ZERO-1000の写真
Victor Zero-1000
密閉型4ウェイスピーカーシステム ¥210,000(1本)

1981年,ビクターが発売した4ウェイ密閉型スピーカーシステム。Zeroシリーズは,1978年発売の
リボントィーターを特徴としたZero-5が最初でしたが,このZero-1000は,それから2年後にシリー
ズ最高級機として発表され,先進的な設計とフレッシュな音で新時代のスピーカーとして注目を集めま
した。当時,ビクターがうたっていたW&D(ワイド&ダイナミック)思想のとおり,非常にワイドレンジで
反応の早い音が印象的でした。1本210,000円はさすがに手が出ないので憧れの目で見ていたも
のでした。同じ設計思想で出された弟機Zero-100(¥125,000)を,当時スピーカーをグレードア
ップすべく10万円台のスピーカー選びをしていて,購入候補の一つにあげて考えていたことを今でも思
い出します。                                                     

この,Zero-1000の最大の特徴は,ファインセラミック振動板をウーファーにまで採用し,トゥイーター
からウーファーまで全面的にセラミック化したことにありました。従来のモデルでもスコーカーやトゥイータ
ー用のドーム型ユニットには採用されていましたが,ウーファーは本機が初めてで,あまり他には例がな
かったはずです。ファインセラミック振動板といっても,もちろんすべてセラミックでできているのではなく,
アルミの振動板をベースにしてファインセラミック粒子を超高温(10,000度!)で融着して層を作り上げ
たもので,軽くて剛性が高く,固有の鳴きも少ないという優れものでした。                  

ウーファーユニットは,32cmファインセラミック・コーン型で,強靱なアルミニウム・コーンを基材としたフ
ァインセラミック・ダイヤフラムを採用していました。紙コーンに比べ高域共振周波数を800Hz程度から
3kHz程度まで上げることができ,クロスオーバー周波数500Hzに対して十分余裕があり,不要な高
域共振を排除することができるということでした。また、コーンの頂角(くぼみ)が紙コーンに比べ剛性が
高いため浅くすることができ,平面型とコーン型の長所を併せ持つということでした。実際、従来のスピ
ーカーに比べ,低音の反応が速く,軽やかな低音だったように思います。                 

ZERO1000のユニット
スコーカーとトゥイーターは,それぞれ7.5cmと3.5cmの口径のドーム型で,もちろんファインセラミック
ダイヤフラムを採用していました。優れた物理的特性により,スコーカーの使用帯域は500Hz〜5kHz
ピストニックモーションの範囲は200Hz〜14kHzに達し,十分な余裕を持った特性でした。トゥイーター
は,物理蒸着によって,ドームの両表面に2μm厚の結晶化ファインセラミック層を形成し,12kHzまで
の使用帯域に対して,35kHzもの高域共振周波数を誇りました。                      

Zero-1000では,さらに12kHz以上の帯域に対してスーパー・トゥイーターを搭載していました。この
スーパー・トゥイーターは耐熱ポリイミド樹脂フィルムに融着されたリボン状のボイスコイルが空気をダイ
レクトに振動させる「ダイナフラット・リボン・トゥイーター」(いわゆるリボン型)で,100kHzにおよぶ超高
域までの再生を実現していました。                                        

ZERO1000の内部

エンクロージャー形式は,それまでのZeroシリーズがバスレフ型であったのに対し,Zero-1000は密閉
型を採用していました。しかし,この密閉型エンクロージャーも非常に凝った構造でした。フロントバッフル
は,特殊レジン材を使用し,微妙なカーブを描く形状により,いわゆる回折効果による指向性の乱れを排
除していました。4個のユニットを直線状に配置して音像定位の向上を図っていました。この特殊レジン材
の使用により,一体成形による利点を生かし,バッフル裏側に複雑なリブ構造を施し,バッフルの強度を
高めていました。裏板も単純な平面ではなく,定在波の処理やユニットの背圧分散,不要振動の排除など
のために表面が逆ピラミッド状に成形された。チップボード一体成形のウッドキャスティングを採用していま
した。これら,剛性の高いエンクロージャーの採用と高性能ユニットの搭載により,重量は45.0kgにも達
していました。                                                      

このZero-1000は,デジタル時代のモニタースピーカーとして大いに話題を呼び,先進的な設計は非常に
インパクトがありました。使いこなしは難しそうでしたが,その音は,反応の早い軽やかなもので,むしろ柔
らかさやなめらかさも感じさせるもので,非常に聴きやすい音だったと記憶しています。ここで開発された,
ファインセラミック振動板などの技術は,後の名機SX−1000シリーズにも生かされていったと考えられま
す。私にとっては,このZero-1000は印象的な名機の一つです。                        
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 




 

ファインセラミックスの先進技術を
ウーハーにも,           
W&D思想の次元をあらたにした
ビッグな4ウェイです。       
◎32cmセラミック・コーンの          
  ワイド ピストニック・モーション・ウーハー
◎ファインセラミック・ドームの           
  7.5cmスコーカー,3.5cmツィーター
◎新設計のダイナフラット・リボン        
  スーパー・ツィーター            
◎UGレジンのスーパー楕円バッフルと   
  重量級W&D対応キャビネット      

 
 

●Zero-1000型仕様●


 
種類 4ウェイ密閉型
スピーカー・ユニット 32cmファインセラミック・コーン 
7.5cmファインセラミック・ドーム 
3.5cmファインセラミック・ドーム 
ダイナフラット・リボン
最大入力 150W(ミュージックパワー)
再生周波数帯域 28Hz〜100,000Hz
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 91dB/W・m
クロスオーバー周波数 500/5,000/12,000Hz
レベル・コントロール 定インピーダンス ステップ切換型 
(スーパー・ツィーター,ツィーター連動/スコーカー)
寸法 440(幅)×793(高さ)×371(奥行)mm
重量 45.0kg
 ※本ページに掲載したZero-1000の写真・仕様表等は1982年11月の
 Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
 法律で禁じられていますのでご注意ください。

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