Victor
T-X7
FM/AM QUARTZ SYNTHESIZER STEREO TUNER
¥54,800
1981年に,ビクターが発売した,シンセサイザー方式のFM/AMチューナー。1974年,オーレックス
とともにいち早くシンセサイザーチューナー
JT-V20を出していたビクターは,シンセサイザーチューナー
において長い経験を持ち,優れた技術をもっていました。 T-X7は,同社のスーパーA方式のプリメイン
アンプ,
A-X9,A-X7D等とのペアを想定されたチューナーで,シルバーパネルのすっきりしたデザイン
も共通性をもたせたものでした。
T-X7の1つ目の特徴としては,選局の利便性が注目されてきたシンセサイザーチューナーとして,アナ
ログチューナーに負けない受信性能と音質の追求が図られいることでした。ビクター独自の15,000も
の素子をワンチップに集積したハイスピードC・MOS・LSIを新開発,搭載していました。これにより,シ
ンセサイザーコントロール部の高性能化とローノイズ化が実現されていました。また,インジケーター系
にも新しいオリジナルICが投入され,一般的に用いられるダイナミック点灯からスタティック点灯に改め
インジケーター系のノイズを大きく低減し,全体のSN比向上が図られていました。
シンセサイザーチューナーとしての選局機能は,FM・AM各7局,計14局のプリセット機能が搭載され
チューニングはオート・スキャン,オートストップチューニングとマニュアル・チューニングが搭載されてい
ました。
T-X7の2つ目の特徴は,ビクター自慢のPTL検波回路が搭載された初のシンセサイザーチューナーで
あることでした。PTL検波回路は,「Phase Tracking Loop」の略で,妨害排除能力・選択度と音質
の両立を図った回路でした。通常,チューナーの妨害排除能力は,フロントエンドとIF回路で決定され
そのあとの検波回路は選択性を持たないことが常識でした。検波回路に選択性を持たせると検波帯域
を狭くする必要が生じ,音質が低下するためでした。IF回路にも同様に,妨害排除能力を高めるために
帯域を狭くすると音質が低下し,帯域を広げて音質をよくすると選択度が低下するという悩みがありまし
た。PTL検波は,これらの問題を解決する検波方式で,検波回路自身が高い選択性を持ち,フィードバッ
クループによって帯域の狭いフィルターの中心周波数が入力信号のあとを追いかけながら移動し,IF帯
域,検波帯域を十分広くとりながらも,受信信号の近くの妨害信号の排除も行えるというものでした。こ
のPTL検波回路は,バリコン式チューナーT-X5に初搭載されたもので,アメリカのIEEE(電子技術者
協会)の1978年度の最優秀賞を受けた技術でした。
フロントエンドには,アンテナ入力回路に低雑音・高利得のJ-FET,ミキサー回路にMOS-FET,局発
にはハイQバリキャップと,厳選された素子が使用され,高感度を実現するとともに,RF相互変調など
の妨害信号を排除していました。IF回路には,6素子のリニアフェーズIFフィルターが用いられ,低歪み
ですぐれたオーディオ的特性を実現していました。
FMステレオ受信の実用感度を上げるためにQSC(クワイティング・スロープ・コントロール)が搭載され
ていました。これは,ステレオ受信時に電波の入力レベルが低い場合に高域ノイズを約6dB低減し,実用
感度を約2倍に高めるというもので,コンピューターによる自動切換となっており,マニュアルでのON/OFF
もできるようになっていました。
MPX段には,PLL・ICを使用したサブキャリア発生回路に, オーディオアンプ同様NFB(負帰還)をか
けたNFB・PLL・MPX回路が搭載され,PLL・IC内部で発生する歪みやノイズも抑えられていました。
また,検波段からNFB・PLL・MPX回路,出力回路に至るまで,オーディオステージは全てDC構成が
とられていました。特に,出力回路には,高電圧の専用電源が設けられ,高リニアリティ・低歪みが実
現されていました。
以上のように,T-X7は,ビクターのシンセサイザー方式のチューナーの主力機として,バランスの取
れた設計がなされ,受信機としての機能と音質の両立した使いやすいチューナーでした。