アスカは興奮していて、シンジがこれまで隠していた粗全てを喋ってしまっていた。
「そういうアスカだって、同じエヴァのパイロットだったんじゃ無いかっ
バイトじゃ無いとは言え、大学の講師なんかやらなくたって……未成年のくせに」
それに切れたシンジもつい言い返していた。
「未成年なのはあんたも同じでしょうが」
丁度休憩時間と言う事もあり、いつしかプレハブの事務所の外には作業員が
物珍しそうに、普段あまり喋らないシンジがアスカと話しているのを珍しそうに見ていた」
「ちょっと待ってくれよ……今エヴァのパイロット……とか言わなかったか?」
現場監督が二人のかけあいをぼーっと見ていたが正気に帰ってぼそりと言った。
アスカは喋るべきでは無い事を口走ってしまい、
シンジは勿論自分の立場をも危うくしてしまった事に気づいた。
第4話 「失言」
学生街の外れにあるこの居酒屋は生物工学部の行きつけの場所のようで、
いつも騒ぐ為、二階の最も遠い座敷に30名程が集まっていた。
アスカは初めて居酒屋に入るので少し緊張しながら靴を脱いだ。
ドイツでは大人に交じってフランクフルトを食べながらジョッキを開ける
なんて事は女性が出来る事では無かったからだ。
「それでは、惣流アスカ君の生物工学部への就任を祝い、乾杯を致します。
本来、生物工学部の教授であり、当大学の学長でもある冬月先生が乾杯の合図を取るのが
筋ではありますが、ご存じの通り、NERVの司令職も兼ねられている為、多忙で
二次会からの出席になります それでは乾杯!」
長い前口上と共に吉川がビールが並々と注がれているグラスを持ち上げた。
「かんぱーい」 研究室に所属している助手や講師や秘書 そして研究の為入り浸って
いる一部の生徒(ドクターコース等)がアスカの為に高々とグラスをかざした。
「おっと、惣流君はまだ未成年だったな 烏龍茶でいいかね?」
アスカと同じく生物工学部で臨時講師をしている初老の男性がアスカの乾杯用のグラスの
ビールが少なくなったのを見て気をきかせた。
「あ、すみません お願いします」
アスカは昼間の事で頭が一杯であり、一口だけで止めておこうと思っていたビールを
いつの間にか飲んでしまっている事にようやく気づいた。
「え、惣流先生って、そんなにお若いんですか?」
助教授付きの秘書代わりをしているオーバードクターの女性が眼を丸くした。
・
モデルは菱沼さんにあらず(笑)
・
「廊下を歩いてるの見た時は、外国からの留学生かと思いましたよ」
アルマーニのスーツをびしっと決めた学生がアスカを見て囁いた。
「スキップって奴でしょう? 今度日本でも適用されるって話ですよね」
別の学生が早くも酔いの回った赤らんだ顔でアスカ越しにオーバードクターの女性に話しかけた
「あ、烏龍茶が来ましたよ こっちです」
アスカは先程の学生に烏龍茶が並々入ったグラスを手渡された。
「あ、どうもすみません」
アスカは一口 口をつけて大ぶりのグラスに浮かぶ氷を見てしばし現実を忘れていた。
「惣流先生って、英語は勿論独逸語も出来るんでしょう? 私来年論文発表する時は
見て貰おうかしら」 ドクターコース入りをしたばかりの女学生が話しかけて来た。
「だけど、常用漢字以外の漢字は未だに苦手なので、正しく翻訳出来るか心配です」
アスカは少し笑顔を見せて言った。
「またまた、ご謙遜してぇ〜一般教養の講師も今日されたんでしょ?」
「その時の為に書き取りテストでもやっておきます」
アスカはウイットの効いたジョークを飛ばし、場をなごませた。
そして、一時間程の時が過ぎ、早くも一次会は終わりを締める一本締めを終えていた。
「惣流先生も二次会行きますよね? 冬月先生……あ、教授の事ですが、 冬月先生の
行きつけの店なんですよ ノンアルコール飲料もありますし、ね」
先程のオーバードクターの女性にアスカは背中を押された。
「冬月教授に顔を出して、早めに失礼させて頂きます」
アスカは早めに退出する事をあらかじめ告げてから、皆と二次会会場に歩いて行った。
