TA-F6Bの写真
SONY TA-F6B
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥99,800

1977年にソニーが発売したプリメインアンプ。V-FETに続いてソニーが展開していたパルスロック電源搭載アンプの
代表機種で,おそらくパルス電源の商品化第1号機であったと記憶しています。高効率電源に挑戦した新しいアンプ
として注目を集めました。

TA-F6Bの最大の特徴である「パルスロック電源」は,AC100Vをトランスレス整流回路でダイレクトに整流し,ここで
得られた直流(正確には脈流)を20kHzのパルス(方形波)に変換,高周波トランスで変圧し,再び整流してアンプの
電源電圧を得るというものでした。高い周波数のパルスを用いるため高効率で,小型のトランスで,大型のトランスを
用いた電源と同じ電源供給能力を持ち,パルス幅制御回路によりパルス幅を制御(ロック)しているので出力の変化
に対してもAC電源の電圧の変動にも強く(0〜100Wの間で電圧変動率1%以下),電源電圧の変動がなく安定し
ている,パルス整流なのでリップルがほとんどないため,ハムノイズなどがないなど,優れた特性を持っていました。

「パルスロック電源」は,高周波を扱っているために,電磁波が周囲のアンプ回路に与える影響の問題がありました。
そのため,厳重な電磁シールドを施した密閉構造が取られていました。「パルス電源」と同様の方式の高効率電源は
「スイッチング電源」「デジタル電源」等とも呼ばれ,他社では,ビクターが試作機を発表したりしていましたが,実用化
され,製品として出していたのは,サンヨーぐらいで,限られていました。よく似た方式としてサイリスタを利用してAC
電源をスイッチング制御,小型トランスで整流するヤマハの「X電源」がありました。パルス電源は,後に,NECの名機
A-10の初代機で「リザーブ電源」に使われていましたが,それ以外にはあまり一般的には使われていません。これ
は,スイッチングによる電磁波の影響が,アンプ内部や他の機器に与える影響を抑えきれなかったためといわれていま
す。しかし,デジタル技術が進み,デジタルアンプさえも出てきた現在,パルスから出るバズの影響をシールドする技術
も進んでいるはずですから,もう一度見直されてもいい方式かもしれません。実際最近では,海外製の高級アンプ(ジェ
フロウランドDGなど)でも,スイッチング電源がその電源供給の安定性に着目されて新たに搭載されている例もありま
す。その意味でも,一歩進んだ先進的なアンプだったといえると思います。

TA-F6Bの内部

この強力な「パルスロック電源」を生かすパワーアンプ部は,全段DCアンプ構成で,初段にデュアルFETを用いたソ
ースフォロア回路,ドライバー段にモノシリックICを使用していました。終段は,ピュアコンプリメンタリーSEPP OCL
回路で,100W+100W(8Ω)の出力を得ていました。

イコライザーアンプは,デュアルFETによるカレントミラー差動増幅構成で,ダイレクトカップリングのDCアンプとなって
いて低域伝送特性を高めていました。また,RIAA再生カーブを作り出すNF回路には,高精度のRIAA素子を採用し,
さらにこのNF回路とは別に,FETによるDC帰還回路を搭載することで,動作点の安定とNF回路の大容量コンデンサ
ーの排除を実現していました。

MC PHONO入力には,入力換算雑音−152dBVという低雑音のヘッドアンプを搭載していました。このヘッドアン
プは,初段に低雑音のLECトランジスタを並列接続して等価雑音抵抗を下げ,次段はダーリントン接続の2段直結構
成となっていました。

ボリュームは,高精度で高SN比の4連ディテントボリュームを搭載し,トーンコントロールには,低雑音・高耐入力の
モノシリックICを採用したトーンアンプによるセルフディフィート方式のトーンコントロールを搭載していました。
PHONO端子は金メッキ仕様となっていました。

以上のように,TA-F6Bは,特徴的なパルス電源を搭載しつつ,オーソドックスに性能を追求した高性能なプリメイン
アンプでした。大型のメーターを備えた外観もシャープでかっこよかったと思います。音の方も従来の電源を搭載した
ソニー製アンプとは異なった明るいカラッとした音を持っていました。また,低音の支えもしっかりしていたように記憶
しています。パルス電源の可能性を示した名機だったと思います。
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


ずばぬけたレギュレーション,
磁気洩れも断った
パルスロック電源を採用。
新しいテクノロジーで
アンプの価値向上を狙います。
◎パルスロック電源で100W+100Wのハイパワー
◎入力換算雑音−152dBVのMCヘッドアンプ
◎DCイコライザーアンプ
◎DCパワーアンプ部の持ち味を存分に生かした
 DCプリメインアンプ
●主な規格●


実効出力 100W+100W(20Hz〜20kHz,8Ω負荷)
出力帯域幅 5Hz〜35kHz(IHF,8Ω負荷)
高調波ひずみ率 0.03%以下(実効出力時,8Ω負荷)
混変調ひずみ率 0.01%以下(定格出力時,8Ω負荷,60Hz:7kHz=4:1)
ダンピングファクター 50(1kHz,8Ω)
PHONO入力感度 PHONO(MM) 2.5mV/50kΩ
PHONO(MC) 0.08mV/100Ω
PHONO最大許容入力 PHONO(MM) 250mV(1kHz)
PHONO(MC)   8mV(1kHz) 
トーンコントロール BASS       60Hz±10dB
TREBLE     25kHz±10dB
フィルター LOW  15Hz以下,−6dB/oct
HIGH 9kHz以上,−6dB/oct 
消費電力 190W
大きさ 430(幅)×170(高さ)×390(奥行)mm 
重量 12kg
※本ページに掲載したTA−F6Bの写真,仕様表等は,1977年11月
のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

★メニューにもどる          
  
 
★プリメインアンプPART2のページにもどる
 
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                 


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp