「蛍守」−5





カランカラン


ただいま
と言う気分になれなかった。
なんだかもうそのまんま眠ってしまいたい
そんな気分だった。


お店の方
おばさんだろうか?
珍しくTVをつけているらしく
そちらの方からニュースを読んでいる女性の声が聞こえてきた。



<本日、沢の下流にて白骨死体が発見されました。
 死後数年以上経過したものらしく
 詳しいことはまだ調査中ですが
 以前地元の小学校の一学年が集団学習の為に訪れていた際
 沢の増水によって行方不明になっていたその内の一人ではないかと………>




ぷちん。


「おや、緑さん。
 帰ってきてたのかい?」


「うん………」



「もう、ずぶぬれじゃないか。」

「傘、全然効果なかったから。」


「仕方ないね、梅雨の始まりってこういうもんだから。
 さ、早くお風呂の入っておいで。
 そのままだと風邪ひいてしまうよ。」


「うん………」





「なんだい、なんだい。 
 すっかり落ち込んでしまって。」


「だって、おばさん………。」




「今日のようなことだってある。
 でもね。
 今日のようなこともあるから
 この間のようなこともあるんだよ。
 
 だからさ。」


「そうだって知ることも必要なんだよ。
 また、があると思えばまた会えるんだしさ。」


「…………そ、う、だよね………おばさん………」


「決まってるじゃないか。
 また来年があるよ。


 さ、もう今日はお風呂入って休みな。

 また明日から頑張らないとね。」






「うん、おばさん。」



「おばさんじゃないだろ。さっきからもう何回言ってるんだい。」


「あ!」










「ごめんなさぁい〜〜〜〜。」
 







そうだよね。
また来るよね。
私はそう思いたかった。


苦い夜。
悲しい夜。


でも、、、いつかまた・・・







そして・・・・・・・・・雨が降る