SS〜エアメール プロム パリ〜 |
第一夜 〜出会い〜 |
それは、一枚のチケットから始まった。 なんて書くと格好がいいかもしれないが実はそんないい話じゃない。 僕は実はある雑誌社の編集の仕事をしているのだが この部の編集長ってのがとんでもなく非道なヤツで・・・ って、あ!あまり大声でいうと聞こえてしまうか。 普段はぼ〜っとデスクに座って起きているのか寝ているのか分からない。 だけど何か一つでも思いついたら即実行ってタイプらしい。 だから、その思い付きに振り回される部下の気持ち。 分かるでしょ。 と、愚痴はここまでにしておいて話に戻ろう。 そんな編集長がある日 「じゃ、トキくん、ここに行ってきてこの娘に会ってきて。」 そう言って一枚の切符と写真を持ってきた。 行き先は・・・・・・「巴里??」 僕、海外になんて一回も行ったことないし、 言葉・・・たしかフランス語だったっけ。 全く分からないんだから。 なんて言い訳は全く通用する人じゃない。 「だいじょ〜ぶ。心配ないよ。楽しんでおいで。」 そう言われたってねぇ。 しぶしぶ身支度を整え、巴里行きの船に乗り込んだ。 道中約1ヶ月の船旅は、楽とは言えなかった。 最初は船酔いの悩まされ おおっと、これ以上は書けないので省略。 とにかく、大変だった訳。 でも、慣れてくるとそうでもなくなった。 よく考えれば、いつものデスク作業に追われることもない 編集長の道楽まがいの仕事に付き合わされることもない アイツのうるさい声を聞くこともない う〜ん、快適、快適。 それに・・・ 会ってくるように言われた写真の彼女。 カワイイ〜もんね♪ なんか得した〜〜って感じ。 てな訳で船の生活が快適に思いはじめた頃 船はようやくフランスの港に辿り着いた。 そこから汽車で数時間後 汽車を下りた僕の目に飛び込んできたのはあの風景だった。 昨年秋、衝撃な映像と共に飛び込んできた巴里の駅。 そうか、大神隊長のシーンはこの駅で撮影されたものか。 あの場面と同じ場所に今僕は立っているんだ。 感動にひたりつつ、出口を目指して歩く。 その造形美と品位あふれる紳士淑女の姿に 少々とまどいながら。 駅のすぐ前をセーヌ川が流れていた。 その淵に立つ一本のアカシアの木の側に その少女は立っていた。 「こんにちは」 よかったぁ、日本語だぁ。 「あの、日本から来られた取材の方ですよね。」 あれ、そんな話だったっけ。 編集長、全然そんなこと言ってなかったぞ。 「あのぅ・・・」 「あ、すみません。日本語だったものでびっくりしてしまって。 初めまして、日本から来た赤羽 トキです。よろしく。」 「私は、エリカ・フォンティーヌって言います。 初めまして、トキさん。」 一通り挨拶は済んだものの 取材? いったい何を聞けばいいのか。 編集長〜、頼むから目的をちゃんと言ってくれ〜〜〜。 という叫びは日本には聞こえないだろうし。 悩む僕に 「せっかく日本からいらっしゃったのですから ちょっとだけ巴里の街、歩いていきませんか?」 やったぁ。 これで時間が稼げる。 「願ったり叶ったりですよ。エリカさん。」 「え?なんですか、それ。」 「あ、こっちの話ですよ。さ、行きましょ。」 「ああ、そっちじゃないですってば。」 彼女はセーヌ川のほとりに沿って歩き出した。 僕も彼女に付いて歩き始めた。 |
第二夜に続く |
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