SY-Λ88Uの写真
Aurex SY-Λ88U
Pre Amplifier ¥265,000
オーレックス(東芝)が1981年に発売したプリアンプ。このSY−88シリーズは,1970年代に発表さ
れた高性能プリアンプで,SY−Λ88,そして,このSY−Λ88Uと改良を重ねていった完成度の高い
モデルでした。しかし,あまりにパーツにお金をかけすぎて赤字になってしまったというアンプで,このモ
デルを最後に姿を消してしまいました。オーレックス自体も,これ以降オーディオ分野から姿を消してい
ってしまいました。                                                 

このSY−Λ88Uの特徴は,信号経路のシンプル化を徹底していることでした。信号系にできるだけ余
分な回路や接点が入らないように注意深く設計され,色づけのないストレートな音をめざしていました。そ
して,アンプ全体の低インピーダンス化を徹底して進めていました。                     

シンプル化された信号系路には,高品質パーツが惜しげもなく投入され,高音質化を図られていました。
使用されているコンデンサーはΛコンデンサー,銅箔スチロールコンデンサー,銅箔フィルムコンデンサー
など高級品がずらり揃い,まさに壮観でした。何より驚いたのは,回路基板の銅メッキ部分の厚さが何と
280ミクロン(0.28mm)と,通常では考えられない厚さで(普通は厚くても80μ程度)アンプ史上でも
これほど厚いのは少ないのではないかと思います。(同じオーレックスの幻の逸品SY-99が1000μと
いうとんでもない厚さを誇りましたが・・・。)                                      

電源部を低インピーダンス化するために,プリアンプとしては強力な電源部を持っていました。「スーパー
Λ電源」と称したこの電源部には,新開発のuΛU形Λコンデンサーをはじめとして,高級なコンデンサー
を惜しげもなく投入し,パラレル使用するという贅沢さ,しかも80VAの大容量トロイダルトランスを搭載し,
電源部全体の低インピーダンス化を徹底していました。                             

SY-Λ88Uの内部

SY−Λ88Uは,回路面ではシンプル化が図られ,帰還回路をシンプル化し,通常DCサーボをかけると
ころをサーボレスとしたDCアンプを構成していました。RIAA素子に使用されているコンデンサーもオール
銅箔スチロ−ルコンデンサーにし,DCフラットアンプにはFETをデュアルで搭載するなど使用素子を厳選
し,回路をシンプルにして色づけのない鮮度の高い音をめざした設計は各所に徹底していました。その一
つの表れが,バランスコントロ−ルでした。通常連続可変のバリオーム式とするところを,抵抗切り替えの
スイッチ式としているもので,接点を少しでも減らすための設計でした。もちろん,シンプル化のため,トーン
コントロールは搭載せず,徹底した鮮度重視のプリアンプでした。MCカートリッジにはヘッドアンプで対応し
高域のすっきり伸びた繊細な音を実現していました。                                

このように,SY−Λ88Uはそのしゃれっ気のないデザインにも表れているように,徹底して機能や回路を
シンプル化し,音質劣化の要因を取り除き,そこへ惜しげもなく高性能な素子を投入するという徹底した設
計でした。そこから実現した音は,恐ろしく鮮度が高く,分析的ともいえるほどクリアな音でした。厳しささえ
感じる音は万人向けとはいえませんでしたが,極めて高性能なプリアンプであったことは確かです。しかし
この価格では,材料代や部品代も出なかったのではないかと思います。実際に赤字だったようで,ある意
味ではとてもお買い得なプリアンプでした。恐らくこんなある意味良心的な設計のアンプは2度と出ないでし
ょう。                                                            
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


 

スーパーΛ電源による音質の向上と
操作性の向上が,プリアンプの未来を
語ります。                 

 
◎信号経路をシンプル化,スーパーΛ電 源。
◎帰還回路をシンプル化,サーボレスDCアンプ。
◎RIAA素子のオール銅箔スチコン化。
◎DCフラットアンプにローノイズデュアルFET採用。
◎バランス調整のSW化によって接点を減少。
◎豊富なMCロード切換。
◎録音セレクターSW。

 

●主な仕様


入力感度(インピーダンス) PHONO MM 2.0mV(100Ω/47kΩ)
       MC 0.1mV(10Ω/100Ω)
TUNER,AUX,TAPE 150mV(47kΩ)
全高調波歪率 PHONO MM 0.002%(1kHz 7.5V出力時 REC OUT)
      MC 0.002%(1kHz 7.5V出力時 REC OUT)
AUX       0.002%(1kHz 3V出力時 PRE OUT)
混変調歪率 AUX       0.002%(1kHz 3V出力時 PRE OUT)
SN比(IHF-Aショート) PHONO MM 88dB
      MC 70dB
AUX      110dB
周波数特性 RIAA偏差±0.2dB(20Hz〜20kHz REC OUT)
AUX 10Hz〜100kHz +0,−1dB
最大許容入力 PHONO MM 450mV(1kHz,全高調波歪率0.002%)
      MC  23mV(1kHz,全高調波歪率0.002%)
定格出力(出力インピーダンス) REC OUT 150mV(1kHz,180Ω)
PRE OUT 1V(100Ω)
最大出力 PRE OUT 30V
サブソニックフィルター MM,MC 16Hz(6dB/oct)
電源電圧 AC 100V 50/60Hz
消費電力 30W
外形寸法 450W×93H×386Dmm
重量 9kg
※本ページに掲載したSY-Λ88U の写真,仕様表等は1982年のAurexのカタログ
 より抜粋したもので,東京芝浦電気株式会社に著作権があ ります。したがって,これ
 らの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていますのでご注意くだ
 さい。                                          
 
 
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