二次会会場にはすでに冬月が駆けつけて来ていた。
そして、冬月以外に伊吹マヤの姿も見受けられた。
「もしかして、マヤさん? 4年ぶりですね」
アスカは入るや否や、マヤの存在に気づき、冬月の隣に座っていたマヤの隣に腰を降ろした。
「元気そうね アスカちゃん あ、アスカちゃんって呼び方はまずいわね」
四年前に比べるとリツコを亡くした後、一人でネルフの技術研究部を支えて来ただけあって
かなりしっかりして来たようにアスカは感じた。
「いえ、アスカちゃんでいいですよ 懐かしいなぁ けど、どうしてここへ?」
アスカ達チルドレンをミサト以外では一番気にかけてくれていたのはマヤであり、
アスカは素直に四年ぶりの再開を喜んでいた。
「ああ、言って無かったかね 伊吹君の開発したネルファの関係もあってね、
隣の敷地にある主に工科専門のネルフ第二大学の客員教授をやって貰ってるんだよ」
存在を忘れられていた冬月がアスカに語りかけて来た。
「あ、そうだったんですか 冬月教授」
「一年生は第一大学で一般教養を学んで、二年から第三新東京市の復興の為の学問を
学んでいるのよ、ほら シンジ君の友達で鈴原君って子がいるでしょ?
彼も第二大学に所属しているのよ」 マヤは薄めの水割りの入ったグラスを傾けた。
「昼間、あの馬鹿がシンジの代返やったんですよ……まったく何を考えてるのやら……
よく大学に入れたと思うわ」 アスカは再び墓穴モードに突入していた。
「ほう……代返かね 学部会に提出されたら最悪二人とも退学……」
冬月が苦笑いをしながら呟いた。
「すみません 本人に注意しましたので……何卒穏便に……」
アスカは冬月に手を合わせて言った。
「ふふ……アスカ君も教える側の人間になったって事だよ 私も何度碇の尻ぬぐいを
やらされた事か……」 冬月は遠い目をしながら言った。
結局最後まで と言っても一時間だが 二次会に付き合う事になり、
アスカはカルピスソーダでがぼがぼになったお腹を押さえて店を出た。
「えぇとここ何町でしたっけ……」
アスカは鞄からGPS付きの携帯電子マップを取り出して言った。
「アスカちゃんの部屋はどこを取ったんですか? 司令」
必死に地図を見ているアスカを見てマヤは話しかけた。
「ああ、シンジ君達のいるマンションの二階だよ」
「じゃ、私が送って行きますわ 方向同じですし」
マヤは冬月から離れてアスカの元に歩いていった。
「アスカちゃん 私も方向一緒だからタクシー拾いましょ 場所聞いたから」
「本当ですか? 助かります。 もう今日も迷っちゃって迷っちゃって」
アスカは地獄で仏を見たかのような表情で言った。
マヤは天才と呼ばれているアスカにも可愛い一面があるのを微笑ましく感じた。
少し歩くと、タクシーは見つかりアスカとマヤは乗り込んだ。
マヤが目的地を言うと、運転手は少し考えた上で返事をした。
場所がわからないからと言う理由での乗車拒否が認められているからだ。
それほど、復旧の続く第三新東京市は迷いやすかった。
アスカはタクシーの車内で 一杯だけ飲んだビールのせいかうとうとし始めた。
「ちょっと待ってくれよ……今エヴァのパイロット……とか言わなかったか?」
現場監督が顔を引きつらせてシンジとアスカに詰め寄った。
「う……」 シンジも現場監督がそばにいる事を忘れていたらしく、顔を引きつらせた。
「あ……」 アスカはようやく事の重大さに気づいた。
チルドレン現役の頃なら、ネルフの保護があったが、今は監視もされていないので、
ここで袋だたきにされて、二人とも埋められても仕方ない状況なのだ。
ほぼ8割の人間が紅い海から帰って来たものの、残り2割は死を選んだのだ。
それによって家族を失った人……それ以前に第三新東京市に住んでいた人の
怨嗟の目を交わす為の、シンジの疎開であり、アスカのドイツへの帰国であったのだ。
すっかり平和になった事と四年経った事で、二人とも油断していたのだろう。
