T-2000Wの写真
YAMAHA T-2000W
AM・FM DIGITAL TUNER ¥85,000

ヤマハが1983年に発売した高級チューナー。シンセサイザー方式が中心となっていたこの時代,5万円を超えるチューナー
は少なくなり,本機はまさに高級チューナーといえる存在感を持っていました。プリメインアンプA-2000とペア使用を想定さ
れていたチューナーで,デザイン的なマッチングも考えられ,サイドウッドの付いた落ち着いたデザインもまた高級感がありま
した。また,サイドウッドの付かない仕様のT-2000も同時に発売されていました。

T-2000の写真
YAMAHA T-2000
AM・FM DIGITAL TUNER ¥74,800

T-2000Wの最大の特徴は,「デジタルファインチューニング」でした。1981年の発売のT-8で開発された通常の10倍の精
度(0.01MHz)の高精度PLLを用いたCSL(Computer Servo Locked)チューニングシステムに,デジタル方式のチュー
ナーでは初の0.01MHz単位の微調機能を持たせたものでした。この「デジタルファインチューニング」方式は,(1) PLL方式
のため安定度・精度が極めて高い。(2) メモリー可能で正確な再現がワンタッチで可能という特長を持ち,正確で高精度な受信
性能により,●電波の高密集地域での受信,●遠距離・微弱局の受信,●ビート音,混信音等の妨害排除などに高い効果を持
つというものでした。
CSLチューニングシステムは,基本的には,0.01MHzの桁まで制御する高分解能PLLシンセサイザと,高忠実度・高妨害排
除特性を両立したFMアナログサーボチューニングシステムとを,受信状態に応じて,コンピュータがコントロールする方式でした。
CSLシステムでは,ステップ選局とプリセット選局時の呼び出し時にはPLL動作で非常に正確な呼び出しが行われ,また,わず
かでも入力信号があればアナログサーボ動作に切換り,IF帯域の中心点にロックされるようになっていました。そして,そのとき
には,PLL動作が停止するので低周波数部・高周波部への妨害はほとんどゼロになるというもので,アナログチューニング方式と
デジタル方式の良い点を組み合わせようとした方式でした。PLLシステム部の基準周波数は100Hzであるため,周波数の設定
読み込みは通常の10倍精度の0.01MHz単位で行われ同調点をより厳密に追い込むことができ,その性能が上記の「デジタ
ルファインチューニング」にも生かされていました。

フロントエンドは,5連相当の高精度な構成になっていました。また,RFアンプに対してゲイン制御を行う「RFサーボゲインコントロ
ール」を搭載し,妨害のない時にはRFゲインを最大にして高感度受信を行い,妨害のあるときには,その妨害に応じて受信状態
が最良になるようにRFゲインが自動的にコントロールされるようになっていました。
IF段では,Zero IM Ruleミクサを搭載し,IF帯域に落ち込む奇数次のスプリアスをバランス回路によって精妙に打ち消すように
なっていました。これらにより,相互変調妨害や混変調妨害が大幅に改善されていたということでした。

検波段には,ヤマハ伝統の「ウルトラリニアダイレクトディテクタ」が搭載されていました。これは,10.7MHzのIF信号をダイレクト
に広帯域レシオトランスに入力して検波する,従来のヤマハのチューナー「Tシリーズ」に登載されていた「ワイドレンジ・リニアフェ
イズディテクタ」をよりワイドレンジ化,高SN化,低歪率化し,さらにDCスタビライザを装備したもので,ヤマハによると,ダイレクト
に検波することで,パルスカウント検波に比べて情報の伝送能力は5〜10倍,復調周波数特性はDC〜1400kHzと10倍の広
帯域を誇るとうたわれていました。

機能的には,FM/AM計10局ランダムメモリー機能に加え,新たに,「5Wayマルチステートメモリー」機能を搭載していました。
これは,プリセットの際に,CSLチューニングによって得られた最適受信状態を含めてその局の受信モードがメモリーできるもので
つまり,希望の放送局が最適の受信状態になるよう,FINE TUNING,FILTER,FM ATT,RX MODE,TUNING MODE
の5機能を選択微調し,メモリーしておけば,プリセットチューニング時に常に希望局を最適の状態で聴けるというものでした。

以上のように,T-2000Wは,それまでヤマハがチューナー作りで積み上げてきた技術をソフィストケートして洗練されたデザイン
の中に積み込んだといった高性能チューナーでした。そのヤマハらしい繊細なデザインと,ヤマハトーンは名機に値すると思いま
す。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ハイエンドマニアに捧げられる
最高度特性と最良の音。
新しいデジタルリファレンスチューナー。

 ◎フィールド特性を重視した
  デジタルファインチューニングを搭載。
  ●10倍精度のヤマハCSL方式を利用したニューシステム。
    デジタルファイチューニング。
  ●いつもベストチューニング。
    最適同調点を厳密に記憶する5Wayマルチステートメモリー。   
 ◎SN比100dB,歪0.009%回路・部品とも厳選した
  音質重視設計。
  ●高周波でのDレンジを拡大する
    RFサーボコントロール回路とZero IM Ruleミクサ段
  ●AMの高感度を約束する
    ヤマハ・ハイQインピーダンスループアンテナ
 
 

●主な規格●

■FM部■


50dB SN感度(NR ON) 12.8dBf(MONO),31.2dBf(STEREO),IHF 75Ω
実用感度 10.3dBf(MONO),IHF 75Ω
イメージ妨害比 100dB
スプリアス妨害比 110dB
AM抑圧比 70dB
実効選択度 85dB(DX)
SN比 100dB(MONO),88dB(STEREO)
歪率(1kHz・LOCAL) 0.009%(MONO),0.015%(STEREO)
ステレオセパレーション 68dB(1kHz・LOCAL)
周波数特性 20〜15,000Hz,+0.2dB−0.3dB

■AM部■


実用感度 250μV
選択度 30dB
SN比 55dB
歪率 0.2%(400Hz)

■総合■


出力レベル/インピーダンス FM 1V/2kΩ
AM 0.3V/2kΩ
REC CAL 0.5V/2kΩ
電源/消費電力 100V 50・60Hz/13W
外形寸法 473W×119.5H×432Dmm(T-200W)
435W×93.5H×357Dmm(T-2000)
重量 6.8kg(T-2000W) 5.0kg(T-2000)
※本ページに掲載したT-2000W/T-2000の写真,仕様表等は1983
 年11月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。   
 

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