±0.15dB |
トーンコントロール | bass(ターンオーバー500Hz) 50Hz −7.5dB〜+7.5dB
treble(ターンオーバー2kHz) 20kHz −7.5dB〜+7.5dB |
ターンオーバー | bass 125Hz,250Hz,500Hz
treble 2kHz,4kHz,8kHz |
フィルタ | high 7kHz,−6dB/oct
EQSubsonic 20Hz,−12dB/oct |
ラウドネスコントロール
(VR−30dB) |
100Hz+7dB |
ミューティング | −20dB |
プリ部出力電圧 | pre out(定格) 1V
pre out(最大) 7V rec out 200mV |
●総合
消費電力 | 300W |
電源 | 50/60Hz 100V |
寸法 | 471W×172H×420Dmm |
重量 | 23.0kg |
※本ページに掲載したSU-V10の写真,仕様表等は,1979年
4月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
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