真夏の太陽の日差しが降り注ぐ第三新東京市には、セミの声と建設工事の音が響き
渡っていた。
使徒と戦うために造られた街、そして、使徒との戦いの中、消えてしまった街、
第三新東京市。世界中の人々は、人類のために戦い、消えてしまったこの街の復興
を願った。感謝の気持ちとして……そして、使徒に打ち勝ち、生き残る事を許さ
れた事の記念碑として……。
そのため、世界中の国々、組織、企業、団体、個人から莫大な額の復興資金が集め
られていた。そして、世界中の建設会社が先を争うように、この復興プロジェクト
に参加した。しかし、純粋に感謝の気持ちから、という企業は殆どなかった。
全人類が注目するこのプロジェクトは、自社の技術力の高さを全世界に示せる絶好
のPRの場と考え、採算度外視、赤字覚悟で自らの持てる技術の全てをつぎ込み、
他のプロジェクトを延期、または中断させてでも、優秀な人材をこの地に送り込ん
できていた。また、同様の理由から、各重機メーカーも、最新鋭の機材を殆どタダ
で貸し出していた。
人類は、セカンドインパクトから復興した経験から、セカンドインパクト以前に
比べ、建設技術が飛躍的に進歩し、以前からは考えられないほどの早さで、立派な
建物を造る事ができるようになっていた。
しかし、このプロジェクトは、それさえも遙かに超える速度で、様々な建物や施設
が造られていた。各社とも、少しでも早く他社よりいい物を造ろうとしていたため、
その力の入れようは異常ともいえるほどだった。そのため、後にギネスブックにも
載るほどの短期間で、区画整備された美しい街が造られたにもかかわらず、一切の
手抜き、欠陥、不正などは行われなかった。そして、各社が利益を追求しなかった
ため、莫大な復興資金のかなりの部分が手つかずで残ったので、家を失った人々や
けがをした人々への、十分すぎる補償金に充てられた。
なお、こうなる事を全て予想し、世界中の人々を巧みに誘導した人物が、ニヤリ
と笑ったのを知っているのは、冬月くらいだった。
そして、そんな町並みを、二人の少年が歩いていた。
「……しかし、いきなりケンスケに声掛けられた時はホンマびっくりしたで。
まさかケンスケも今日この街に戻ってきとったとはなー。こないな偶然てあるんや
なー」
「びっくりしたのは僕の方だよ。前の方をジャージを着たやつが歩いているから、
まさかとは思ったけど、本当にトウジだったとはね。しかも、僕と同じように今日
この街に戻ってきてて、こうしてシンジの所へ向かってるなんてね。こんな風に僕
たちが出会うなんて、きっとものすごい確率だよ」
「まったくや」
「でもトウジも人が悪いな。この街に戻ってきてる事、まだシンジに教えてないん
だろ?」
「ん? まぁな」
「シンジの事だからきっと心配してるよ。連絡くらいしてやればいいのに」
「まぁ、こういう事はいきなり訪ねていって、びっくりさせるんがおもろいんや。
ケンスケもそう思って連絡してないんやろ?」
「考える事は同じって事だね」
「そういうこっちゃ」
トウジとケンスケ、二人ともつい先ほどこの街に戻ってきたばかりだった。そして、
引っ越しの片付けもせずに、とりあえずシンジの所へ顔を出そうと思い、こうして
シンジのマンションへ向かっている時に出会ったのだ。
二人は、疎開先の事やこれからの事を話しながら歩いていた。
やがて、シンジのマンションが見えてくる。以前はシンジたちの部屋以外は全て
雨戸が閉められてひっそりとしていたが、今は全ての雨戸は開けられ、ベランダに
は観葉植物や洗濯物が干され、多くの人々が暮らしているのが見て取れた。
「なんや、このマンションも人でいっぱいやなー」
「そりゃあそうだよ。いくら急速に復興してるとはいっても、まだまだ住む所は
足りないからね。工事関係者の住む所も必要だし、空き家にしておける所なんて
どこにもないさ」
「ま、そりゃそうやな。ワシも人が大勢おって賑やかな方が好きや。前はシンジ
たち以外、誰も住んどらんかったようやしな」
「たぶん、安全上の理由からだったんだろうね。今だって、このマンションに住ん
でるのは、きっとネルフ関係の人たちだけだと思うよ」
二人はそんな事を話しながら、いつもの階でエレベーターを降り、右へ曲がり、
突き当たりの部屋の前までやってきた。
何度もここを訪ね、そして久し振りに見る懐かしいドア。何もかも変わってしまった
第三新東京市の中で、ここだけは二人の記憶にあるままの姿だった。
二人はこのドアを見て、やっと自分たちが第三新東京市に戻ってきたんだと実感
できた。二人はドアばかりに気を取られていた上、いまさら表札など見る必要も
ないので気が付かなかったが、そこには、二人の知っている人物の名前が新たに
書き加えられていた。
『ピンポーン』
二人は揃ってチャイムを押した。
「はーい!」
すると、中からかわいい声の返事が返ってきた。その声を聞き、二人は思わず顔を
見合わせる。
今の声に聞き覚えがあった。しかし、まずここにはいないであろうと思われる
人物の声に良く似ていたので、疑問に思ったのだ。
「はーい、どなたですか?」
ドアを開き、そう言って出てきたのは、想像した通りの人物、綾波レイだった。
「あ! 鈴原くん、相田くん。戻ってきたんだ! 待ってて、今碇くん
呼んでくるから」
レイはそう言うと、茫然としている二人を残し、ドアを開けたまま部屋の中に走って
行った。
「……なんで綾波がここにおるんや?」
「さぁ? パイロットのミーティングが何かかな?」
「今、綾波、笑うとらんかったか?」
「トウジにもそう見えた? 目の錯覚じゃなかったんだ」
二人が信じられないものを見たような顔をしていると、シンジが走ってきた。
「トウジ! ケンスケ! 戻ってきたんだ! 一体
いつこの街に!?」
「ようシンジ、久し振りやな。元気しとったか? ワシはついさっき、この街に
着いたとこや」
「僕もそうなんだ。それでとりあえずシンジんとこに挨拶しようと思ってね。そし
たらトウジとばったり会っちゃってさ、二人で来たってわけさ」
「そうだったんだ……でも二人とも元気で良かったよ」
「シンジもな。街が消えたりして大変そうだったから、心配してたんだ」
「うん、ありがと。僕は大丈夫だよ。そ、そうだ! トウジ、足は? 足は
大丈夫なの?」
「ああ、見てみ。この通り、ちゃんと付いとる。しかも義足やあらへん。ちゃんと
生身の足や。つねれば痛いし、ちゃんと血も出るんや」
「え? でもどうして?」
「それがワシにもよう分からんのやけどな。何でも、バイオなんとかって技術で
治した言うとったわ」
トウジの話を聞き、シンジはダミーシステムの事を思い出していた。恐らく、あれ
の技術の流用だろう。シンジは、システム自体には嫌悪感を持っていたが、今は
トウジの足が元通りになったのが素直にうれしかった。そして、技術は所詮技術。
それをどう使うかは全て人間にかかっている。人間は、神にも悪魔にもなれるんだ
という事を、シンジは改めて思い知っていた。
「いやー、しかし足の一本くらい簡単に治してしまうとはさすがネルフや。一時は
どうなる事かと思たわ。足が一本のうて何が困る言うたら、便所に入れん事や
からな。
「え、便所に?」
「せや。ワシはどうもあの洋式便所は性に合わん。やっぱり日本人は和式便所で
ないとアカン。その点、この足はちゃんと動くし、ほんまに助かっとるわ」
「でもトウジ、どうせなら加速装置とか付けてもらえば良かったのに」
「アホ! ワシはサイボーグやあらへん。これはちゃんとした生身の足や」
「いやー本当に惜しかったなー。トウジが加速装置付けてれば、ネルフの技術を
間近で見る事ができたのに……。僕は医学には興味ないからね。……しかし、
本当に惜しかったなー」
「……人ごとや思うて。それやったらケンスケが改造されたらええやないか」
「分かってないね。こういうのは他人のを見るのが楽しいんじゃないか」
「ほんま、自分の欲望に正直なやっちゃな」
二人はいつものように漫才を始めた。シンジはいつもと変わらぬ二人に安心し、
そして自分に余計な気を使わさぬよう、明るく振る舞ってくれる二人がうれしかっ
た。
それと同時に、自分にこんなに気を使ってくれる友人を傷つけてしまった自分が
許せなかった。
「トウジ、僕を殴ってくれ。トウジの気の済むまで殴ってくれ。いくら治ったとは
言え、僕はトウジの足を……僕は……」
「シンジ、ええんや。あれは事故や。ワシは何とも思とらへん。せやから、シンジ
が気にする事あらへん」
「だけど、だけど僕は……」
「シンジ、ワシがええ言うとるんや。せやからもうええんや。これ以上言うと、
ほんま怒るで」
「…………トウジ」
「シンジ、トウジがいいって言ってんだ。だからそれでいいじゃないか」
「せや。それにあれはシンジがやったんと違うんやろ?」
「それは……そうだけど……え? どうしてトウジがその事を?」
「実はな、入院しとるワシんとこへ、ネルフの総司令ちゅうんが見舞いに
来たんや」
「父さんが!?」
「そしてワシにこう言うたんや。あの時、シンジは人の乗っとるもんとは戦えん
言うて攻撃命令を無視したさかい、自分が司令室からエヴァを操っとったんや、
言うてな。せやからシンジに罪は無い。恨むんやったら自分を恨んでくれ。シンジ
を恨まんとってくれ、言うてワシの前で土下座したんや」
「父さんが……そんな事を?」
「それにな、ワシの足は見ての通りちゃんと元通りなったし、妹のケガも良うなっ
た。エヴァのパイロットの退職金と慰謝料や言うて、えらい額の金ももろた。せや
から、ワシは何とも思とらへんのや。な、シンジ、ワシらこれからも友達や」
そう言ってトウジはシンジに手を差し出した。シンジは少しためらいながらも、
トウジの手を握った。すると、トウジは強く握り返し、左手も重ねた。シンジも
つられるように左手を重ね、強く握る。そして、そこにケンスケも手を重ねる。
「シンジ、僕たち三人は、いつまでも友達だからな」
「そう言うこっちゃ」
「ありがとう。二人とも、ありがとう!」
シンジは二人の手を握り、涙を流していた。
「なんや、シンジの泣き虫は変わっとらんな」
「ほんと。とてもエヴァのパイロットとは思えないね」
軽口をたたきながらも、二人とも涙目になっていた。
そんな男くさい世界になかなか入れなかったレイが、控えめに声を掛ける。
「……あの、ジュースとお菓子用意したから中へどうぞ」
「あ、ありがとう綾波。それじゃあ二人とも中へ入って」
シンジは涙を拭きながら、二人を招き入れようとした。
「ええんかシンジ、ワシらお邪魔しても? 」
「え? どういう事?」
「だって、綾波がいるって事は、パイロットのミーティングか何か
してるんだろ? 僕たちはまた今度でもいいんだけど……」
「え……いや……そういうわけじゃないんだけど……」
「それやったら、何で綾波がここにおるんや?」
「まさか、ただ遊びに来てるだけってわけじゃないんだろ?」
「だから……その……話せば長くなるんだけど……どう言えば
いいかな……」
「?」×2
「私も碇くんと一緒に住んでるの」
シンジが言いにくそうにしていると、レイがあっさりと爆弾発言した。
シンジは二人のリアクションに備え、目を閉じ、身を固くした。が、予想外に二人
は何も言ってこなかった。
どうしたのかと思い目を開けると 、トウジとケンスケはやや呆然としていた。
レイの言葉の意味を理解するのに、少し時間が掛かっているようだった。
そして……。
「なに〜〜〜!? 綾波も一緒に住んどる〜〜〜!?
そりゃどういうこっちゃ、シンジ?」
「そ、そう言えば惣流の姿が見えないけど……まさかシンジ、
惣流追い出して綾波に乗り換えたのか?」
「何無茶苦茶言ってんだよ! ちゃんとアスカもいるよ。
今日は委員長の所に遊びに行ってるだけだよ」
「それやったら何か? シンジはミサトさんと惣流だけやのうて、綾波とも
一緒に住んどるっちゅう事か?」
「さらにイヤ〜ンな感じ」
「許さん! たとえミサトさんが許しても、ワシは絶対に許さん!
