SS〜エアメール プロム パリ〜




第五夜  〜其を夢だと誰がいふ〜




コツ

コツ

コツ


これは・・・時計の針の音

ここは・・・いったい、どこだ。


「おい、起っきろ♪〜」

誰だぁ、こいつぅ。

「トキぃ〜、いつまで寝てんのぉ。そろそろ目ぇ覚まさないとぉ。」

目を覚まさないとなんだって・・・

「締め切り、間に合わなくなっちゃうよぉ。」


え!

がばっ

「あ、起きた起きた(^^)」


「ち、ちょっと今何時だ。」
「ん〜・・・23時頃かな、入稿にはまだ時間あるよん♪」
「あるよん・・・って1時間しかないじゃないかぁ。どうするんだよぉ。」
「だぁいじょぉ〜ぶ♪、トキならなんとかなるって。」
「なんとかならないと困るじゃないかぁ。」
「だって起きないだもん、あたし、め〜いっぱい起こそうってがんばったんだよぉ♪」
「がんばった・・・ってこれなんだよ。」

僕のデスク
あまり奇麗に整頓されている方じゃないけど
なんでこんなにクリップが散乱しているんだ。

「投げてたらそのうち気づいておっきるっかな♪ なんて」
「こんなんじゃ効果ないだろ」
「しっ、声大きいって、起きちゃうよ。編集長」

ふっと正面のデスクの方を見る。
いつものようにぼぉっとして前を見つめている長。

「あれでホントに寝てるのかぁ。」
「長いつきあいだもん♪ あたしには分かるもんねぇ〜」
「そぉっかなぁ。」

再び長の方を見るが、やっぱり分かんないや。
いやいや、そんな暇ないって。

「さぁ、頑張って。
巴里出張のレポート、1時間後が締め切りだよ〜」


そうなんだ、今やっている仕事。
先日、巴里に新しくできる「花組」って劇団について
長に付いて初めて取材に行ってきたんだ。
なにやらその「花組」って劇団の団員達も初めて舞台に立つとかで
みんな緊張してカチンコチンになっていたんだよなぁ。
それでも、頑張っていたんだ。

それを見ていたら僕もがんばらなきゃって思って。
今回のレポート、僕が書きますって長に言っちゃたんだ。
なんとか仕上げないと。

まだぼぅっとした意識の中、僕はペンを取った。

な、なんとか終わったぁ。
時間、間に合ったよなぁ。
静かに長のデスクに原稿を置く。


すっとその原稿を持ち上げる手。
なんだ、やっぱり起きているやないか。


「長って、原稿に反応しているだけなんだよぉ。」
「ホントかぁ。」

デスクに帰ってそんなやりとりをしていると


すっ
今書いた原稿を差し出す長。

「じゃ、これ。回しといて。」
それだけ言うとすたすたと自分のデスクに戻る長。

え?てことは・・・。

「やったね、初の原稿掲載、おめでとぉ♪」
「そういうことになるんだよな。やったぁ。」
「やったね♪」



「こら、そこ、うるさい。」



・・・・・




そんなこんなでどうにか掲載された報告書
皆さん、いかがだったでしょうか?
途中で眠っちゃったことは・・・秘密なんだけれど
でも、きっとばれているんだろうなぁ。
だらだらと長くなっちゃったけど
読んでくれて本当にありがと。


ちなみにね。


「お〜い、トキぃ、こんなの来てたよぉ♪」


氷水のやつ、あいかわらず騒がしいんだから。
え、なになに。
僕宛ての手紙だって
えっと、差出人は・・・


<おしまい>






あとがき・・・かな(^^;;;