SS〜エアメール プロム パリ〜 |
第二夜 〜古の都〜 |
セーヌ川のほとりを歩く僕とエリカさん。 な、なんだかこれって・・・ ドキドキしながらも、なんとなく彼女の方に視線がいってしまう。 さらりっと肩まで伸びた茶色い髪 大きな瞳。 かわいい〜♪ そんな僕の視線に気づいたのか エリカさんは僕の方を向いてにこりっと笑った。 「えっと〜」 とぼけたふりをながら視線を移す。 そう言えばここはもう巴里なんだ。 傍らにはセーヌ川。 正面に視線を移すと・・・・ 「うわぁ、あれ、何ですかぁ。」 「あ、あれは、エッフェル塔ですよ。」 「へぇ、すごいなぁ。僕、あんなの初めて見ましたよ。」 「あのエッフェル塔は、今から20年くらい前に造られたの。 当時はかなり話題になったそうよ。 そう、あまりよくない話題ね。 ほら、見て。」 そう言われて、エリカさんが指さす方に目を向けた。 「巴里はそれまではああいった石造りの建造物が多かったの。 そんな中で、あのような鉄の建物でしょ。 奇抜だったというか、センセーショナルって言うのかな。 巴里らしくない建物って思われたのでしょうね。 でも・・・今はすっかりパリのシンボルになっているわ。 ああやって絵にも描かれるようになったし。」 視線の先にはカンバスを広げ、ペンを走らせる人。 それは一人じゃなかった。 二人、三人。 様々な姿のエッフェル塔が並ぶ。 さすがは「芸術の都」とうたわれる街。 そんな中 「どうだい、ちょっと見ていってくれないかい。」 気の良さそうな白ひげを生やしたおやじが声をかけてきた。 「どうだい、一つ買っていかないかい。」 迫力ある油絵のエッフェル塔はとてもこの目の前のおやじが描いたなんて 思えないくらい。 人は見かけによらないなぁ。 なんて思いつつ値札を見ると・・・ え?なんかのまちがいじゃない。 こんな値段、僕の財布の中身全部あわせても買えないよぉ。 かばんから財布を出して改めて中身を確認しようとしたその時 どすっ 「馬鹿やろぅ、気をつけろぉ」 いきなり怒鳴られ僕は圧倒されてしまった。 「すみません」の言葉を言う余裕さえなかった。 気づいた時にはその人の姿は遥か遠く。 ふと我に帰ると 僕の手には・・・財布がない! 「待てぇ、財布泥棒ぉ」 慌ててそいつを追いかけた。 気づかれたことが分かったのか、そいつも走り出す。 もう駄目かもしれない。 けど、あれがないと・・・ 「誰かぁ、そいつを捕まえて下さ〜い」 叫ぶ僕の声が聞こえたのか 前を走るそいつの正面にひとつの影が現れた。 それは一瞬の出来事だったかもしれない。 あっという間にそいつはその影に取り押さえられた。 そして、青い軍服のような格好をしたその影はそいつを引っ張って僕の方へやってきた。 「これ、君のかい?」 「あ・・・そ、そうです。」 「気をつけなよ。こういったコソドロにどこで狙われているか分からないんだから。」 「すみません、ありがとうございます。」 そう言って頭を上げ、改めてその姿を確認した。 え? 目の前にいるのは二人の女性。 青い軍服を着ている方は金髪。 きりっとした目つきがりりしい。 そして、もう一人。 彼女に取り押さえられ、僕の方をにらみつけている。 わ〜、こわそう。 でも、銀髪のその女性。 なんか、美人なんだよなぁ。 「あ、あのう〜」 「私のことは・・・」 金髪の彼女は何か言いかけようとしながら 背中に背負っている何かを取りはじめた。 え? それって・・・まさかり? がしゃん。 まさかりを振り下ろした瞬間 何かとぶつかり合うような音がした。 まさか、いくらなんでも目の前にいたもう一人の 銀髪の女性に向かって・・・そんなことをするなんて。 僕は目を閉じた。 |
第三夜に続く |
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