シンジ、ワシらまだ中学生やぞ。そんな事が許されてええ思とるんか……」
「ト、トウジ……。何も泣かなくても……」
「だいいちシンジ、ここにはもう部屋なかったじゃないか。綾波はどこで寝泊まり
してんだ? 惣流が綾波と同じ部屋で寝るとは思えないし……。ま、まさか、
シンジの部屋で寝てるんじゃないだろうな!?」
「あ〜〜〜! なんちゅうこっちゃ! ワシの知っとる臆病で
気の弱いシンジはどこに行ってしもたんや〜」
「諦めよう、トウジ。人間は変わるものさ。もう僕らの知ってる
シンジはいないんだ」
「何でそうなるんだよ!? そんなワケないだろ!壁に穴開けて隣と繋いで
るんだよ。……もう、ちゃんと説明するから中に入ってよ」
「よーし!徹底的に説明してもらおやないか」
「そうそう、徹底的にね。隠し事は無しだぞ、シンジ」
『はぁ〜、やっぱりこういう反応をしたか……。ま、分かってはいたけど……』
シンジは、二人の反応が予想通りだったので、やれやれといった感じで溜め息を
ついていた。
一方、レイは、そんな三人をキョトンとした目で見ていた。
多くの人と関わって生きるために様々な常識を身に付け、年頃の男女が一つ屋根の
下に住むのがあまり一般的でない事は知っているのだが、トウジやケンスケがなぜ
ここまで大騒ぎするのかは良く分からなかった。
『どうしてこんなに大騒ぎするのかなぁ? 好きな人といつも一緒にいたい
と思うのは普通だと思うんだけど……』
レイはそう思ったが、あえて二人には聞かなかった。そして、それはシンジにとって
は幸運だった。もし、レイがトウジたちに質問していたら、今頃シンジはどうなって
いた事か……。
ともかくレイは、シンジ達と一緒にリビングへやってきた。リビングには、レイの
用意したお菓子とジュースが四人分、用意されていた。
シンジはいつものように自分の席に座る。そしてレイは、まるでそうするのが
当然のように、シンジの隣に座る。トウジはその事を何とも思わなかったよう
だが、ケンスケは目ざとく気が付いたようだった。
『これは……。シンジのやつ、絶対、綾波と何かあったな……。少なくとも、
心が通じ合ってる。絶〜〜っ対に全て聞き出してやるからな。覚悟しろ
よシンジ。』
ケンスケのメガネは怪しく光りだしていた。
シンジはトウジとケンスケに、レイと暮らすようになった経緯を話し始めた。
もちろん、二人に話すと問題のありそうな所は省いているが……。
所々でレイも話をフォローしてくれたので、話ベタなシンジでも何とか説明する事
ができた。
「なるほどなー。ま、誰でも一人は寂しいもんやからな。あないな部屋で一人で
住んどったら、寂しゅうなってもしゃあないわな」
「ほんとだ。壁に穴が開いてて隣と繋がってる」
「それやったらそれと早よ言うてくれたらええやんか。シンジも水くさい
やっちゃなー」
「何言ってんだよ! 僕が説明する前に勝手に大騒ぎしたのはそっち
じゃないか!」
「だけどシンジ、いきなりこの状況を見て、誤解するなって方が無理だよ」
「まったくや。シンジもそう思うやろ?」
「う。た、確かに……」
「そうなの、碇くん?」
「多分、今のが一般的な反応だと思うよ」
「ふーん。そうなんだ」
「しかし、シンジも大変やな。さらに忙しゅうなったやろ?」
「え、どういう事?」
「家事の事だよ。シンジはこれまで、炊事、洗濯、掃除と殆ど一人でやってきたん
だろ? 綾波が増えたって事は、これまで以上に仕事が増えるって事だろ?」
「あ、その事。僕も最初はそうなるかと思ったんだけど、綾波は何でも手伝って
くれるから、前より楽になったくらいだよ。本当、綾波には感謝してるよ」
「そんな、感謝だなんて。私はただ、碇くんのお手伝いがしたいだけだから……」
「あ、ありがとう綾波。うれしいよ」
「碇くん……」
二人は見つめ合い、二人だけの世界に突入しかけた。
しかし。
「かーーーっ! こない目の前でいちゃつかれたらやっとれんわ、
まったく」
「ほんと。見てるこっちが恥ずかしくなるよ。喉が乾いて仕方ないよ」
「まったくや」
そう言って、二人ともジュースを飲み干す。
「シンジ、ジュースおかわりや」
「僕も」
「あ、はいはい。すぐ持ってくるよ」
シンジは、赤くなりながらも立ち上がろうとした。
「あ、碇くん。いいわ、私がやるから。碇くんは座ってて」
「え? いいよ、綾波。そんな事までしてくれなくても」
「ううん、いいの。私にやらせて」
「でも……」
「碇くん、私、前に言ったでしょ。お客さん扱いされたくないって。だから、
私に任せて。ね。」
「僕は綾波の事をお客さん扱いなんてしてないよ。綾波は一緒に暮らしてる家族
なんだからさ。綾波こそ何だか無理して僕の事を手伝おうとしてない? 綾波は僕
に気を遣う必要なんてないんだよ。普通にしてくれれば、それでいいんだよ」
「私は無理なんてしてない。私はただ、碇くんと一緒に何かしてるのがうれしいの。
碇くんのために何か役に立てるのがうれしいの。だからお願い、私に任せて」
「あ、綾波、ありがとう。うれしいよ、本当にうれしいよ……。」
シンジはレイの言葉に感動し、手を握り、レイを見つめている。
「碇くん……」
「綾波……」
レイもシンジを見つめている。二人は、今度こそ二人だけの世界に
突入してしまった。
二人は何をするわけでもなく、ただお互いを見つめ合っていた。
そんな時、ふと視線を感じ、そちらに振り向いた。
するとそこには、ニヤニヤしているトウジとケンスケがいた。
(ま、無理もないよな)
「あ、僕たちの事は気にしないで、続けて続けて」
「しかし、ほんま二人とも仲ええなぁ。手ぇなんか握って見つめ合ったりして。
このままどうなるんかと心配したわ」
「え?あ……ご、ごめん、綾波」
シンジは真っ赤になりながら、慌ててレイの手を離す。
「私は別にいいのに……」
レイは少し残念そうにしていた。
「しかしトウジ、今の会話聞いたかい? お互いの事をかばい合ったりして、あれ
ってまるっきり新婚夫婦の会話そのものだよな」
「ああ、まったくや。今の様子からすると、案外そうなる日も近いんちゃうか?」
「言えてるね」
二人に冷やかされ、シンジもレイも真っ赤になっている。しかし、あえて二人は
否定しようとはしなかった。
レイは、照れながらもうれしそうにさえしていた。
「……しかし、この場に惣流がおったら、さぞ面白い事になるやろ
な」
「確かに面白い事になるだろうね。想像しただけでも楽しいや。……そうだ。
シンジ、今度カメラ持ってくるからさ、惣流の前で今のように綾波とイチャ
ついてくれないか? ぜひ撮影したい」
「そんときゃワシも呼んでくれよな、シンジ」
「二人とも恐ろしい事言わないでよ。こんな所アスカに見られたら
何されるか……。考えただけでも恐ろしいよ」
「なるほど。それほど惣流の事を恐れるって事は、今までにも何度か
惣流のやきもちが爆発した事があるって事だな」
「うっ!」
「てー事は、それだけしょっちゅう綾波とイチャついとるっちゅうこっちゃ
な、シンジ」
「うっ!」
シンジはすっかり二人に見抜かれていた。トウジとケンスケは、シンジとレイを
ニヤニヤしながら見つめている。
「あ、あの私……ジュース持ってくるから……」
二人の視線に耐えられなかったのか、レイは逃げるようにキッチンへ向かった。
レイがいなくなったのをいい事に、二人の質問はさらに具体的になった。
