T−437の写真
ONKYO INTEGRAT−437
QUARTZ SYNTHESIZED FM STEREO/AM TUNER
                               ¥69,800
オンキョーが1983年に発売したシンセサイザーチューナーです。シンセサイザーチューナーそのものは,オンキョーは
1975年に,T−433/NUを出していましたので,決して第1号機ではありません。しかし,オンキョーも,アナログ式
のチューナーにこだわりを見せ,また,良いチューナーを出していたメーカーですから,時代の波と共にといった感じを受
けたものでした。このT−437は,アナログチューナーT−429Rと同時期に発売され,同じカタログに並んでのせられ
ていたところがすごく興味深いものがあります。

T−437の最大の特徴は,デジタルシンセサイザー化にあります。それまで,バリコンで行っていたチューニングをバリ
キャップという小型の部品で代行し,水晶制御による受信の安定と受信周波数の多局メモリー(AM8局,FM8局)が可
能になりました。これはデジタルシンセサイザーチューナーに共通する特徴で,これ以降デジタルシンセサイザー方式が
主流になります。

オンキョー自慢のFM帰還方式もさらに進歩し,ダイナミックFM帰還となって,サーボ技術により,スピーカーからの音圧
等振動に対するIF段や局発の安定性も確保し,実使用時の混変調歪みも1/10に抑えるものだそうです。オンキョーは
アンプでも,優れたサーボ技術の応用により,振動や温度等の影響に対して強いものを作っていましたから,まさに,サ
ーボのオンキョーの面目躍如たるところがありました。

T−429Rと同様,IF帯域2段切替により,近接局の状況により,WIDEとNARROWに選択度を切り替えるることができ
ました。また,フロントエンドのRF段には,RF BOOSTER(高周波増幅)を備え,遠距離局に対する高感度優先と近距
離局に対する音質優先,妨害排除特性優先のDIRECTを選択できるようになっていました。
電源部には,プリメインアンプで開発されたスーパーターボ方式を採用し,電源部からの変調雑音やAC電源から侵入す
る外部雑音の影響を抑えるようになっており,ここにもサーボ技術や電源部周辺の技術にこだわるオンキョーらしさが出
ていたと思います。音質は,従来のオンキョーチューナーの延長線上にありましたが,やはりデジタルらしさ?が感じられ
るというか少し,従来のチューナーとは異なる感じがありました。しかし,オンキョーのチューナーに見られた他にない磨か
れたような幅のある美しい音の魅力が本機にもあったように思います。

このT−437は,基本的な技術はそれまでのT−427やT−429,T−429Rの延長線上にあり内部の構成も似たとこ
ろがあります。つまり従来のアナログチューナーのデジタルシンセサイザー版と言えなくもありません。しかし,技術の進
歩とは恐ろしいもので,従来のアナログ式(バリコン式)のチューナーが抱えていた受信周波数の安定度の問題等を解消
することができ,また,チューナーのコストダウン,ボディのコンパクト化が可能となったのですから喜ぶべきことかも知れま
せん。しかし,このデジタルシンセサイザー全盛になってからのチューナーに味わいのあるチューナーが少なくなったと感
じるのは私の個人的感傷でしょうか。                                                                  
 

 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


ひずみ0.007%,S/N98dB,
セパレーション65dB。    
音とデータで証言します。 
至高のシンセT-437。  

 
◎ダイナミック・アコースティックひずみ=ゼロ
  ダイナミックFM帰還チューナーT-437
◎入力トリプル同調バランス型ミキサー
  RFブースター2段切換で多局化に対応 
◎IF帯域2段切換で多局化対応。
  条件に応じたクオリティを実現。      
◎新開発PLLデコーダーの検波段
  単体ひずみ0.004%のすばらしさです。
◎パイロットキャンセラー内蔵
◎低歪率PLLICのステレオ復調器
◎エアチェック・キャリブレーター付
◎オートマチックノイズリダクション
◎快適なオートチューニング
◎FM8局/AM8局プリセットメモリー
◎パワフルな低域と鮮やかな中高域再生を
  のインテグラ直系のスーパーターボ方式
◎4素子ラダー型フィルターを採用した
  広帯域・低雑音のAMセクション     
 
             
         
                   
 定格・仕様
 

●FM部●


 
受信周波数範囲 76MHz〜90MHz
アンテナインピーダンス 75Ω
実用感度 (75Ω/IHF) 
    
0.9μV/ 10.3dBf(RF BOOST ON) 
  3μV/20.8dBf(RF BOOST OFF)
SN比50dB感度 (75Ω/IHF)            1.75μV/16.8dBf 
ひずみ率 
    
    
         
WIDE    400Hz      0.007%(MONO)  0.01%(STEREO) 
        50Hz〜10kHz                0.04%(STEREO) 

NARROW 400Hz         0.1%(MONO) 0.3%(STEREO) 
        50Hz〜10kHz                0.4%(STEREO)

SN比 
  (100%変調1mV入力)
98dB(MONO) 89dB(STEREO)
キャプチャーレシオ 1.0dB(WIDE) 2.0dB(NARROW)
2信号選択度(±400kHz離調) IF WIDE     50dB 
IF NARROW  85dB 
ステレオセパレーション 
  
WIDE     1kHz         60dB 
         100Hz〜10kHz   50dB         
NARROW  1kHz          45dB 
         100Hz〜10kHz   40dB           
周波数特性 20Hz〜15,000Hz  +0.2dB −0.5dB
相互変調妨害比(±1MHz/±2.5MHz) 90dB/92dB(RF BOOST ON) 
108dB/115dB(RF BOOST OFF)
イメージ妨害比(83MHz)   95dB(RF BOOST ON) 95dB(RF BOOST OFF)
IF妨害比 (83MHz)       105dB(RF BOOST ON) 105dB(RF BOOST OFF)
スプリアス妨害比  105dB(RF BOOST ON) 105dB(RF BOOST OFF)
AM抑圧比 65dB(IF WIDE) 55dB(IF NARROW)
サブキャリア抑圧比  73dB 
キャリアリーク −65dB
出力電圧/出力インピーダンス 固定出力(録音出力)  500mV/900Ω  

 

●AM部●


 
実用感度 200μV/m(ループアンテナ)
イメージ妨害比/IF妨害比 40dB/57dB
2信号選択度 35dB
SN比/歪率 55dB/0.2%
出力電圧 150mV

 
 

●その他●


 
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 21W
寸法 435(W)×77(H)×373(D)mm
重量 4.8kg
 ※本ページに掲載したT−437の写真,仕様表等は1983年9月のONKYOのカタログより
 抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 
 

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