TA−F333ESXの写真
SONY TA−F333ESX
STEREO PRE-MAIN  AMP ¥79,800
ソニーが1986年に発売した中級クラスのプリメインアンプ。それまで,「オーディオ・カレント・トランスファ」や
「レガート・リニア」など,回路技術を中心に展開していたソニーのプリメインアンプが大きく流れを変えた1台で
した。新回路やパルス電源などの新技術を打ち出して音の良さを追求していたソニーのプリメインアンプは,
TA−1120以来,大きく話題を呼ぶことはあまりありませんでしたが,一転,オーソドックスに物量を投入し,
価格を超えたパーツと構造でアッと言わせたのがこのTA−F333ESXでした。一つ前の世代のモデルである
TA−F555ESがやや薄型のモデルで,どちらかというと抑制の利いた感じの音 だったのに比べ,大きく様変
わりして人気を呼び,TA−F333ESXU→TA−F333ESR→TA−F333ESG→TA−F333ESL→TA−F
333ESA→TA−F333ESJとモデルチェンジを重ねてロングランを続けました。                 

TA−F333ESXの最大の特徴は,「Gシャーシ」と呼ぶ頑丈なベースシャーシにありました。この「Gシャーシ」
は,「アコースティカル・チューンド・G(ジブラルタル)・シャーシ」の略称で,スペインの最南端の小半島で自然
の要塞と呼ばれる「ジブラルタルの岩」にちなんで,堅く重い岩のようなシャーシということで名付けられたと当
時のカタログに説明されています。大理石の主成分である炭酸カルシウムを不飽和ポリエステルに加え,グラ
スファイバーで強化した素材を一体成形したもので,クラス最大級の重量と鉄板シャーシに比べ格段に優れた
剛性を誇りました。非磁性体,非金属であるため,磁気的な歪みも発生せず,熱にも極めて強いため温度変化
による経時変化もほとんどないという優れたベースシャーシでした。形状も部分振動や分割共振を排除するた
めに,振動しやすい突起した部分をなくし,厚さを十分にとり縦横にリブを走らせて剛性を高めていました。その
リブの厚みや間隔もランダムなものとして特定の共振モードを持たないようにされていました。この頑丈な「Gシ
ャーシ」に,プリント基板やパワートランスなどの主要パーツを直付けして一体化し,さらに全体を剛体化する構
造になっていました。パワートランジスタも,厚さ10mmの頑丈なヒートシンクに取り付け,そのヒートシンクも「G
シャーシ」に強固に固定され,防振対策が徹底されていました。                           

Gシャーシの写真
電源部は,S.T.D(Spontaneous Twin Drive)電源と名付けられた強力な電源部を搭載していました。これは,A
クラス段とパワー段に独立して整流回路を設け,独立して電源供給を行うことでAクラス段へのパワー段の干渉を防
ぎ,安定した動作と音の透明度をねらった設計でした。電解コンデンサーは,Aクラス段合計13,400μF,パワー
段合計25,000μFの大容量のものを搭載し,電源トランスは,350VAの大型のものを搭載したクラスを超えた強
力な電源部でした。この強力な電源により,1Ω負荷時350Wもの瞬時出力を実現していました。          

回路的には,フォノ・イコライザーアンプとパワーアンプのシンプルな2アンプ構成として,シンプルな回路構成の中に
クラスを超えた高品質なパーツや素材を投入する設計でした。その一つの表れが,強力な電源部や頑丈なシャーシ
でした。驚くことに,このクラスのアンプには珍しくフロントパネル上のツマミ類はすべてムクのメタル製でクラスを超え
た作りのアンプでした。パワー段は,高速出力素子Hi-fγトランジスタを極小カットオフ領域で動作させ,スイッチン
グ歪みやクロスオーバー歪みを低減させる「スーパー・レガート・リニア方式」を採用していました。イコライザーアンプ
には,高域応答性に優れTIM歪みのないローノイズHi-gmFETを採用し,MM/MC40Ω/MC3Ωの3段切替の
カートリッジ・ロードセレクタを装備していました。また,トーンコントロールは,トーンアンプを使用せず,パッシブ素子
のみで構成したシンプルや回路になっていました。                                      

このように,TA−F333ESXは,クラスの水準を大きく超えたパーツや作りで激戦区である79,800円クラスに投入
された戦略モデルともいえる存在でした。実際,ソニーのアンプとして久しぶりの人気モデルとなり,その基本設計の
ままロングランを続けることとなりました。中級クラスのプリメインアンプの常識を大きく変えた名機だったと思います。
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



 
 

そのクオリティで,そのパワーで,
CD時代のアンプの条件を
高次元でクリアする中核機。
 
◎あらゆる角度から無振動・無共振設計を追求。
  音の透明感,解像力を大きく向上させるGシャーシ。
◎広ダイナミックレンジ再生と,躍動感あふれる
  重低音の再生を可能にする新開発S.T.D電源。
◎デジタルソースの音の純度を限りなくピュアに伝える
  ため,さらに徹底したソニ−伝統の
  シンプル&ストレート伝送。                
  
   
●主な仕様●


実効出力 140W+140W(20Hz〜20kHz,4Ω負荷) 
120W+120W(20Hz〜20kHz,6Ω負荷) 
105W+105W(20Hz〜20kHz,8Ω負荷)
出力帯域幅 10Hz〜100kHz(50W出力,高調波歪率0.02%,8Ω負荷)
高調波ひずみ率 0.002%以下(10W出力時,8Ω負荷)
混変調ひずみ率 0.004%以下(定格出力時,8Ω負荷,60Hz:7kHz=4:1)
スルーレイト 125V/μsec,250V/μsec(インサイド)
ダンピングファクター 100(1kHz,8Ω)
周波数特性 PHONO  RIAAカーブ±0.2dB 
CD,TUNER,AUX,TAPE  2Hz〜200kHz(+0,−3dB)
SN比 PHONO 87dB(MM),68dB(MC) 
 105dB
入力感度および 
入力インピーダンス
PHONO,MM 2.5mV/50kΩ 
MC(40Ω)  170μV/1kΩ 
MC(3Ω)   171μV/100Ω 
CD,TUNER,AUX,TAPE 150mV/50kΩ
出力電圧および 
出力インピーダンス
REC OUT 150mV/1kΩ 
SPEAKER 適合インピーダンス4〜16Ω 
HEAD PHONE 25mW/8Ω
トーンコントロール BASS(100Hzにて)  +4,−3.5dB(ターンオーバー周波数200Hz) 
                +6,−5dB(ターンオーバー周波数400Hz) 
TREBLE(10kHzにて) +7,−8dB(ターンオーバー周波数3kHz) 
                +4,−5dB(ターンオーバー周波数6kHz)
サブソニックフィルター 15Hz以下,−6dB/oct
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 245W
大きさ 470(幅)×161(高さ)×436(奥行)mm 
 ※サイドウッド取りはずし時430(幅)mm
重量 18.6kg
 ※本ページに掲載したTA−F333ESXの写真,仕様表等は1986年10月のSONYの
 カタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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