「シンジ、綾波と何かあったんだろ? 僕たちにだけこっそりと
教えてくれよ」
「そーそー。ワシら親友やろ? 親友の間で隠し事はいかん。
ほら、綾波もおらんようになったんや、いい加減白状せえ」
「な、何言ってんだよ二人とも! 何もあるわけないだろ!」
「隠すなよ、シンジ。何にも無いのに普通あんなにまではしてくれないぞ」
「せや。誰にも言わん言うとるやないか。そなにワシが信用でけへんのか?」
「だから、本当に何も無いんだからしゃべりようがないじゃないか!」
実際には色々とあったのだが、さすがにそれらの事を話すとどうなるかくらいは
シンジにも分かっていたので、絶対に話さないと心に決めていた。
そして、シンジが絶対に話さないつもりなのを感じ取った二人は、作戦を変える
事にした。
こういう時のトウジとケンスケは、恐ろしいほどに息が合う。目配せも無しに、
お互いの考えが分かったようである。
「ところでシンジ、綾波はいつからあんな風に笑うようになったんだ?」
「え?」
「綾波が転校してきてから随分と経つけど、笑ってる顔なんか今日初めて見たよ」
「まったくや。ワシも今日初めて見たわ。恐らく、クラスの連中も見た事ないんと
ちゃうか?」
「ああ、そう言えば一緒に暮らすようになって、綾波は良く笑うようになったね。
でも、それ以前にも何度か笑ってるとこ見た事あるよ」
「ほんまか、シンジ?」
「うん。本当だよ」
「……なるほど、やはりそういう事か。」
「え?」
「どういうこっちゃ、ケンスケ?」
「いいかい二人とも。普通、笑顔ってもんは、嫌いな相手や信用してない人
には見せないもんだろ?」
「うん、そうだろうね」
「綾波は転校して来てから笑った事は無かった。少なくとも、僕やトウジは今日
初めて見たし、クラスのみんなも綾波が笑ってるとこなんて見た事ないだろうと
思う。まあ、嫌われてたって事は無いと思うけど、少なくとも信用はされてなかっ
た。ま、興味が無かったんだろうな、綾波にとってクラスメートってもんが。
だけど、その綾波がシンジには笑顔を見せた。これが何を意味するのか……
恐らく、シンジの事を信用できる人間だと思い、興味を持った。
そして、嫌いじゃなかったからだろう。
「そ、そうかな」
「まず間違いないね。そして、その信用してるシンジと一緒に暮らしてるから
こそ、精神的に安心し、シンジ以外の人間、つまり僕たちにも笑顔を見せて
くれるようになったんだよ、きっと」
「なるほど。確かにスジが通っとるな」
「だろ。そして、ここからが重要なんだが、笑顔にはもう一つの意味がある。
普通どんな女性でも、笑ってる顔が一番かわいく見えるものだろ。そして、
その事を本人たちも知っている。ま、綾波が意識的にやってるとは思えないから、
無意識のうちになんだろうけど……。そして、その笑顔を初めてシンジに見せた。
これが何を意味するのかは、いくらシンジでも分かるよな?」
「え? え?」
「かーーっ! ホンマ鈍いやっちゃなあ。つまり、綾波は、無意識のうちに
シンジにかわいく見られたいと思っとるんや」
「つまり、シンジの事が好きだって事だよ」
「え、そうなるの?」
「恐らくね」
「今の綾波見て気付かんのはシンジくらいのもんや」
『やっぱりそうなのかな……。委員長の気持ちにも気付かないトウジでも分かる
んだから、そうなんだろうな……。そりゃ、綾波には好きって言われた事はある
けど……』
「で、シンジは笑うようになった綾波の事をどう思うとるんや?」
「何も感じてないって事は無いよな、シンジ。男としてさ」
「う、うん。綾波の事は前から綺麗だなと思ってたけど、良く笑うようになって
から……その、何と言うか……とてもかわいくなったって言うか……
あっ!!」
シンジはそこまで言って、二人の誘導に引っ掛かった事に気が付いた。しかし、
気付いた時にはもう遅かった。よりによって、トウジとケンスケの前で、レイの事
を綺麗とかかわいいとか言ってしまったのだ。
案の定、二人はニヤニヤとしている。
「あ、いや、だから……今のは……その〜」
「とうとう言うたな、シンジ。もう言い逃れはでけへんぞ。」
「さあ、綾波と何があったのかしゃべってもらおうか」
「ず、ずるいよ今のは!」
「僕たちは別に、シンジに無理やりしゃべらせたわけじゃないよ」
「そーそー、シンジが自分から言うたんやないか」
「だ、だからあれは……」
「問答無用!」
「掛かれ〜〜!」
「わー! ちょ、ちょっと二人とも止めてよ〜〜〜!」
トウジはシンジに間接技を掛け、ケンスケはシンジの体をくすぐり始めた。
「いたたたた! ちょっとトウジ、痛いよ……あははははは!!
やめてケンスケ! 息が……息ができない」
「止めて欲しかったら、おとなしゅうしゃべるんや」
「そうそう。僕らがおとなしくしてるうちにしゃべった方が身のためだぞ、シンジ」
「こ、これのどこがおとなしいんだよ! いたたたた!」
「甘いよシンジ。口を割らせる方法なんていくらでもあるんだぞ。僕の持ってる本に、
『捕虜から情報を聞き出す百の拷問』てのがあるんだけど、
それはそれはエグイ内容ばかりだぞ」
「ま、まさか、そんなのやる気じゃ!?」
「それはシンジの心掛け次第だな。さ、シンジ、おとなしくしゃべるんだ。
綾波と何があった?」
「だから僕は何も……」
「うーん……。ここまでやってもしゃべらんとはな。余程重大な事があった
に違いない」
「まったくだね。絶対に聞き出さなきゃね。」
「あ、あの……」
さらにシンジへの拷問が続けられようとした時、頬を染めたレイが、ジュース
を持って入って来た。
「あ、綾波!? い、いつからそこに!?」
「………………」
「ま、まさか今の話……聞いてた?」
シンジが恐る恐るそう聞くと、レイは真っ赤になりながら、静かにうなずいた。
「は……はは……ははははは……」
綺麗だとかかわいいとか言っていたのを、よりによって本人に聞かれるとは……。
シンジはもう笑うしかなかった。
トウジとケンスケは、この後のシンジがどう反応するのかを見届けるため、シンジ
を開放した。するとシンジはなぜかその場に正座をし、真っ赤になってうつむいた
まま、何もしゃべらなくなってしまった。
一方、レイは、ジュースをテーブルに置くと、先程よりもさらにシンジに近い位置
(ほとんどくっつきそうなほど)に同じように正座して座り、真っ赤になってうつ
むき、何もしゃべらなくなってしまった。
「何や? 二人とも固まってしもた。まるで見合いやな」
「でもトウジ、見合いってのは、文字通り向かい合うもんだろ。この場合、隣に
座ってるんだから、夫婦雛って言う方が正しいんじゃないかな」
「確かに言えとるな」
「でもどうする? このままじゃ、いつまでたってもこのままだよ」
「うーーーん。そやなぁ……。お? 惣流戻ってきたんか。久し振り
やな。お邪魔しとるで。」
「え!? ア、アスカ!? ち、違うんだアスカ!
これは、その、トウジ達がからかっただけで、僕と綾波は別に何も……」
「そ、そうなの。私と碇くんは別に何も……ほんとよアスカ」
シンジとレイは慌てて言い訳をした。しかし、二人の前にはアスカの
姿は無く、笑い転げるトウジとケンスケがいるだけだった。
「あはははははははは!!! ト、トウジ、今のはちょっと、
ははははははは!! か、かわいそうだよ!」
「ははははははははは!!! ま、まさかこない簡単に
引っ掛かるとは! あ〜おかしい! ははははははははは!!
