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ESPRIT TA-N900
MONAURAL POWER AMPLIFIER ¥250,000
ソニーが設立した高級品ブランド「エスプリ」の製品第2弾として,APMスピーカーシステムAPM8に続いて登場したモ
ノラルパワーアンプでした。薄型でパワースイッチがあるだけの全くのブラックボックス的なデザインが特徴的なパワー
アンプでした。出力200Wながら,高さ8cmの薄型で,重量もわずか10.5kgというコンパクトな設計は,ソニー自慢の
パルスロック電源とヒートパイプとクーリングファンを組み合わせた高効率の放熱システムによるもので,当時としては,
技術的にも非常に先進的で特徴的なパワーアンプでした。
ソニー自慢のパルスロック電源は,トランスを持たない整流回路で直流(実際は脈流)を作り,これをスイッチング回路
で20kHzの方形波に変換し,小型のトランスを通してもう一度整流して電源とするもので,小型の電源トランスで大出
力が得られる高効率電源です。安定した電流供給能力を誇りますが,スイッチングによるパルスの影響を嫌い,これ以
降あまり使われず,現在ではほとんど見られなくなってしまいました。パルスに対するシールド技術が発達したデジタル
時代の今,もう一度見直されてもいいものかもしれません。
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パワー部は,MOS−FETの4連パラレルプッシュプルで200Wの出力を持っていました。このMOS−FETはソニーの
自社開発の大電流型のもので,本来2連パラレルプッシュプルでA級200Wを出せる能力を持っており,出力段は2倍
の余裕を持っていたことになります。出力段の前のドライバー段には歪み低減回路が組み込まれ,出力段がノンカット
オフA級動作を行うようになっていました。裸特性を十分に高め(高調波歪率0.05% 8Ω実効出力時)NFBを使わな
い無帰還動作を行っていました。出力はスピーカーインピーダンスに対応した切替スイッチにより,2,4,8Ωのいずれ
に対しても200Wを保証する設計でした。音は,ややあたたかめの音で,非常に整った端正な音だったと思います。解像力や分解能はソニーらしく高い音でした
が,ソニーアンプの中ではそのデザインとは異なり,音が冷たくない感じだったことが印象に残っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ゲインを持った1本の導線に近づく
そのために素顔の美しさをひたすら求めた,
エスプリのリファレンスアンプです。
回路方式 | (プリステージ段)
初段FET差動ダブルカスコードブートストラップ入力カレントミラーロード 2段目カスコードブートストラップ反転増幅 終段エミッタホロアSEPP出力 (パワーステージ段) パワーMOS−FETクワドルプルソースホロアSEPP出力,ノンスイッチング型 Aクラス動作,No NFBループ (電源部) パルスロック電源 |
実効出力 | 200W(20Hz〜20,000Hz,2Ω〜8Ω負荷時) |
高調波ひずみ率
(実効出力時) |
0.05%(8Ω),0.1%(4Ω),0.2%(2Ω) |
混変調ひずみ率
(60Hz:7kHz=4:1 実効出力時) |
0.05%(8Ω),0.1%(4Ω),0.2%(2Ω) |
ダンピングファクター | 50以上(1kHz,8Ω) |
残留雑音 | 20μV(8Ω Aネットワーク) |
SN比 | 120dB以上(8Ωクローズドサーキット Aネットワーク) |
周波数特性 | DC〜100kHz+0−3dB(ダイレクト時) |
入力感度 | 1.7V,インピーダンス50kΩ |
出力端子 | 2Ω〜16Ωのスピーカーに適合
(スピーカーインピーダンススイッチで切替え) |
消費電力 | 200W |
大きさ | 480(幅)×80(高さ)×445(奥行)mm |
重量 | 10.5kg |
※本ページに掲載したTA-N900の写真,仕様表等は1982年6月のESPRITのカタログ
より抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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