「政府発表もあったし、今さら恨みつらみを言う訳じゃ無いが、そんな事まで隠して潜り込むってのが気に入らねぇ!道理でネルファの操縦がうまい訳だよ あのエヴァを操縦して
いたのなら、ネルファなんてお茶の子さいさいだろうよ」
激昂した現場監督の舌は休まる事を知らなかった。
「すみませんでした…… 明後日の工期満了と共に辞めさせて頂きます」
シンジはこの事がばれた以上、もうここで働く事は出来ないと腹をくくったようだった。
アスカはシンジをただおろおろと見つめる事しか出来なかった。
「いや、もう帰ってくれていいよ 幸い横西君も昨日退院したんだ。
今日のこの時間までの給料は計算して振り込んでおくから、帰ってくれ」
現場監督の言は厳しかった。
だが、そう処する事により、工員からのリンチ等を避けるのが目的だったとは、
その時のシンジとアスカの知る所では無かった。
「シンジ……ごめん」
マヤは寝言を言ったアスカの目蓋に涙が光っているのに気づき、そっと指で拭った。
「それじゃ、おやすみなさい」
アスカはマヤがシンジの家を知っている事に疑問も抱かずにタクシーから降りた。
タクシーが遠ざかっていくと共に虫の鳴き声が響き、
アスカは呆然とシンジの部屋を見上げた。
まだ9時半だと言うのにシンジの部屋に明かりは灯されてはいなかった。
「私……まだシンジに謝ってすら無い……最低ね……私のせいなのに……」
アスカは部屋の鍵を痛い程握り締めた。
「もうバイトは辞めさせられたから、食事にでも出かけてるのかな……」
アスカは灯のついて無いシンジの部屋を見て呟いた。
そして、虫の鳴く声もしなくなった夜11時半……
マンションの前に黒塗りのリムジンが一台止まった。
運転手が後部ドアを開けようとしたが、後部座席に座っていたシンジは自ら扉を開けた。
「ありがとう それじゃ」 シンジは運転手に声をかけて、
マンションの階段を足音を立てないように上がっていった。
リムジンはあまりエンジンをふかさずに、そっと離れて行った。
「11時半か……まぁ今日中に帰れて良かった方か……」
シンジは二階に上がり、腕時計を見た。
「さて……ん?」 ポケットから鍵を取り出した時、
シンジの部屋の前に誰かがうずくまっているのを見つけた。
「人の部屋の前で何やってん……アスカか?」
シンジはうずくまっているのがアスカだと知り、驚愕した。
「シンジ……ごめんなさい……今日中に謝っておきたくて」
アスカは寒さのあまり歯を震わしながらもシンジに謝った。
「馬鹿、そんな事でこの寒風吹く中突っ立ってたのか……怒ってるんなら、
昼間すぐ怒ってたさ……こんなに身体を冷やしやがって……
風邪でも引いたらどうするんだ……とにかく中へ入れ……話はそれからだ……」
シンジは鍵を開け、アスカを招き入れた。
自分がアスカの部屋に行く方がまずいと思っていたのだろうが、
墓穴度はあまり変わらなかったようだ(笑)
シンジは部屋に入るなりエアコンのスイッチを入れ、アスカをコタツに座らせた。
「さぁ、これでも飲んでって……寝てやがる」
数分後 シンジはホットミルクを手に居間に戻って来たら、
アスカはコタツに突っ伏して寝入っていた。
シンジに謝る事が出来て張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろう。
「どうすりゃいいんだ……」 シンジはアスカを部屋に招き入れた事を心底後悔した。
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今日の墓穴度は…………満点
やったぁ明日はR指定だ(爆)
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
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どうもありがとうございました!
第4話 終わり
第5話
に続く!
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