あ〜苦しい!」
シンジとレイは、ようやく自分たちがからかわれた事に気が付いた。
「もー何だよ二人とも! そんなに僕たちの事からかって楽しいの?」
「聞いたかケンスケ?< FONT SIZE=+2>僕たちやと」
「ああ、確かに聞いたよ。シンジ、何だかんだ言ってもしっかり綾波の事、自分の
彼女扱いしてるじゃないか」
「あう!」
シンジは反論できなかった。口ではこの二人に絶対勝てないと改めて思い知らされて
いた。そのシンジの横で、レイはとてもうれしそうに赤くなっている。
そんな二人がおかしいのか、トウジ達はなおも笑い続けている。シンジは、諦めて
二人が笑い止むのを待つ事にした。
「あはははははは!! く、苦しい!ははははは! い、息が……」
「くははははは!! み、水!!」
「まったくもー。息が出来なくなる程笑う事ないだろ」
そう言いながらも、シンジはレイが持ってきてくれたジュースを二人に渡した。
しかし、そのジュースは不幸な事に炭酸飲料だった。そのため、二人は
死ぬほど咳き込んでいた。そして、それを見たシンジは、少し気分が
良くなった。
「あー、死ぬかと思たわ」
「本当だね。でも、こんなに笑ったのは久し振りだよ」
「言われてみればそうやな。ここんとこ、暗いニュースばかりやったからな」
「トウジ、知ってるかい? 心からの笑いって、体にとってもいいんだって言うよ」
「あー分かる気がするわ。何か気分がすっきりしとるわ」
「笑われる方の身にもなってよ!」
「ほんとよ」
珍しく、レイも少し怒っているようだった。
「ははは、スマンスマン。しかしホンマ、シンジはからかいがいがあるわ」
「ほんと。やはり僕たちにとってなくてはならない存在だね、シンジは」
「……素直に喜べない……」
「まぁまぁシンジ、いいじゃないか。……ところでトウジ、僕たちシンジに何か
聞くためにここに来たんじゃなかったっけ?」
「あ、そう言や、何ぞ聞こ思とったはずやな」
「僕に? いったい何?」
「いや……それがその……ケンスケ、覚えとるか?」
「それが、今の騒ぎですっかり……」
「はぁ〜!?」
「う〜〜〜ん」
「思い出せない」
どうやら、二人は本当に忘れてしまっているようだった。シンジとレイは、ただ
呆れていた。
「あ、思い出した。シンジ、今度学校が再開されるのは知ってるだろ?」
「うん。月曜から再開するってミサトさんから聞いてるけど・・。でも、学校が
再開される程、みんな戻ってきてるのかな?」
「ああ、その事なんだけどさ。パパのデータ見たんだけど、壱中に子供が通ってる
家庭が最優先で戻ってきてるらしいんだ」
「へぇ〜、そうなんだ。何でだろうね? ま、僕はその方がいいんだけど……」
この動きの影に、ある人物の働きがあった事は言うまでもない。
「それでさ、せっかく今は休みなんだから、どこかに遊びに行こうって事に
なったんだ」
「あー! そやったそやった。それでなシンジ、ワシら今年はまだ水泳の授業が
無かったから、海に行こいう事になったんや」
「海?」
「せや、シンジも行くやろ?」
海、それは泳げないシンジにとって最も行きたくない場所だった。
しかし、今断れば、なぜ断るのかを追求され、泳げないのがばれてしまう。
レイには泳げない事を知られたくない。
しかし、ほぼ毎日LCLに漬かっているので、水への恐怖感は消えている。ひょっと
したら泳げるようになっているかも知れない。
という淡い期待から、シンジも海に行く事にした。
「うん、僕は別にいいけど。で、いつどこに行くの?」
「ああ、それはまだ決まっとらんのや」
「え、決まってないの?」
「そうなんだ。僕たちは月曜まで休みだからいつでもいいんだけど、シンジはネルフ
のテストとかあるだろ? だから、シンジの休みを聞いてから決めよう
と思って、こうして聞きに来たんだよ」
「それであんなにからかったワケ?」
「まあまあ、その事はもういいじゃないか。で、どうするんだい? ネルフでも休み
くらいあるんだろ?」
「うん。確か、この土日は何の予定も無かったと思うけど」
「よっしゃ。土曜か日曜やな。そしたら、次はどこに行くか決めんといかんな」
三人が海の事を話していると、レイが話に参加してきた。
「碇くん、海に行くんだ。いいな……。私、海って見た事ないから……。
うらやましい」
「え? 綾波、海見た事ないの?」
「うん。私、この街から殆ど出た事ないから……」
「そうなんだ……」
「へー、今時珍しいなー。海を見た事ないやなんて」
「ほとんだね。電車に乗ればすぐに海に行けるのに」
「じゃ、綾波も一緒に行く?」
「え、いいの碇くん!?」
レイは顔を輝かせてシンジを見ている。
「いいよね、二人とも」
「ああ、もちろんや。こういう事は大勢おった方がおもろいからな。せや、綾波が
来るって事は、惣流も来るっちゅう事やろ。それやったら、イインチョーも誘って
みんなで行こやないか」
「あ、いいね、それ」
『ナイスだトウジ! 綾波と惣流と委員長のプライベートな水着……。
売れる! これは間違いなく売れる! さっそく帰ってカメラの
調整やフィルムやディスクの準備をしなくちゃ。忙しくなるぞ。』
「僕、ちょっと急用を思い出したから、今日は帰らせてもらうよ」
「何やケンスケ、まだ何も決めとらんのやぞ」
「惣流や委員長の予定聞かなきゃ決められないだろ。決まったら電話してよ。これ、
今の住所と電話番号だから」
そう言って、ケンスケはシンジとトウジにメモを渡した。
「それもそやな。ワシも引っ越しの片付けがあるんで、今日はこれで帰らせてもらう
わ。これが電話番号や」
そう言って、トウジもメモをシンジとケンスケに渡した。
そして、レイとシンジは二人を玄関で見送る。
「シンジ、ちょっと頼みがあるんやけどええか?」
「何?」
「惣流から、イインチョーを誘ってくれるように頼んで欲しいんや」
「別にいいけど、トウジが直接委員長誘えばいいじゃないか」
「ア、アホ! 何でワシがそないな恥ずかしい事せなあかんのや。それに、ワシは
イインチョーの電話番号知らんのや」
「ふーん。そうなんだ……」
シンジは先程の仕返しにトウジをからかおうと思ったが、実際自分は、傍から見れば
同棲していると言われても仕方がない状況で、圧倒的に自分の方が不利だったので
諦める事にした。
「うん、いいよ。アスカに頼んでおくよ」
「スマンな。じゃあ二人の予定が分かったら連絡してくれ」
「それじゃあシンジ、二人っきりの所を邪魔して悪かったな。邪魔者は消えるから、
たっぷりと二人っきりを楽しんでくれ。」
「そうそう、やかましい惣流がおらん今がチャンスや。頑張れよ
シンジ」
「だ、だからそういうんじゃないって言ってるだろ!」
シンジは真っ赤になって抗議したが、二人は笑いながら出て行ってしまった。
後には、真っ赤になった二人が取り残されていた。シンジはこれまで、レイと二人っ
きりになった事はあまりなかった。また、二人っきりになったとしても、その事を
あまり意識した事はなかった。現に、今日もトウジ達が来るまでは何も意識して
なかった。
しかし、さすがにあれだけ二人っきりを強調されると、どうしてもお互いを意識
してしまう。しかも、直接本人に言ったわけではないが、レイの事を綺麗だとか
かわいいと言っていたのをレイに聞かれているので、シンジはどんな事を話せば
いいのか分からなくなっていた。
もっとも、それはレイも同じだった。
「………………」
「………………」
しばらくの沈黙、そして……。
「あ……あの……碇くん」
「え? な、なに!? 綾波」
「わ、わたし……海って行った事ないから、何を持っていけばいいのか
分からないの……」
「あ、そうか……。でも僕も女の人が何持っていくかなんて分からないから、
後でアスカかミサトさんに聞いてみて。ごめんね、役に立てなくて」
「ううん、いいの。後で二人に聞いてみる」
「うん。そうするといいよ」
「………………」
「………………」
そして再び沈黙。
『う〜ん、気まずい……一体何を話せばいいんだろう……。あ、そうだ』
「綾波、ちょっと早いけど、僕、夕食の準備するから……」
そう言ってシンジはキッチンへ向かう。何かしてる方が気まずくならずに済むから
だ。
「あ、碇くん、私も手伝う」
レイにとって、シンジと一緒に食事の準備をするのは、最も好きな時間だった。
「う、うん。そうだね、一緒に作ろう」
「うん!」
結局、キッチンに二人っきりでいる事になったのだが、いつものように準備を
するうちに自然に硬さも取れ、いつもの二人に戻っていった。
なお、この日の夕食は、やたらと手の込んだ豪華な食事になった。
やがて、二人が帰ってくればいつでも食べられるという頃になって、ミサトとアスカ
が帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「お帰りなさい。……あれ? 二人とも一緒だったんですか?」
「そうじゃないのよ。マンションの入口でばったりアスカと会ったのよ」
「そうだったんですか」
「ところでシンちゃん、どうしてシャツが裏表逆なの?」 ニヤニヤ
「え? ……これで合ってますよ。何言ってんですかミサトさん」
「ちっ! かからなかったか。今日一日中、レイと二人っきりだったんでしょ?
シンちゃんってホント奥手ね」
「は?」
「……ミサト、私たちをミサトの基準で見ないで欲しいわね」
「? あの……アスカ、どういう事?」
「シンジは分からなくていいの。ところでシンジ、レイと何にもなかった
でしょうね?」
「何よアスカ、やっぱり心配してんじゃないの」
「アスカってトウジやケンスケと同じ事言うんだね」
シンジは溜め息をついた。
「何? あいつら帰ってきてんの?」
「うん。今日遊びに来てたんだ」
「ふーん、そうなんだ」
『それなら大丈夫か……』
「あ、そうだアスカ。この土曜か日曜、海に行くんだけど一緒に行く?」
「え? シンジ、それってデートの誘い!?」
アスカは瞳を輝かせてシンジを見つめている。
「お〜シンちゃん、やるわね〜」
「え? い、いや、そうじゃないんだ。トウジやケンスケも一緒なんだけど……」
途端にアスカは不機嫌になる。
「なんでこの私があいつらに水着姿を見せてやらなきゃなんない
のよ! 私、行かない!」
「ほ〜。すると、シンちゃんだけなら、いつでも水着姿になると」
「う、うるさいわね!」
「あの……アスカ、私も行くんだけど……」
「それを早く言いなさいよ! レイが行くんなら当然私も行くわよ!」
(何がどう当然なんだか……)
「それでアスカ、お願いがあるんだけど……」
「何よ急に改まって」
「私、海行った事ないから何持っていっていいか分からないの。だから、教えて
欲しいの……」
「え? あんた海初めてなの? 珍しいわね今時。……いいわ、後で教えてあげる
わ」
「ありがとう、アスカ」
「アスカ、委員長も誘って欲しいんだけどいいかな?」
「ヒカリを? 何で?」
「トウジがさ、どうせなら大勢で行った方が楽しいから、アスカから誘って欲しい
って言ってたんだ」
「ふーん……。私はヒカリを誘い出すエサか」
「え?」
「いいわ。ヒカリに電話してあげる。で、いつどこに行くの?」
「アスカと委員長の予定を聞いてから決めるって事になってるんだ」
「ふーん……そうなんだ」
「ちょっと待ってあなた達!」
「え? 何ですか、ミサトさん?」
「そう言う事は、まず作戦部長の私に相談してもらわないと困るじゃ
ないの。大切なパイロットが三人揃っていなくなるなんて……使徒が現れたら
どうするの?」
「えー!? ミサト、行っちゃいけないの?」
「う〜ん……。あなた達は修学旅行にも行かせてあげられなかったから、できる
だけ行かせてあげたいんだけど……。う〜ん……よし! 仕方ない! 私が
保護者としてついていってあげるわ!」
「保護者ぁ〜? ミサトが?」
「保護者ですか? ミサトさんが?」
「保護者?」
「そ。私がいれば何か起きた時にもすぐ対応できるでしょ。ほんとは私も忙しいん
だけどね。優しい上司に感謝しなさいよ〜」
「うまい事言っちゃって。ほんとは自分が遊びたいだけなんじゃないの?」
「アスカ、私は別に、許可しなくてもいいのよ〜〜〜」
「ミサト、そういうやり方はずるいわよ」
「いいじゃないアスカ。ミサトさんだって遊びたい時くらいあるだろうし」
「ちょっとレイ、私は本当に忙しいのよ。仕方なくついていってあげるんだから、
勘違いしないでね」
「あ、ご、ごめんなさい、ミサトさん」
「謝る必要なんか無いわよ。ミサトだって遊びたいっていうのはほんとなんだから」
「ほー。まだそういう事を言う?」
「まーまーアスカ、せっかくミサトさんがついてきてくれるって言うんだからお願い
しようよ。その方が僕たちだって安心して遊べるじゃないか」
「さっすがシンちゃん、いい事言うわね〜。で、まだどこに行くかは決まって
ないって言ったわよね?」
「はい」
「それじゃあ、この土日を利用して根府川へ一泊旅行をしましょう。あそこには
ネルフ直営の海の家があるのよ」
「ネルフ直営の海の家〜〜〜!?」×2
「碇くん、海の家って何?」
「ああそうか、綾波は知らないのか。海の家っていうのはね、海水浴に来た人たち
のための様々な施設の総称だよ。大きいのから小さいのまで色々あるけどね」
「しっかし……呆れたわね〜。ネルフってそんなもんまでやってたわけ〜?」
「何しろ、ネルフの運営には莫大な費用が掛かるのよ。だから、少しでも利益の
上がりそうな物は色々やってるのよ。ネルフマークの商品が多いのもそのせいよ。
あれって結構人気商品で、いい稼ぎになるのよね〜」
「あっそうそう。それとね、今回のネルフ情報公開の一環で、ネルフと使徒との戦い
のドキュメントを、全二十六巻セットで売り出す事になったのよ。初回特典、
結構豪華だから、友達にも宣伝しておいてね」
「は、はい」
『ケンスケは絶対に買うな……』
「あ、でもミサトさん。まだ委員長の予定を聞いてないんですけど……」
「大丈夫よシンジ。鈴原が誘ったって言えば、絶対に来るから」
「ああ、なるほど」
「さ、詳しい事はご飯食べてからにしましょ。おなかすいちゃった」
「そうね。おなかペコペコだわ」
「あ、はい。すぐ食べれますよ」
そう言って、四人はかなり豪華な夕食を取りながら、旅行の事を楽しく話し合って
いた。
そして食事が終わると、ミサトは自分の部屋に閉じこもり、ガサゴソと何かを始めた。
シンジとレイは、いつものように仲良く後片付けをしている。
そんな二人を横目で見ながら、アスカはヒカリに電話を掛けていた。
「……というわけで、土曜日の午前十時に駅前集合って事だから、忘れないでね、
ヒカリ」
「うん、分かった。アスカ、私も誘ってくれてありがと」
「ああ違う違う。さっきも言ったように、ヒカリを誘ったのは鈴原よ」
「………………」
