数分後、赤木リツコだけでは無く、帰国したばかりのアスカの両親もが勢揃いした中、
蒼い髪の女性による説明が始まった。
「二人とも来てくれ」
説明及び会議が一時間を経過した頃、控え室で待機していたシンジとアスカにゲンドウ
がかすれ声で会議室に招き入れた。
「私達は彼らの提案を受け入れる事になった……彼らの協力により、より安全性の高い手
法により、適格者にエヴァのDNAを適用する事で使徒の撃退を計る事を決議した……。
現在我々が発見している適格者の中で確保しているのは、シンジとアスカ君……その二人
だけなのだ……」
ゲンドウはその先言わねばならない言葉を飲み込んでしまった。
「父さん……母さん……さっき控え室でアスカとも話したけど……僕達は覚悟を決めてい
るんだ……僕達にしか出来ない事なら、逃げる訳にはいかないんだ……」
アスカは黙って、熱弁するシンジの側で佇んでいた。
7周年記念作品
【明日を覗けば闇の中】〜続・窓に映るは明日の影〜
作:尾崎貞夫
第11話「シンクロニシティ」
「そうか……だが、元には戻れないかも知れないんだぞ?」
ゲンドウはシンジとアスカを見やって言った。
「この事から逃げたとしても……僕達は敵のターゲットでもある訳なんだよね……逃げて
もどうしようも無いって事に気付いたんだ」
シンジはアスカの方をちらりと見てからゲンドウの問いに答えた。
「現実問題……使徒はすぐそこまで侵攻している訳で、硬化ベークライトでいつまで持つ
のかも分かった物じゃ無いわね……」
蒼い髪の女性は嘆息を一つついて言った。
「分かった……では、早速二人にエヴァのDNAを適用させる事とする」
ゲンドウは周りを見渡してからそう決断した。
「いつ使徒が動き出すか分からないから、取りあえず俺の装備を準備してくれないかな」
黙って見守っていた吉田が腰を上げて言った。
「君は……エヴァの因子が無くてもATフィールドが張れるんだったな……分かった、準
備させよう」
別の世界から云々は説明したものの、吉田が元々は使徒である事を蒼い髪の女性が説明
しなかった為、生身でATフィールドを張れると言う吉田にゲンドウは未だ警戒していた。
「ああ……だが、俺は本来この世界の住人では無いからATフィールドの威力もあまり強
く無いんだ……時間稼ぎ程度は出来ると思うけどな……」
「お願いする。リツコ君、彼の装備を整えてやってくれ」
「無論、通常の装備ではATフィールドを中和した所でたいしたダメージは与えられない
から、ホローポイント弾かハイドラショック弾辺りを用意する必要があるわ」
蒼い髪の女性がすかさずフォローを入れた。
「開発中の対使徒用の武器を用意します。それならばきっと……後で必要ならデータをお
渡しします」
リツコが束ねていたファイルを手に立ち上がって言った。
「私の眼から見てエヴァのDNAの適用が安全基準を下回ってたら、あんただけでやって
貰うから、そのつもりで」
蒼い髪の女性が冷ややかに吉田に言い放った。
「分かった……」
「それじゃ、こちらへ」
吉田はリツコに案内されて会議室を出た。
「あなた、銃をどれぐらい扱った事があるの?」
通路を歩きながらリツコが吉田に問いかけた。
「この間、警備員から奪ったような小銃と拳銃ぐらいかな……後はエヴァンゲリオン用の
パレットガンぐらいか……」
「パレットガン!? 私達が開発した武器もパレットガンと言うのよ……貴方達の世界と
シンクロしているのかしらね……」
「全部が全部そういう訳でも無いみたいだね……少なくとも俺の知る限り、碇ゲンドウと
赤木リツコが円満に再婚してる世界なんてここだけだ…………ちと無神経だったかな?」
「…………本当に無神経ね……」
リツコは手にしたファイルを取り落とさんばかりに動揺していた。
「褒めたつもりだったんだけどな……他の世界の碇ゲンドウといえば、極悪非道の代名詞
でシンジを放りっ放しでミサトさんに預けてたぐらいだ……そういえば、この世界でまだ
ミサトさんや加持さんに会って無いな……あの二人はこの世界では何してるんだ?」
吉田は懐かしそうな表情で呟いた。
「二人とも元気にしてるわ……けど、今の所NERVに所属してはいないわ……前の世界
では所属していたの?」
「俺の知る世界ではミサトさんはNERVの作戦部の部長、加持さんは諜報部かな……」
「そうなの……一応協力はしてくれてるんだけど、NERV入りは断られてるのよ。作戦
部に諜報部か。その線で司令に言ってみるわね……」
リツコは笑みを浮かべて言った。
「そうだな……特にこの世界の碇ゲンドウはお人好しのようだから、加持さんに謀略を任
せた方がいいかもな」
吉田は笑みを浮かべて言った。
「ねぇ……他の世界でもユイさんは……その……」
リツコは立ち止まり、吉田に背を向けたまま問いかけた。
「エヴァンゲリオンの実験の為にシンジが小さい頃に死んだそうだ……」
「私はユイさんの大学での教え子で……ユイさんには特別目をかけて貰っていたの……ユ
イさんが死んだ後、シンジ君の事を気にかけてる内に……」
「この世界では、あなたの母親……赤木ナオコさんはどうしてるの?」
「母もNERVに関係していたの? 私が在学中に車の事故で死んだけど、それが何か?」
「いや、この世界には有機コンピューターであるMAGIが無いと言うから何故かなと思
ってね……産みの親がいないんじゃ無理だよな……」
吉田は内心、ナオコがいなかったからこそ、二人が円満にくっつく事が出来たのでは無
いかと考えていた。
「ここよ。すぐ用意させるわ」
吉田は研究棟の一室らしい部屋に案内された。
その頃、シンジとアスカは引き返す事の出来ない道へと踏み出そうとしていた。
この実験の責任者でもあるアスカの母に連れられ、蒼い髪の女性とシンジとアスカは巨
大なボトルのような物が斜めに設置された部屋に案内されていた。
「エントリープラグにそっくりね……妙な所でシンクロしてるんだわ……これなら大丈夫
かしら……私の想定していたアーキテクチャに似ているし……」
蒼い髪の女性は持って来ていたノート型端末を接続して準備を始めていた。
「悪いけど、時間無いの。取りあえず服を脱いで頂戴。
全部ね……
」
蒼い髪の女性はシンジとアスカに背を向けたまま、指示を伝えた。
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よくやったな・・シンジ
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どうもありがとうございました!
第11話 終わり
第12話
に続く!
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