「分かったわ。それじゃ、NERVに連絡して迎えを寄越して貰って頂戴……マテリアル
はあまり残されていないから、自分達の足で行きましょう」
蒼い髪の女性はシンジに電話機を手渡して言った。
「あ、はい!」
シンジは父の連絡先用の番号にダイヤルしていた。
「ねぇ……ちょっと聞きたいんだけど」
自動小銃を持って行くかで悩んでいる吉田にアスカは近づいていった。
「何だ? 俺で分かる事なら……」
吉田は自動小銃を持ち歩かない事にして立ち上がった。
「貴方の元いた世界のパートナーって……誰?」
アスカのその問いは吉田の心を激しく揺さぶるに充分であった。
7周年記念作品
【明日を覗けば闇の中】〜続・窓に映るは明日の影〜
作:尾崎貞夫
第10話「決意」
「……答える必要性を感じない……」
吉田は若干の動揺をこらえて呟いた。
「そう…… 一人残して心配じゃ無いの? あんたが失踪している間に……」
「……彼女はもう一人でも大丈夫だ……」
吉田は話は終わりだとばかりにアスカに背を向けた。
「何? じゃ、もう戻らないつもりなの?」
何故かアスカは感情的になって吉田をなじった。
「この世界のほころびだけでも修正しない事には元の世界に戻れないんだ……それぐらい
の覚悟をして来たって事だ」
吉田はそう言いいながら部屋を出て周りを警戒していた。
「僕達がどうこう言える問題じゃ無いと思うから、その事には触れないであげてよ」
アスカが貸して貰ったスカートを着るのを待って、シンジは話しかけた。
「分かってはいるんだけど……なんか平気そうな表情してるのが何故かムカつくのよね」
数分後、やってきたNERVの黒塗りの車二台にシンジとアスカ、吉田と蒼い髪の女性
と言う形で分乗し、NERV本部に向かった。
「彼女……カンが鋭いわね。それとも貴方の世界の彼女とシンクロでもしてるのかしら」
蒼い髪の女性は小声で吉田にだけ聞こえるように囁いた。
「さぁな……だが、向こうの世界のアスカがほぼ俺と同じ存在になっているのなら、ダイ
バーとしての能力が発現してもおかしくは無いな……」
十数分後、四人はNERVの会議室まで丁重に連れて来られていた。
「シンジ……アスカ君も無事だったか……。おまえ達のホテルが使徒に襲撃された後行方
不明になったと聞いた時には……」
ゲンドウはその眼でシンジ達を見てようやく緊張を解いたのか、額の汗を拭っていた。
「ところで、使徒サキエルはどこまで侵攻しているんですか?」
蒼い髪の女性がゲンドウに問いかけた。
「君は一体誰なんだね……どこまで知っている……」
「答えになっていませんね……なら勝手に調べさせて貰います」
蒼い髪の女性は小型の端末を取り出して言った。
「本部の第三通路で止まっている? 硬化ベークライトでも使いましたか?」
その言葉を聞いてゲンドウは顔色を変えた。
「綾波……事情を説明した方が早そうだぞ」
ゲンドウと蒼い髪の女性のやりとりを見て吉田が割って入った。
「おまえは一体何なんだ……どこのエージェントだ」
ゲンドウは吉田を見て激高した。
「父さん、吉田君は使徒に襲われていた僕達を助けてくれたんだ。ちゃんと話を聞いてよ」
「私達の立場を明らかにしますわ……ですが、私達の言葉を完全に理解するのは難しいで
すから、赤木博士とMAGIのサポートが必要かと思いますが……」
「MAGI? MAGIとはリツコが提唱している生体コンピューターの事か……」
「この世界ではまだ実用化されていないのね……とりあえず赤木博士を呼んで下さる?」
「わかった……すぐ呼ぶ事にする……」
ゲンドウは混乱の極みに達していたが、何とか冷静さを維持していた。
数分後、赤木リツコだけでは無く、帰国したばかりのアスカの両親もが勢揃いした中、
蒼い髪の女性による説明が始まった。
「二人とも来てくれ」
説明及び会議が一時間を経過した頃、控え室で待機していたシンジとアスカにゲンドウ
がかすれ声で会議室に招き入れた。
「私達は彼らの提案を受け入れる事になった……彼らの協力により、より安全性の高い手
法により、適格者にエヴァのDNAを適用する事で使徒の撃退を計る事を決議した……。
現在我々が発見している適格者の中で確保しているのは、シンジとアスカ君……その二人
だけなのだ……」
ゲンドウはその先言わねばならない言葉を飲み込んでしまった。
「父さん……母さん……さっき控え室でアスカとも話したけど……僕達は覚悟を決めてい
るんだ……僕達にしか出来ない事なら、
逃げる訳にはいかないんだ……
」
アスカは黙って、熱弁するシンジの側で佇んでいた。
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第10話 終わり
第11話
に続く!
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