ヒカリは急に黙り込む。アスカには、ヒカリが電話の向こうで真っ赤になっている
のが手に取るように分かった。アスカは自分の事のようにうれしく思った。
「ふふふ、良かったねヒカリ。ま、鈴原が誘わなくても私が誘ったけどね」
「う、うん。ありがと、アスカ」
女の子の電話が用件だけで終わるはずもなく、その後二人は海の話などでかなり
盛り上がっていた。
そして、電話を終えた時、シンジ達の後片付けもちょうど終わった所だった。
「アスカ、委員長どうだって?」
「ええ、来れるって言ってたわよ。だから言ったでしょ。鈴原がいればヒカリも来る
って。ヒカリを誘ったのが鈴原だって事教えたら、すごく喜んでたわよ」
「ははは。委員長らしいね。で、委員長は元気そうだった?」
「ええ、元気にしてたわよ。私はヒカリに随分と頼ってたから、私の事すごく心配
してくれてたの。だから、この街に帰ってきてすぐに電話してくれたの。ほんと、
ヒカリには頭が上がらないわね」
「委員長もどこかに疎開してたの?」
「近くの親戚の家にしばらくいたんだって。あの時、この街には何も無かったし、
普通の人じゃ生活できなかったから仕方無いけどね。でもヒカリの家は無事だった
し、街の機能も戻りだして、学校も始まるんで帰って来たんだって」
「へー、そうだったんだ。……じゃあ、僕はトウジ達に電話するから、綾波に色々
と教えてあげて」
「お願いね、アスカ」
「いいことレイ、少しでも疑問に思ったら、遠慮しないで私に聞くのよ。変な
勘違いするんじゃないわよ。いいわね」
「ええ、分かった」
そして、アスカはレイに海での常識や、海に持っていく物を親切丁寧、事細かに
教えていく。普通、そこまで教えなくても……と思われる事まで教えている。
なぜなら、レイは今でも良く勘違いするので、教える方が慎重にならざるを得ない
のだった。
レイは、アスカから聞いた事を真剣にメモしている。そんな様子を見て、レイの事は
アスカに任せようと思い、シンジはトウジ達に電話を掛ける。
「なにぃ〜〜っ! ミサトさんも来る〜〜っ!? よーやったシンジ!
海で焼きそばおごってやる」
「なにぃ〜〜っ! ミサトさんも来る〜〜っ!? よくやったシンジ!
海でかき氷おごってやる」
トウジとケンスケは殆ど同じ反応をしたので、シンジは苦笑してしまった。
そして、シンジが電話を終えた時、レイとアスカの話も終わったようなので、シンジ
はお茶を入れた。
その時、ミサトが両手に洋服を持ってシンジ達の前に出てきた。
「ねーねーあなた達。これとこれ、どっちが海に合うと思う? あ!
そう言えばあの服もいいわね〜。」
そう言うと、シンジ達の答も待たずに再び自分の部屋に入ってしまった。
「……ねぇシンジ。あれが仕方なくついてくる人間の態度に見える?」
「ははは、見えないね」
「ミサトさんも海に行けるの楽しみにしてるのね」
「それならそうと素直に言えばいいのに……。ほんと、一番子供なんだから。
……でも、随分と急に決まったわね。今日は木曜だし明日もテストがあるし、
新しい水着を買いに行く暇もないわね」
「え? アスカ、修学旅行用に買ったのがあるじゃないか」
「でもあれは一度着てるでしょ。一度でも着たら、それはもう古着なのよ」
『シンジに一度見せてるし』
「あ〜あ。せっかく日本の海で初めて(シンジと一緒に)泳ぐんだから、新しい水着
で泳ぎたかったな〜」
「ふーん、そんなもんなんだ……。じゃあネルフの売店で買ったら? あそこにも
水着売ってたよ」
ネルフの売店、それは、勤務時間が不規則なため地上の店に通う機会の少ない職員の
ために造られた店である。売店といっても、大型デパート並みの規模を誇っていた。
「まー確かに水着も売ってたけど、あんまりいいのが無かったのよ。それに、合う
サイズが殆ど無かったし……」
無理のない話である。本来、ネルフのような組織に子供などいるはずがないので、
子供サイズの服など殆ど置いてないのである。
「仕方ないから、今回はあれで我慢するか。あ、そうだレイ。あんた白い水着持って
たでしょ。海にはあれ持っていきなさい。間違ってもスクール水着なんか
持って行くんじゃないわよ」
「そうなの? じゃあそうする。」
「あ、危なかった……」
アスカは思わず溜め息をついた。
『ま、僕はサイズさえ合えばいいから、明日にでも水着買えばいいか』
シンジはこれまで、自分から泳ぎに行く事など無かったので、スクール水着以外
持っていなかった。さすがのシンジも、スクール水着で海に行こうとは思わなかった
ようである。
まだ土曜まで時間があるし、慌てて準備する必要は無いのだが、遠足を前にした
子供のようなミサトを見たため、自分たちも用意をしなくてはいけないような気が
してきたので、それぞれ自分の部屋に戻り、旅行の準備を始める。
それぞれ、色々な思いを抱きながら。
● 碇シンジ
「……えーと、これで全部だな。水着は明日買えばいいし、一泊だからそんなに
着替えもいらないし……」
男が海に持っていくものなど殆ど無く、シンジの準備はあっさりと終わっていた。
「でも海か〜。子供の頃溺れて以来行ってないから、何年振りになるのかな。泳げる
ようになってればいいけど……」
シンジは溺れて以来、水泳の授業はいつも見学していた。そのため、今、自分が泳
げるかどうかも分からなかった。
「多分大丈夫だろう。毎日LCLに漬かってるから水にも慣れたし、あの頃に比べる
と背も伸びたし、何とかなるさ」
と、気楽に考えていたが、重大な事を忘れていた。
海水の中では息が出来ない! という事を。
果たして、シンジの運命やいかに!?
