TA-F80の写真
SONY TA-F80
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥158,000

1978年に,ソニーが発売したプリメインアンプ。自慢のパルス電源を搭載し,コンストラ
クションの上でも独創的な内容を持った,ソニーの個性を感じさせるプリメインアンプでし

TA-F80の最大の特徴は,入出力端子間を最短距離とし,部品は信号の流れに応じて自
然に配置,信号の交錯は避けるという,信号経路の理想に近づけるための独創的なコンス
トラクションにありました。
プリ部とパワー部はセパレートされており,プリアンプは前面パネル部に配し,パワーアンプ
は,その後方のシールド板で遮蔽された筐体に納められているという構造になっていました。
そして,ボリュームをはじめとしたスイッチ類はプリアンプ部に直付けされて無駄な線材は排
除され,入力端子もフロントパネル裏にあり,プリアンプ基板に直付けされたユニークな構造
になっていました。

TA-F80のコンストラクション

パワーアンプには,自社開発で,細かいライン状のパターンをとったオリジナルのHi-fTトランジ
スターを搭載して過渡混変調歪(TIM歪)を大きく低減していました。このHi-fTトランジスターは
高域特性のよい小電力トランジスターを無限大個集積したようなもので,大電力に対しても十分
な安全動作をするとともに,動作領域の広帯域化を実現していました。
このHi-fTパワートランジスターを信号の流れに沿って配置していました。従来,パワートランジ
スターは,その放熱のため間隔を離して配置されたり,ヒートシンク自身の位置を回路基板から
離していたりしたため,信号経路が長くなってしまう傾向がありました。TA-F80では,回路基板
上の信号の流れから理想的な位置にパワートランジスターを配置し,それを同型の金属棒の数
百倍という熱伝導率を持つヒートパイプに装着し,熱をいったん回路の外に逃がし,あらためて
ラジエーターで放熱するという構造がとられていました。この結果,大電流の流れる線材は極少
に抑えられ,歪みにつながる磁界の発生も非常に少なくなっていました。
パワーアンプはゲインが高くとられたハイゲインDCアンプで,従来設けられていたフラットアンプ
が省かれ,「DIRECT」状態では,Tuner,Aux,Tapeの各入力からスピーカーOUTまでDC伝
送を可能とし,低域の位相特性を向上させていました。

イコライザーアンプのRIAAユニットは,リード線の長さを最短距離にするため,プリント基板を用
いず立体配線を行い,モールドされていました。この構造により,信号入力の変化によって発生
するコンデンサーの機械的共振も抑えられていました。使用されているパーツも厳選され,コンデ
ンサーには無誘導のスチロール型,抵抗は安定度の高いタンタル金属皮膜抵抗が使用されてい
ました。また,イコライザーアンプには,カートリッジの入力インピーダンスマッチングを,100〜
400pF/100Ω〜100kΩの間で任意に設定可能な,カートリッジロード・コントロールが搭載さ
れていました。
MCカートリッジに対してはヘッドアンプを搭載していました。低雑音LECトランジスターの並列接
続と高性能ICにより,入力換算雑音−152dB/V,SN比80dBの低雑音を実現していました。ま
た,3Ω,40Ωのインピーダンスセレクターが装備されていました。

電源部は,ソニー自慢のパルス電源で,AC100Vをトランスレス整流回路でダイレクトに整流し,
ここで得られた直流(正確には脈流)を20kHzのパルス(方形波)に変換,高周波トランスで変圧
し,再び整流してアンプの電源電圧を得るというものでした。高い周波数のパルスを用いるため
高効率で,小型のトランスで,大型のトランスを用いた電源と同じ電源供給能力を持ち,パルス幅
制御定電圧回路によりパルス幅を制御(ロック)しているので出力の変化に対してもAC電源の電
圧の変動にも強く(0〜120Wの間で電圧変動率1%以下),電源電圧の変動がなく安定し,パル
ス整流なのでリップルがほとんどないため,ハムノイズがないなど,優れた特性を持っていました。

ボリュームには,矩形波応答歪み率などの諸特性および精度が極めてすぐれた新開発のボリュー
ムが搭載され,バランサー及びカートリッジロードコントロールには,抵抗体としてカーボンの代わ
りに,温度特性,歪み率が良く,誤差が0.1%以内というすぐれた特性を持つ,金属微粒とガラス
微粒を混合焼結した「厚膜金属被膜抵抗(メタルグレーズ型)」が採用されていました。
その他,機能的には,20ステップのLED表示,0.008W〜130Wを直読できるピークパワーイ
ンジケーターが搭載されていました。

以上のように,TA-F80は,パルス電源搭載のプリメインアンプとして第2世代にあたる製品で,
素子・パーツとコンストラクションの両面から完成度が高められていました。安定度のすぐれた電
源部と高速な出力素子などにより,クリアで力強い音が実現されていました。シーリングポケット
を採用し,シンプルで未来的なデザインもソニーらしさを感じさせ,印象的でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



120W+120W,
ひずみ率0.007%以下
未踏の音を極めようとした
プリメインアンプです。


◎ストレート伝送
◎プリ/パワーセパレート構造。
◎ヒートパイプ採用。
◎Hi-fTトランジスタ採用。
◎パルス幅制御低電圧回路つきパルス電源
◎思い切りシンプルにした回路構成とDC伝送。
◎SN比80dBのMCヘッドアンプ。
◎カートリッジロード・コントロール
◎20ステップ,ピークパワーインジケーター
◎LOWフィルター
◎メタルグレーズ型可変抵抗器
◎RIAAユニット
◎ニューボリューム
◎4端子電解コンデンサー




●主な仕様●

実効出力 120W+120W(8Ω負荷両チャンネル駆動時に,高調波ひずみ率
     0.007%で20Hz〜20kHzの帯域内で得られるRMS出力)
出力帯域幅 5Hz〜30kHz(60W,8Ω高調波ひずみ率0.007%IHF)
高調波ひずみ率 出力/帯域:20Hz〜20kHz
実効出力時:0.007%
10W出力時:0.0025%(スペクトラムアナライザーで測定)
1W出力時:0.0033%(スペクトラムアナライザーで測定)
混変調ひずみ率
0.007%:実効(等価正弦波出力)時,60Hz:7kHz=4:1
残留雑音
100μV(8Ω,1kHz)
ダンピングファクター 100(1kHz,8Ω)
入力感度および入力インピーダンス
 入力端子          感度    入力インピーダンス  SN比(Aネットワーク)
PHONO1,2(MM)   2.5mV   100Ω〜100kΩ   88dB
PHONO1,2(MC) 0.125mV       33,100Ω   80dB
TUNER,AUX       150mV          50kΩ  105dB
TAPE 1,2
PHONO最大許容入力 PHONO1,2(MM) 300mV(1kHz)
PHONO1,2(MC)  15mV(1kHz) 
周波数特性
PHONO1,2 RIAA偏差±0.2dB 
消費電力 195W(100V,50/60Hz)
大きさ 430(幅)×160(高さ)×410(奥行)mm 
重量 9.9kg

※本ページに掲載したTA-F80の写真,仕様表等は,1978年10月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

★メニューにもどる
  
 
★プリメインアンプPART4のページにもどる

 
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp