只今舞台において稽古中ですが、ちょっとその様子を覗いて見ましょう。
「なぁ、すみれ。
さっきは何であたいに紅茶なんかご馳走してくれたんだ?」
「………外は寒そうですわね、って思いましたから。」
「………すみれ………」
「冗談ですわ。
単なる気・ま・ぐ・れですわよ。
たまにはがさつなカンナさんに作法の一つでも教えておかなければ
と、思いつきましたから。
こういうことはわたくしのようなトップスター自らが
率先してやらなければいけませんわ。
誰かさんのような野蛮な生き物を放し飼いにしておくのは、
この帝劇の品位にかかわりますから。」
「な、な………なんだとう。
せっかく感謝しようとしていたってのに
お前って奴は」
「おほほほほ、当たり前でしょう。
このわたくしがただお茶を入れるはずはございませんわよ。」
「このやろうぅ。」
「あ!まぁたやりはじめた。この二人は。」
「すみれ、カンナ。稽古中よ、もういいかげんにしなさい。」
「だってマリアぁ、こいつがなぁ。」
「あなたねぇ。わたくしがどういう気持ちで……」
「まあまあすみれさん、そのくらいにしておいて下さい。
稽古が始められませんよ。
さあ、舞台の立ち位置、こちらですよ。」
「カンナ、ボクたちはこっち。」
がやがやがや
2人を引き離そうとする面々。
「わ、分かりましたわよ。」
「ああ、そうだな。」
「あ〜、なんとか収まったようですね。
じゃ、ケイコ再開しま〜す。
よ〜い、始め。」
一時の歩み寄りは幻か。
この二人の関係…やはりあいからわずのようである。
|