● 綾波レイ
レイは、アスカから教わった事を書いたメモを頼りに、荷物をカバンに詰めていた。
「……えーと、これでいいのかな。もう一度確かめてみよっと」
そう言うと、カバンの中の物を全て出し、一つ一つ確かめながらカバンに入れる。
そして、こんな事をもう三度繰り返している。
「海……碇くんと一緒に海に行けるんだ。初めての海に碇くんと行けるんだ……。
うれしい。私の事も誘ってくれるなんて、やっぱり碇くんって優しいな」
「海ってどんな所なんだろ。どんな所でも、碇くんと一緒なら楽しいんだけど……。
早く土曜日来ないかなぁ〜」
レイは、シンジと海に行けるため、すっかり浮かれていた。そんな時、ふっと
浮かれている自分に気付く。
「ふふふ、私がこんな気持ちになるなんて、以前からは考えられない事ね。私も
変わってきてるのかな? きっと碇くんのおかげね。碇くんが私を変えてくれてる
のね。なんだかうれしいな……。以前、碇くんが遊びに来てくれてた時も、碇くん
が来る日を楽しみに待ってたけど、今度は碇くんと一緒に遊びに行けるんだ。それ
がこんなにもうれしいなんて、こんなにも待ち遠しいなんて……」
「あ〜あ、早く土曜日来ないかなぁ〜。どうして明日もテストなんかあるんだろ。
テストが無ければ明日から遊びに行けるのに……。待ち遠しいな……」
「あっそうだ、早く寝てしまえばいいんだ! そしたら、目が覚めたら
もう明日。明日も早く寝ればもう土曜日ね。うん、今日はもう寝ちゃおっと」
そう決めると、そそくさとパジャマに着替え、布団に入ってしまった。
『…………寝られない。どうして?』
まだ九時前だし、海の事が楽しみで、全く寝つけないレイだった。
『海の事考えてるから寝れないのかな。別の事考えてみようかな……』
『そう言えば今日、碇くん、私の事綺麗だって言ってくれたんだ。私の事かわいい
って言ってくれたんだ。……前にアスカの事は綺麗だって言ってたのに、私には
何にも言ってくれないから、どう思われてるか心配だったけど……。うれしい。
私の事、綺麗だと思ってくれてたんだ。私の事、かわいいと思ってくれてたんだ』
『碇くんが私の事綺麗だと言ってくれた。碇くんが私の事かわいいと言ってくれた。
碇くんが私の事……』
その後、レイの頭の中はシンジのセリフがぐるぐると無限に繰り返され、結局、夜
遅くまで寝られず、翌日のシンクロテストは寝不足で散々な結果だったという。
● 惣流・アスカ・ラングレー
「……今回はこの水着で我慢するとして、問題は何を着て行くかね。やっぱりシンジ
と初めて会った時に着ていた、思い出の黄色いワンピースにしようかな。
結構海に合うし……。あ、でもあの服は風に弱いという致命的欠陥があった
わね。シンジだけならともかく、相田のやつ絶対にカメラ持ってくるだろうし……
う〜〜ん。ま、この私が着るんだから、何着ても似合うのは間違いないんだけど
ね』
『と、なると、今しなければならないのは、服選びより、あれね!」
そう言って、アスカは机の上に置いてある一冊のノートを見る、それには、
『シンジ攻略計画 −夏の海編−』
と題が付けられていた。
「夏の海と言えば、男も女も最も開放的になるはず。いくら奥手のシンジでも、
私がうまくアプローチすれば……。ふふふふふふ……」
「ここんとこ、どーもレイにポイント取られっぱなしのしような気がするから、
ここらで一気に挽回しておかないとね。そのためには、あらゆるシチュエーション
に対応できるように、完璧な計画を立てなくちゃ……今夜は忙しくなりそうね」
「見てなさいよレイ! この旅行で、シンジの心はアタシのモノ
なんだから!」
そう言って、燃えながら様々な計画をノートに書き出した。そしてその作業は夜通し
行われたので、翌日のシンクロテストは寝不足で散々な結果だったという。
● 葛城ミサト
「……う〜ん。この水着とこの水着、どっちがいいかなー。これはちょっちシン
ちゃんには刺激が強いかな……。やっぱりこれにしようかな。でも、これも捨て
がたい。ま、この私が着るんだから、何着ても似合うのは間違いないんだけどね」
ミサトがアスカに似たのか、アスカがミサトに似たのか、一緒に暮らしていると
考え方が似てくるのか、二人は同じような事を言っている。
「それにしても海なんて久し振りね、降り注ぐ太陽の下で飲むビールはさぞかし
おいしいでしょうね。あ〜楽しみだわ」
「楽しみと言えば、レイとアスカね。あの二人がどう出るか……。アスカは何か
企んでるようだし、レイも張り合うだろうし……ふふふ、面白くなりそう」
ミサトは、本当にうれしそうに微笑んでいた。
● 鈴原トウジ
「ミサトさんも来るやなんてワシは運がええんやな。せやけど、今回はこの足が
目的やからな。この足がどこまで思った通りに動くか確かめなあかん。色んな泳ぎ
を確かめなあかんな。それに、片方だけ色が白いいうんもカッコ悪いからしっかり
焼かなあかんな」
と、トウジは十四歳の少年らしく、健康な事を考えていた。
● 相田ケンスケ
「ふっふっふっふっふっ……。綾波や惣流や委員長だけじゃなくて、
ミサトさんまで来るなんて、何て僕は運がいいんだ。ミサトさんの写真なら一枚
百円……いや二百円はいける。これは随分と利益が出そうだな。欲しかったあの
カメラが買えるかも……。よし、カメラの調整をしっかりしないとな。これは
今夜も徹夜だな」
と、かなり不健康な事を考えていた。
ちなみに、あまりにカメラの事ばかり気にしていたので、家を出る瞬間まで水着の
準備をすっかり忘れていたのである。
● 洞木ヒカリ
「……鈴原が私を誘ってくれたんだ。私の事覚えていてくれてたんだ……。
足、大丈夫なのかな? 海ではずっとそばについてなきゃね」
「そうだ! 鈴原にお弁当作ろうかな……食べてくれるかな……」
というように、ヒカリもレイと同じく、恋する乙女モードに突入していた。
●
「かき氷、何味おごってもらおうかなー」
「碇くんが私の事綺麗だと言ってくれた。碇くんが……」
「天気で攻める、生年月日で攻める、血液型で攻める、etc……。ふふふ、
完璧な作戦ね。ふふふふふ……時々自分が恐くなるわね。でもこれで
シンジは間違いなく私のものね」
「ああ、ナンパされたらどうしよう。私には加持君が……」
「徹底的に泳ぐ!」
「徹底的に撮る!」
「鈴原にお弁当……」
それぞれの思いを秘めつつ、夜はふけていく。
シンジは海に何を思う?
アスカは海で何を企む?
レイは海に何を感じる?
そして土曜日、天気快晴。
一同は、波瀾を予感させる根府川へと旅立った……。
長い間のご愛読、そして応援ありがとうございました!
加藤氏の次回作にご期待下さい!
[あとがき]
「諸君、我々ゼーレの緊急会議を開いたのは他でもない、-if-の事だ」
「-if-がどうかしたのか?」
「うむ。作者のやつ、当初の予定では、今回の話をもって終了する
予定だった事がつい先ほど判明した」
「何っ!?」
「いかん! 早すぎる!」
「ああ。今回の話、まだ海にも行っていない」
「-if-シリーズ、まだ予定の話数に達していない」
「少なくとも、映画が完結するまでは続けなければならん」
「左様、それが我々の願いでもある」
「作者め、何を考えている? 読者への責任は取ってもらうぞ」
・ ・ ・
「加藤君、君を呼んだのは他でもない、-if-の事だ」
「-if-が何か?」
「今回の話の事だ。まだ海にも行っていないのに終了とはどういう事だ?」
「あれは誤報です。-if-はこれで終わりではありません」
「では、まだ続くと言うのだな?」
「はい」
「そうか。分かった、期待しているぞ、加藤」
<ゼーレ緊急会議 終わり>
なんか自分の首を絞めてるような気もする……。ま、海編の開始はいつになるか
分からないけど、頑張って書いてますので気長にお待ちください。
夏までは連載を続けるつもりです。